異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

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第8章

第137話

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「わ、どこここ?!」

「家?の中のようですね…。」

ロゼッタたちが目を覚ますと、どこかの家の一室の中に立っていた。体に外傷もなく、何かをされた形跡もない。

「一体あの人は何者なのでしょうか…。」

「なんか怪しい人だったね~。とりあえず出ようよ!」

「そうですね、ここにいても何も始まりませんし。警戒はとかないようにしてくださいね?」

「りょーかいです!」

エレナは敬礼をすると、すぐに部屋を出て廊下を走って行った。エレナの自由っぷりに、ロゼッタは小さく溜息をついた。


「これは…?!」

「なんか鳥肌がすごいよ…。」

2人は家の外に出て、目の前の光景に戦慄した。家を囲む柵の外は、魔物で埋め尽くされていた。

「本当あの人なんなんだろうね。この辺りじゃ魔法も使えないし。」

「前回の魔物の大量発生も、彼が原因なのでしょうね。」

「……………その、通り。」

「っ?!」

ロゼッタたちの背後に、いつのまにか小屋にいた女の子が立っていた。
女の子は相変わらず2人を無表情で見つめている。

「えっと、あなたは?」

「………姫。」

「そうですか…。」

困った表情をするロゼッタをよそに、エレナは女の子の顔を覗き込んでジロジロ見た。

「ねぇ、あなたどこかで私に会った事ない?」

「………わから、ない。お前知らない。」

「うーん絶対どっかで会った気がするんだけどな…。」

「エレナが会った?この世界での話ですか?」

「わかんない、だけど会った気がする…誰かに似てる気もするし…。」

「………暇。」

「はい?」

「…………かくれんぼ、しよう。」

そう呟くと、姫は一瞬で影の中に潜って消えてしまった。エレナとロゼッタは顔を見合わせ、苦笑するしかなかった。



「レイ君!」

警戒をしていると、ティナが慌てた様子で走ってきた。

「ティナさん…まずいですよね、これ。」

「ええ、団長達もすぐに気付いて王城に向かったわ。でも住民が…。」

ティナが辺りを見回し、気難しい顔になった。騎士団や魔道士団の案内で家の中に待機した人はいるが、魔物の姿を確認できてないのでまだ外を歩いている人はちらほらいる。

「魔力は感じるのに、姿が見えないとどうにも…。」

「それにロゼッタとエレナと連絡が取れないとなると、本気で王国を落としにきたか…。」

とりあえず異空間から紅葉とスサノオを呼び出し、事情を説明した。

「確かに、レイの街の奥の方からと真反対に大きい魔力を感じるな。」

「主人よ、どうするんだ?」

「とりあえず紅葉は王城に、スサノオは街の方に待機していてくれるか?」

2人は頷くと、すぐに自分の持ち場へと走って行った。

「私は王都周辺を、分隊と警備してるわね。」

「わかりました、なら俺はスサノオと真反対の方にー」

『グガァァァァァアアアア!!!』
『キシャァァァア!!』

瞬間、とんでもない魔力の塊をハッキリ感じた。それと同時に、王都の北に壁よりも大きいキメラ、南にはそれと同じサイズのバジリスクが突然現れた。
住民達はその姿を見て固まったが、すぐに悲鳴をあげて建物の中へと走っていく。

「何よ、あれ…。」

隣でティナさんも、その脅威に怯み震えていた。

「まじかよ…。超大型巨人より強いだろ、あれ…。」

王国にとんでもない脅威が迫ろうとしていた。




「うっひゃ~ありゃ俺っちが巻き込まれてもおかしくないね。」

スピルタは王都からキメラをみて、嬉しそうに笑った。隣では、仲間のランコがボーッとバジリスクを見ている。

「美味しそう。」

「いやそこぉ?!あ、そーいえばこれ。なんかヤバイ魔法障壁とかの魔法が付与されてるっぽいよ。ランコちゃんいる?」

スピルタは、マリアがつけていたネックレスをランコに渡した。

「いらない。中古の物は嫌い。」

「へいへい、まぁ俺っちもその気持ちはわからなくないかな。」

スピルタは、第一王子達の魔道具も全て近くの小さな川に投げ捨てた。

「俺っちたちはもう人間辞めてるもんね~あんなんなくてもよゆーっしょ。」

「……早く終わらせよう。お腹すいた。」

「いつもすいてますやん…。」

スピルタは呆れながらも、作戦を始める事にした。




本部の訓練所では、レギルとガジルスが組手をしていた。

「ちょっと休憩だな。」

「おう。」

レギルが水筒を渡し、顔を洗いに行こうとした時だった。

「っ?!」

とてつもない魔力を感じ、思わずその場で身構えた。ガジルスも何かを感じ取ったらしく、冷や汗をかいている。

「親父…。」

「あぁ…こりゃちとまずいな。ガジルス、俺は王城に行くからお前はこの辺りを見張っててくれるか?」

「俺も行くか?」

「いや、カイザー達も集まるから心配ねぇだろうよ。それより、まだ姿を現しちゃいないがどこかに魔物が潜んでる。逃げ遅れた住民がいたら、訓練所ここに誘導してやってくれるか?」

「はぁ…魔道士団の仕事みたいだな。」

ガジルスの言葉に、レギルはニッとわらって頭を撫でた。

「それだけお前の実力を買ってるってわけだ。頼んだぜ?」

レギルはそう言って王城に走っていった。ガジルスはその後ろ姿を見送り、すぐに警戒態勢に入った。



「もうすぐね…。」

ソフィアは学園の保健室の窓から外を見た。まだ姿は見えないが、間違いなく王都の近くに何かがいる。きっとあの気持ち悪い男が用意したものだろう。

「お、おで不安でさ…。」

向かいでは、ダイが震えながらお茶を飲んでいた。

「大丈夫よ、私達の任務は魔道書の確保だけなんだから。そんなに難しい仕事じゃないわ。」

「で、でも…本部には強い人がたくさんいるんでねぇが?」

「これから災害級の魔物が出現するだろうから、そしたらいつもよりは手薄になるわよ。」

「そうだどいいがな…。」

不安そうなダイの方に、ソフィアはそっと手を置き優しく撫でた。

「大丈夫よ、あなたは強いわ。それに#あの国____#に行ってからより強くなっているはずよ。」

「んだ!おで、ソフィアさんのために頑張るだ!」

「ふふっ、頼もしいわね。」

ソフィアが微笑んだ瞬間、窓の外から2匹の獣の雄叫びが聞こえてきた。




ジョーカーは壁の上に座り、街を見下ろしていた。実力のある者は早急に魔力に気づいて行動しているが、住民達はまだ何も感じていないせいか外を歩いている人が見受けられる。

ソラノババァも困ったものですねぇ。たとえ魔物を何匹用意しようが、闇ギルドをちょっといじくって戦わせようが、この国にはレイ君お父さんがいるから勝てるはずないのにぃ♫」

ジョーカーは1人笑いながら、レイの姿を思い浮かべた。それだけで、自分の心が満たされた気になる。

「勝ちはレイ君達に決まっていますが…大事なのは勝ち負けではなく、勝ったにせよ負けたにせよ、何を得て何を失ったかですよねぇ🎵」

ジョーカーはそう呟くと、勢いよく立ち上がった。

「さぁ頑張ってくださいね、レイ君♪」

そしてジョーカーが指を鳴らすと、王都を挟むように2匹の巨大な魔物が出現した。


長い1日が始まろうとしていたー。
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