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第8章
第136話
しおりを挟む「あ、いたいた。おーい!」
エレナとロゼッタが小屋に入ると、奥の方に小さな人影があった。エレナはすぐに近づいたが、ロゼッタは何か違和感を感じていた。
「あれ、この子女の子だよ?」
「そうみたいですね…。」
エレナの言う通り、2人の前には小さな女の子がいた。無表情で2人を見つめている。
「かくれんぼしてたの?」
「……………あとは、お前の仕事だ。」
「うぇ?!」「これは…。」
驚く2人の前で、少女は影の中に沈んでいき姿を消してしまった。
「あの子は一体…。」
「あれ、そういえばどっかで見た事あるようなないような…。」
「ご苦労様です、姫♬」
突然、後ろから男の声がして2人は慌てて振り返った。いつのまにか背後に、黒い服を着たジョーカーが立っており、2人は身構えた。
「全然気配感じなかったよ。」
「私もです。あなたは一体…。」
「そんなに怖がらないでくださいよぉ。僕はただ、あなた方を足止めするのが仕事ですからぁ♪」
「そうはいかないよ!」
「あなたに負けるつもりはありません。」
2人の言葉に、ジョーカーは笑ったままにじり寄った。
「言いましたよねぇ、足止めだと。」
暗い小屋のなかでジョーカーの片目が怪しく光った瞬間、2人の下に影の渦が現れた。
「わわっ!飲み込まれてる?!」
「くっ…!」
ロゼッタが下に氷弾を放つが、弾は闇の中に吸い込まれて効果は全くなかった。やがて、2人は何も出来ずに影の中に飲み込まれていった。
ジョーカーはそれを見届け、嬉しそうに微笑んだ。
「さて、私の仕事はこれで終わりました。…あとは、好き勝手していいんですよねぇ、ソラノ様♬」
ジョーカーはそう呟くと、自分も影の中に沈んでいった。
「レイ様、その…一緒にご飯でもどうですか?!」
昼頃、仕事がひと段落したところでソフィからありえないような言葉が聞こえてきた。
「え?俺?別にいいけど…」
「わかりました。すぐに準備をしてきますね!」
「お、おぉ…。」
なんだか乙女のような顔をして出ていったので、とても反応に困る。どう言う風の吹きまわしだと思いながらも、俺も軽く準備を済ませた。
「何にしましょうか?」
「なんでもいいけどな…。」
いつもとテンションの違うソフィに困りながらも、俺は街を散策していた。
「あ、あのお店なんかどうですか?」
「あーいいかも…ん?」
「どうかなさいました?」
急に黙った俺を、ソフィが不思議そうに覗き込んできた。
「なんだ、この数…?!」
「何がですか?」
「ソフィ、周辺の店を直ぐに閉じるよう指示してくれ。住民は戸締りをして家から出ないようにも言ってくれるか?」
「一体何が…。」
「この数…ジョーカーか?」
俺はここにいない男の顔を思い浮かべた。
前回の魔物の大量発生の件以降、大量の魔物が現れた時の緊急作戦が騎士団と魔道士団にはある。
その作戦では、カイザー・サレア・ルージュ・レギルの4人は王城、俺・ティナの2人は王国周辺の警備にあたる事になっている。
魔道士団本部に転移し、1・2分隊に王城の警備、3~6分隊に王国の警備を頼んだ。
「副団長。」
「なんだ?」
王都に戻ろうとすると、ベルベットに呼び止められた。
「本当に魔物の大群が来るのですか?私には何も感じられませんが…。」
「間違いない、どこかに姿を隠してるけど俺にはわかる。」
「そうですか…私もついて行っていいでしょうか?副団長の戦いが見たいので。」
「俺なんかより、お前は第五分隊のみんなと東側の警備を頼むぞ!」
俺はそう言って、王都に転移した。
残されたベルベットは、少し迷った挙句第五分隊リーダーのゾルタのもとに行った。
「分隊長、レイ副団長が私に伝達係として副団長の側にいるよう言われたので、今すぐ副団長のもとに向かってもよろしいですか?」
「そうなのか?わかった、何か副団長から指示があればみんなに連絡してくれ。」
「わかりました。」
ベルベットは無表情で頷き、すぐにレイの所へと走って行った。
例の皇国で、皇帝の青年は体についた血を流すためにシャワーを浴びていた。
「陛下陛下、報告だよ。」
「連絡ずら。」
シャワー室の入り口に、背の小さい双子の女の子がやってきた。二卵性なのか、顔は似ていないが手を繋いでぴったりくっついている。
「フローリアからかな?」
「今はキールって名前だよ。」
「違う、ベルベットって言ってたずらよ?」
「あはは、なんでもいいけど内容は?」
「魔法生物殺戮装備の使用許可がほしいって!」
「なんでも凄い数の魔物がたくさん出てくるらしいずら!」
2人や言葉に青年はシャワー室で少し考え、すぐに結論を出した。
「うん、使っていいってフローリアに連絡しておいて。ただし、起動の際は他の人に見られないようにって事も伝えておいて。」
「キールだよ!」
「ベルベットずら。もし起動を見られたらどうするずら?」
「そうだね、その時は…。」
青年はシャワーを止め、妖しく笑いながら答えた。
「…処分してもいいよ。」
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