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第10章
第166話
しおりを挟む「空島や…。我神なりとか言う奴でもいるんじゃねぇの?」
あれから少し時間が経ち、前方には空に浮く島が見えていた。島の周りは雲で覆われており、他のペガサス達が飛んでいるのも見える。
フリーエルは俺の前を飛び、島の方を指差した。
「あれが私たちの国、天翼島シエロ。周りの雲はフカフカで、歩くことも出来ますよ。」
「そうなんですか?!」
「楽しみー!早く行こう!」
「では、あちらの方に。」
ウヴァがペガサスに指示を出すと、2匹は島の真下へと飛んで行った。
島の真下には空洞があり、2匹は中を素早く上に飛んでいく。
「ここは?」
「この島の入口です。入国する際は、必ずここを通らなければなりません。ここ以外から入ろうとすると、どんな形であれ撃ち落とされます。」
「そ、そうですか…。」
空洞を上がりきると、確かに検問所のような所があった。そこにいた天翼族の男性にフリーエルが話をつけ、俺たちはようやくシエロに入国した。
「わぁー!すごいフカフカ!」
「これはテンション上がるな…!」
「…広い。」
俺たちは、先程見た島の周りを囲む土雲のエリアにいた。広大なマシュマロのようで、寝っ転がった瞬間ダメになりそうだ。
長に会いに行くのは明日なので、今日は島の散策となっている。
島は中心に天翼族の住むエリア、その周りをペガサスなどが住む森のエリア、そしてその周りが土雲のエリアとなっている。
「あぁ…幸せ…。」
「やばたにえん…。」
エレナと俺は、寝っ転がって伸びきっていた。太陽の光も暖かく、ここは人をダメにする島だった。フローリアは俺の隣にちょこんと座っている。
「ふふ、気に入って頂けたようで嬉しいです。」
天使のような笑みを浮かべたフリーエルが、俺たちの所に3つグラスを持ってきた。中にはわたあめのようなものが入っており、前に食べた雲アメとは違い今回のは霧に似ている。
「なんですかこれ?」
「とりあえず、飲んでみてください。」
エレナと2人でゴクリと喉を鳴らし、思い切って一気に飲んだ。
「うまっ!」
「何これ?!もっと飲みたーい!」
霧は、喉をするする通っていったがその甘さとのどごしはたまらんものだった。飲みやすすぎるりんごジュースに近い。フローリアも気に入ったのか、ストローで少しずつ吸い続けている。
「それはワタジュースです。この島の高度だから作れるもので、地上では消えてしまうんですよ。」
「へぇ…さすが天空の島。」
「あれ、なんかいるよ?」
「ん?」
エレナの指差す方には、土雲の端の方に黒い影ができていた。影は地面を自由に動きながら、こちらに迫ってきている。
「え、何あれ?」
「多分あれはー」
『バハハハハ!』
「「ぎゃぁぁぁあああああああ!!!」」
「お魚。」
フリーエルが言い切るよりも早く、俺たちの目の前に巨大なナマズが現れた。ナマズは馬鹿でかい声で笑い、俺たちを見下ろしている。
「な、なんですかこいつ?!」
「雲ナマズです。意外と美味しいんですよ!」
「いや…あれは食べたくないかな。」
「えー!食べようよ!」
『ワ…レ、ウナギ…。』
「嘘つけ!そのヒゲはなんだよ!」
雲ナマズはビクッとなると、照れたようにヒゲをふにゃにゃさせた。
『コスメ…。』
「ふざけてんのか…ってかなんでこいつ喋ってんだ?」
「体が大きいので、脳も大きいからです。まぁ喋れる単語は、5つくらいなんですけどね」
「5つのうちもう3つ聞いたんですけど…。」
「おりゃー!」
「あ、こら!」
2人で話しているそばで、エレナはナマズの方へと元気に走っていった。目を輝かせ、よだれが垂れているあたりかなり空腹なのだろう。
「あ、エレナ様!そっちはー」
「へ…?うわぁぁぁあ?!」
エレナが勢いよく走ったと思ったら、突然その姿が消えた。正確には、雲から落ちた。
「え、何?!」
「土雲は端の方に行くにつれて、濃度が薄くなっているんです。なので、端の方に行くほど雲ナマズみたいに、雲魚の仲間が沢山いるんですよ。」
「面白いな…。」
「先に言ってえぇぇぇ……。」
随分下の方からエレナの声がしたが、『ボフン!』という音とともにエレナは雲から飛び出してきた。
「エレナ、あんまりやりすぎないようにね!」
「うん!昼ごはん獲ったどー!」
懐かしい黄金の番組で聞いたセリフを叫びながら、エレナはナマズに飛びかかった。
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