異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

文字の大きさ
上 下
179 / 210
第9章

第160話

しおりを挟む

少女は、瞬きをした瞬間に俺の目の前に転移していた。

「な、何…?」

少女は俺の言葉も無視して、顔をペタペタ触り始める。何がしたいのかさっぱりわからない。

「カミ…サマ…?」

「は?っていうかそこどいてくれ。」

「…ウン。」

なんだかあっさりどいてくれたので、急いでテオスの傷口を塞ぐ。意識がないが、なんとか一命をとりとめたようだ。
ホッとしたのも束の間、少女は俺の向かいでテオスにガラスのような爪を突き刺そうとしていた。

「ちょっ!何やってんの?!」

「…コレ、コロス?」

「いやいやいや、殺さないよ。ってか外がヤバイな…。」

テオスと少女を放っておく事も出来なかったが、何より城の外で再び複製達の数が膨れ上がっていた。

「どうする…ルージュさんを呼びに戻るか、でもな…。」

王国でルージュが緊急の任務に向かってたら意味がないし、何よりこの少女が何をするかわからなかった。

嫌な汗が流れ、何か解決策を考えていた時だった。
ステータスが強制表示され、何故か[適正魔法]の空間魔法の欄に《ERROR》と赤文字で書いてあった。

「なんだ、これ…。」

わけもわからないまま混乱していると、俺の周りに魔法袋の穴がいくつも空いた。

「何が…?!」

「いやー実に110話ぶりの伏線回収待ちくたびれたよーん!」

「……は?」

穴から女性の声がしたと思ったら、全ての穴から様々な種類の魔獣たちが飛び出してきた。正確には、バジリスクやらユニコーンなど全て神獣の類の生物だった。それも、俺が5年前に倒した神獣達だ。

「何これ、けものフレンズ?!」

「これだ。」

後ろにいた、巨大なケンタウロスが俺に1枚の鏡を渡してきた。少し前に、フリーエルから貰った神獣鏡が虹色に輝いている。

「貴方様の魔力をこの鏡が通し、我等の魔石と反応したのだ。」

「あ…そう、なんだ。」

そんな話をしている間にも、穴からはとんでもない数の神獣達が飛び出してくる。もうケモノどころではない。ここまでイカツイ奴らがくるとケダモノフレンズだ。

「では主人よ、貴方様の望みを聞こう。」

「えっと…じゃあ、外にいるクローンを倒してきてくれる?これ以上、この国に被害が出ないように。逃げ遅れた人なんかがいたら助けてあげて。」

「了解した。」

すぐさま神獣達は城の外へと、走ったり飛んで行ったりした。目の前の光景を未だに処理しきれていない。

「…アレ、ナニ?」

「え、あぁ…。俺が5年前に倒した神獣。」

「シンジュウ…。カミ?」

「うーん…どうだろう。」

「ウン。」

何が「うん。」なのか全くわからないが、とりあえずあとはこの少女だ。

「えっと、どこからきたの?」

「アソコ。」

少女の指差す方には、このフロアの端に小さな穴が開いていた。どうやらそこから出てきたらしい。
とりあえずテオスを異空間で陛下に任せて、俺は少女を連れてその下の階へと向かった。



カイザー・サレア・イフの3人は、周りを突如復活した戦士達に囲まれていた。3人背中を合わせて対峙しているが、流石に限界が近い。

「これはちょっとまずいね…。」

「諦めるな、せっかく俺から出られたんだぞ。」  

「でもね…ん?」

イフが詠唱を始めようとした瞬間、城の方から何匹も巨大な生物がやってきた。
身体中が燃えている火の鳥や1つ目の巨人、髪の毛が蛇になっている女性などこの世の終わりのような光景だった。

3人とも新たな敵の襲来かと思ったが、全員が複製達を倒していくのを見てとりあえず敵ではないのは察した。

「なんだこれは…。」

「こんな事が出来るのって、あの子くらいしかいないよね~…。」

「まさか、あのマセガキが?」

「とにかく俺達も行くぞ。」

カイザーの掛け声で、3人も複製達を倒し始めた。



「これは…。」

俺と少女の前には、巨大な水槽があった。
水槽の周りには、複製が入っていたであろうカプセルが10個ほど並び、水槽に太い配管で繋がれている。
水槽の真ん中には大きく割れた跡があり、どうやら少女はそこから出てきたようだ。

「ここにいたんだよな?」

「…ウン。ココデウマレタ。」

「産まれた…?」

少女は近くにあった机から、1枚の紙を持ってかた。『被験者:ソフィア×複製No.1』と書いてあるだけで、それ以外は何も書いていない。
ソフィアといえば、少し前の闇ギルド兼学園に潜入していた人物しか知らない。

「えっと、これが何?」

「オカアサン…オトウサン。」

「…え。」

なんとなくだが、察した。おそらく闇ギルドがこの国に来た時に、ソフィアと複製の1人が人工的に掛け合わされたのだろう。それにより誕生したのが、この少女なのかもしれない。
魔力の使える体を産まれながらに持ち、神の魔力を有する少女の誕生だ。

「カミジャナイモノ、コロセ。イワレタ。」

「誰に?」

「アノオトコ。」

「…なるほど。」

これも推測だが、テオスは自分が神になれない事に気付いていたのだろう。だから完全に血を入れ替えてもいなかったし、どこかでそれに気付いているような瞳をしていた。
その代わりに、新たな神に近い存在を創り出したのかもしれない。自分の代わりに、世界を正すために。

「えっと…そんな事をする必要はない。」

「ナゼ?」

「誰もそれを望んでいないし、君も人を殺したくないだろ?」

「…ワカラナイ。」

「そのうちわかるよ。 せっかくこの世界に産まれたんだし、普通の女の子みたいに生きたいとは思わない?」

「フツウッテ…ナニ?」

「あー…寝て起きて飯食って、みんなと遊んだり…まぁ戦いとか殺しから程遠い感じかな。」

「…ソウ。」

少女はうつむき、何かを考えているようだった。瞳に色はないが、その水晶のように透き通った瞳は一点の曇りもない。

「もし困ってるなら…俺の所にくるか?」

「ナゼ?」

「だって、これからどうするつもり?」

「ワカラナイ。」

「なら、何かしたい事が見つかるまで俺の国にいるといい。平和で楽しい所だぞ。」

「…ワカッタ。」

少女は了承して、俺の手を握った。その手はとも冷たく、力を込めたらガラスのように砕けそうなものだった。

俺はその場にあった資料などを燃やし、少女を連れて城を後にした。




しおりを挟む
感想 192

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜
ファンタジー
転生者でチートな母と、王族として生まれた過去を神によって抹消された父を持つシア。幼い頃よりこの世界では聞かない力を操り、わずか数年とはいえ前世の記憶にも助けられながら、周りのいう「規格外」の道を突き進む。そんなシアが双子の弟妹ルークとシャノンと共に冒険の旅に出て… これは【ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました】の主人公の子供達が少し大きくなってからのお話ですが、前作を読んでいなくても楽しめる作品にしているつもりです… +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-  2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます  時々さかのぼって部分修正することがあります  誤字脱字の報告大歓迎です(かなり多いかと…)  感想としての掲載が不要の場合はその旨記載いただけると助かります

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...