異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

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第8章

第139話

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一瞬の事だった。
それは、カシスが自分の親に魔弾を放つ王子を見て、そろそろ飽きていた時だった。
突如王族達が姿を消し、カイザー達の鎖が割れて魔力が回復していた。

「一体何が…?!」

「お前が闇ギルドのマスター?」

驚くカシスの背後には、部下の報告で聞いていた子供の副団長が立っており、振り返った瞬間にはカシスは壁に激突していた。

「ルージュさん、あとは頼めますか?」

「もちろん、街の方を頼むわね。」

そう言って、レイはどこかへと姿を消した。

「さて、我々を縛るものはもう何もなくなったな…。思う存分やらせてもらおう。」

カイザーが剣を抜いて近づくなか、カシスは不敵に笑いながら身構えていた。



「待たせたな。」

王族達を異空間に入れ、俺は壁の上に戻ってきた。ジョーカーは拘束糸を消し、優雅に昼寝をしていた。

「で、お前の目的は?」

「そうですねぇ、ゲームでもしながら話しましょうか。」

ジョーカーは嬉しそうに笑うと、闇穴の中からトランプを取り出した。

「ババ抜きでいいですかぁ?」

「それに付き合ったら、何か話してくれるのか?」

「はぁい♫」

「……わかったよ。」

仕方なくトランプを受け取り、緊張感のないババ抜きが始まった。

「あの闇ギルドはお前の仲間なのか?」

「いえ、あんなゴミども名前も覚えていませんよぉ。ソラノババァから王達を殺すよう命令されていたみたいですが、彼らは別の目的もあるみたいですねぇ♬」

「別ってなんだよ。」

「闇ギルドの主要メンバーは6人、そのうちの2人がレイ君お父さんの本部に向かったようですよぉ~?」

「…禁忌魔法か?」

「正解🎵おそらく、召喚系の物かと。」

その場で紅葉とスサノオに、本部に向かうよう念話を送った。これでおそらく大丈夫だろう。

「結局お前は何がしたいんだ?魔物だって、建物の中に出せば国民を全滅させる事だって出来るだろ?」

「確かに、そうすれば30分ほどでこの国は滅びるかもしれませんねぇ。ですが、前にも言ったように私はこの国が好きですからねぇ♬なんだったら、闇ギルドのメンバーを皆殺しにしてもいい。」

「わからない事が多すぎる…。なんで闇ギルドが今日動いたのか、お前の目的もー」

「レイ君は、今日の事はそこまで気にする必要はないですよぉ🎵この事件はプロローグにも満たない、可愛いものですから。物語だったら、読み飛ばしてもいい…。」

「どういう意味だよ。」

「…とりあえず、闇ギルドが今日動いた理由から話しましょうかぁ。」

ジョーカーはペアのカードを捨てながら、楽しそうに話し始めた。

「2ヶ月ほど前、彼らはババァの命令である国に出向いていましたぁ。この大陸から少し離れたところにある、変わった国です。」

「なんでそこに行く必要が?」

「前風神の方を覚えていますかぁ?」

「忘れるわけねぇだろ。ってお前なんでスズリ様を…」

「あの方が捕まっていた場所、妙な感じがしませんでしたぁ?」

「…一瞬しか見てないけど、機械がたくさんあったな。」

「そうなんですよぉ♫その機械は、彼らが行った国から仕入れた物だそうですよぉ。」

「何のために?」

ジョーカーの話は、とても残酷なものだった。本当かどうかわからないが、他国の機械を使い人の魔力を取り出して研究に使ったりしていたらしい。スズリ様も、その犠牲となってあんな事になったそうだ。

「この国の違法研究者達は、魔法生物を人工で作りたかったみたいですねぇ🎵他国を脅す、兵器として。」

「何でお前はそんな事知ってるんだよ…。」

「世界眼ですよ。暇な時に見るのが、私の趣味なんですよぉ♫」

「あっそ。それで、その国が何だって?」

「それはレイ君がこれから、嫌でも知ることになると思うのでお楽しみですねぇ♫」

「結局言わないのか。」

俺は手持ちのカードを全て捨て、立ち上がった。

「もう行っていいか?街に魔物が溢れてる。」

「おや、負けてしまいましたね。では…」 

ジョーカーが指を鳴らすと、街の魔物達は全て黒い光となって消えていった。

「お前…本当に何者なんだよ。」

「あなた様の息子ですよぉ♫あ、いい機会なので手合わせでもどうですか?親子水入らずで!」

「だから、俺はお前の父親でも何でもねぇよ。それに街の復興だってー」

「なら、もう一度魔物達を出しましょうかぁ?」

ジョーカーはジョーカートランプをひらひらさせながら、卑しい笑顔で笑った。本当にやりかねないので、2人で壁から離れたところに転移する。

「少しだけだからな。」

「ありがとうございますぅ🎵それじゃあ始めましょうか。」

ジョーカーが嬉しそうに手をパンと合わせた瞬間、俺の周りに5個ほどの小さな黒い穴が生じ、中から剣やら槍が飛び出してきた。

「ぐっ!」

「まだまだぁ。」

なんとか避けるが、他にも穴が生じ刀などが飛び出してくる。殴って壊しても、他の穴から武器が飛び出してきて距離を縮める事が出来ない。
俺が避けている前方で、ジョーカーは嬉しそうに俺の姿を眺めていた。その顔が気に食わなかったので、背後に転移し背中に蹴りを入れる。

「んんんぅ…効きますねぇ。」

「嘘つけ!」

綺麗に着地したジョーカーに、すかさず光弾を連続で放ち続ける。あたりにものすごい爆発音が響き、煙でジョーカーの姿が見えなくなった。

だが、煙が晴れるとジョーカーは短い双剣を持って笑顔で立っていた。どうやら全部斬られたようだ。

「お前、その武器…。」

「はぁい♫私特性、フェンリルの牙で造った双剣ですよ!」

フェルと似た雰囲気の物を感じ鑑定すると、ジョーカーの言う通りフェンリルの牙が素材に使われていた。剣を見るだけで、背筋に冷たいものが走る。

「俺の正体、知ってるのか?」

「親愛なるお父さんの事について知らない息子など、いませんよねぇ🎵」

「っ?!」

ジョーカーがバカなことを言いながら闇の穴に剣を突っ込んだと思ったら、俺の眼前に穴が生じて剣先が飛び出してきた。慌てて状態を反らせて避け、上空に転移する。

「あっぶねぇ…。」

「あ、ずるいですねぇ空に逃げるなんて。」

ジョーカーはふくれっ面になると、背中に龍のような黒い羽を生やして飛んできた。

「お前も飛べるんじゃねぇか!」

「お揃いですねぇ♫」

俺も光の双剣を造り、ジョーカーに応戦する。少しかするだけでも体に激痛が走り、隙を作りそうになる。

「くそがっ!」

「おっと。」

斬り合いながら口から光線を出すが、それも難なく避けられて、代わりにたくさんのコウモリが飛んできた。
そしてコウモリ達を光線で焼き殺した瞬間、その隙をついてジョーカーの双剣が俺の左腕に突き刺さった。あり得ないほどの痛みが体に走り、傷口から煙が出る。

「ぐぁあああ!」

「あぁぁぁあ…痛みに歪むその表情、なんて素敵なんでしょう♫」

「うるせぇ!」

なんとか力を振り絞り、空中で回ってジョーカーの頭にかかと落としをいれる。ジョーカーはもろに食らって、地面に激突し、そこに向かって魔弾をさらに撃ちまくった。

「はぁ………はぁ………。」

地面に降り立ち確認しようとすると、黒い霧が俺の背後に集まりジョーカーが後ろから抱きついてきた。

「こっちは私の勝ちですかねぇ?」

ジョーカーは耳元でそう呟くと、俺の腹と足に双剣を突き刺した。

「がっ……!?ごはっ!」

痛みに驚くとともに、口から大量の血が吹き出る。ジョーカーは腹に突き刺した剣に力を込め、俺の腹を貫通させた。おそらく、ジョーカーの腹にも剣先が刺さっているだろう。

「親子で痛みを共有する…たまりませんねぇ♫」

何言ってるんだと思う暇もなく、俺の体は痛みで限界だった。ここまでの苦痛を味わったのは初めてかもしれない。

「何か言ってくださいよぉ…。」

「ぐぅあああああ!!」

ジョーカーは不満そうな声で、腹と足に刺した剣を左右に動かした。もう痛すぎて涙も出ない。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「少し時間を潰しすぎましたねぇ。最後に…」

ジョーカーは俺の耳元に口を近づけた。 


「--------。」


「……は?!がはっ…!」

ジョーカーが剣を引き抜き、俺は地面に力なく倒れた。俺を中心に、紅い血の海が出来ていく。

「それでは、またいつか🎵ババァと闇ギルド以外の裏切り者は、このカードに書いてあるので。」

俺の体の上に1枚のジョーカートランプを置き、ジョーカーは何処かへと消えていった。








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