異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

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第9章

第157話

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ロゼッタは紅葉に回復魔法をかけ、敵を見据えた。傷だけでなく魔力も回復した紅葉はスッと立ち上がり、ロゼッタの横に並んだ。

「これだけの数…よくもまぁ1人で相手していたものです。」

「ふんっ、別に鉄娘の助けなどいらぬ。」

「勘違いしないでください。ここに来たのはマスターの道を作るのと、ただの気まぐれです。普段からだらけているからこんな事になるんです。」

「うるさい。お前こそ、随分苦戦したようじゃな。格好が破廉恥じゃ。」

「なっ…!あなただって、着物が破れてー」

くだらない言い合いをしている2人に、複製達が再び巨大な魔弾を放ってきた。だが、2人の障壁によってそれは完全にかき消された。
戦士達の後ろにいたスナッチは、それを見て震えた。いくら神のクローンを盾の代わりにしても、前方の2人はそれすら凌駕する者に見える。

「あ、あなた達一体何なの…?!」

「マスターの生涯のパートナーです。」

「レイの嫁じゃ。」

「はぁ?!」

的を得ない2人の答えに、スナッチは己の耳がおかしくなったのかと思った。そんなスナッチをよそに、2人は魔力の渦を生み出して睨み合った。

「あばずれ如きが、マスターの嫁…?」

「鉄娘がパートナー?笑わせるな、1人旅でもしてろ。」

「はぁ?」
「あ〝?」

今にも殴り合いの喧嘩を始めそうな2人に、戦士達がなだれ込んで行った。だが、戦士達は一気に弾け飛んだ。

「ここで成果を上げれば、マスターからご褒美が…!」

「何を言ってる、それは妾だけのものじゃ!」

2人はくだらない言い合いを続けながら、城前の敵を蹴散らしていった。



スサノオはジークを倒し、城前の近くまで来ていた。そこでは、ロゼッタと紅葉が戦士達を蹴散らしている。

「手伝った方がいいのだろうか…。」

なんだかやけに白熱していて少し迷ったが、あまりにも良い連携が取れているので、スサノオは少し笑って住民の避難の方へとまわった。



「カイザーさん!」

「…サレア。」

ナナと対峙するカイザーの元に、サレアは戦士達を倒しながら駆けつけた。

「大丈夫ですか?」

「…なんとかな、それより住民の避難は?」

「まだ半分ほど位かと…あの少女が?」

「あぁ、少し力を貸してくれるか?」

「了解です。」

2人の視線の先では、ナナが体の周りに闇の渦を発生させて佇んでいた。渦は地面に広がり、そこから真っ黒な魔獣達が溢れていく。

「厄介ですね…。」

サレアが面倒くさそうに言うと、3人の頭上で雷鳴が鳴り魔獣達は焼け焦げて絶命した。
驚いて屋根上に視線を送ると、そこには白髪の男がいた。

「お困りのようだね。」

「イフ!」

「は?イフって…お前の中のやつじゃないのか?」

「まぁ…訳あって分離して入れられたと言うか…。」

「周りの雑魚は僕に任せて、2人はその子を。魔力が暴走しかけてる。」

「わかってる!カイザーさん!」

「あぁ!」

イフは屋根を飛び移りながら魔獣や戦士達に雷を放っていき、サレアとカイザーはナナを止めにかかった。




施設を消滅させ、俺は城へと向かっていた。最初よりは敵の魔力の数も圧倒的に減っていて、テオスが仕掛けてくるとしたら時間の問題だろう。

「副団長!」

「ベル…フローリアか。」

通りの向こうから、体中傷だらけのフローリアが走ってきた。

「お前…今はいいか、それよりなんだ?俺を殺すか?」

「…違います、私も自分の思ったように行動しようと。」

「それで?」

「私を連れて王国に転移してくれますか?」

「…なんで?」

フローリアは少し困っなような表情を見せたが、すぐにじっと俺の目を見据えた。

「王国に…無数の爆発物が埋められています。」

一瞬耳を疑ったが、フローリアの表情を見る感じ嘘じゃないのはすぐにわかった。

「それ、誰がやったんだ?」

「…私です。陛下が、王国を脅す際に使えるかもと言って、私がやりました。」

「…そうか。ちゃんと解除できるのか?」

「はい、お任せください。」

正直敵にそんな事を頼むのは少し気が引けたが、フローリアを信じる事にして王国に転移した。

いつもの本部に転移し、俺も手伝おうとしたらフローリアに止められてしまった。

「解除方法は私しか知りませんし、副団長は早く戻って皇国の方をお願いします。」

「でも…」

「埋めた場所は私しか知りませんし、それに最後に1つお願いが…。」

「なんだ?」

フローリアは少し俯きながらも、俺の手をとった。その手は震えていたが、確かに暖かく力強かった。

「わがままなのは承知しています。だけど…」

フローリアは、瞳から小さな雫が溢れながら言葉を紡いだ。

「陛下を…弟を助けてください…。」

この事件の首謀者を『止める』ではなく、『助ける』という事にどこか変な感じがしながらも、少し納得してしまった。

「…わかった、爆弾の方は任せるぞ。全部解除したら、これで俺に知らせてくれ。」

俺は念話用の指輪を渡し、すぐに皇国へと戻った。



残されたフローリアは涙をぬぐい、 指輪をつけた。

(副団長ごめんなさい。最後にまた、あなたに嘘をついてしまいしまた…。)

フローリアは自分を落ち着かせるように深呼吸をし、すぐに本部を出て爆弾の解除に向かった。
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