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第8章
第135話
しおりを挟む「指名依頼?」
『うん!私とロゼッタに来てた!』
休日、領主邸にいるとエレナから念話が届いた。なんでも、2人に貴族の護衛の指名依頼が来たらしい。依頼したのは、ルイス・ゼラニルという貴族であまり交流はない。
「会った事ないんだよね?」
『顔もわかんない!でも結構報酬高いよ。』
『マスター、どうしましょう。』
「あー…まぁ特に何もないだろうから、行ってきていいよ。何かあったら連絡して。」
『わかった!』『了解です。』
紅葉は家で寝てるしスサノオもいるので、特に心配はないだろう。
「何かあったんですか?」
「いや、なんでもない。」
ソフィに声をかけられ、俺は意識を目の前の資料に向けた。
「マリアお嬢様、いらっしゃいますか?」
「誰ですか?」
マリアが王城の自室で本を読んでいると、部屋にメイドが1人入ってきた。確か最近王城に仕える事になった人だ。
「レイ様から、護身用の魔道具の点検をしたいと伝言を預かっております。」
「レイ君が?今日ここに来てるんですか?」
レイという単語に、マリアは嬉しそうな顔になった。
「今は仕事でアルタの街にいるそうなので、王国騎士団の方が代わりに運んでくれるそうです。」
「私が行ってはダメなのでしょうか?」
「陛下の許可があれば大丈夫だと思いますが、陛下も今は忙しいようですのでレイ様が騎士団の方を派遣してくれております。」
「そうですか…せっかく休みに会えると思ったのですが。わかりました、お願いしますね。」
マリアはそう言って、レイからもらったネックレスをメイドに差し出した。
メイドはネックレスを持ち、礼をして部屋を出ていった。
「レイ君が騎士団に依頼…?」
マリアは少し違和感を感じたが、すぐに読書を再開した。
メイドは部屋を出て廊下を歩き、角を曲がって柱の陰に身を潜めた。そこへすぐに、陰からスピルタが姿を現した。
「はーいお疲れちゃ~ん。例の物はゲット出来たんだよねぇ?」
「はい、こちらに。」
メイドは懐から、第1王子・王女殿下とマリアの護身用魔道具を差し出した。
「オッケ~、ご苦労様。引き続き潜入の方頑張っちょ~。」
「あの、国王と王妃の魔道具は回収しなくてもよろしいのですか?」
「いいんだって~、それがギルマスさんからの指示だしね。」
「かしこまりました。」
メイドが礼をすると、スピルタは下衆な笑みを浮かべて陰に潜っていった。
「にしても、あのガキの街はなかなか上手いもんがたくさんあるな!」
「そうですね、お値段も安いですしうちの財布もまだまだ安全です!」
路地裏でシオリは揚げたてのさつまいもの天ぷらを食べ、目の前で上半身だけ実体化したディアブロは骨つき肉を頬張っていた。
「そーいやあのガジルスとかいうガキも、なかなか強そうだったな。今度勝負させろよ。」
「ダメです。こないだの件でディアブロはんには有事の時以外、体は貸しまへんって約束したばかりやないですか。」
「いいじゃねぇかよ、ずっとお前の中にいると体がなまっちまうんだよ。お前の性格みたいに、ヒョロヒョロにな。」
「ど、どない意味ですかそれ!」
「言ったまんまだよ~。」
ぷんぷんと怒るシオリの前で、ガジルスは知らん顔で肉を頬張った。
「もう知りまへん!今日はもう何も買ってあげまへん!」
「へっ!だったら強制的にでもお前の体を…」
「ん?どないしました?」
威勢の良かったディアブロがいきなり黙り込み、シオリは心配そうな顔でディアブロの顔を覗き込んだ。ディアブロは緊張したような顔になり、汗を流している。
「おい、すぐに体を借りる事になりそうだぜ…。」
「え、な、なんでですか?」
「なんかヤバイ空気を感じる…。5万…いや10万近くいるんじゃねぇか、これ…?」
「だからどないしたんですか!」
「魔物だよ。とんでもねぇ数の魔物が、この国の近くにいやがる。これだけの数は、俺が今まで戦った中でも初めてだな…。」
ディアブロの告げた事に、シオリは言葉を失った。
「やったー!着いたー!」
「エレナ、あまりはしゃいではいけませんよ?」
護衛の任務を半分を終え、ロゼッタとエレナは王都から遠く離れた街に来ていた。 エレナは馬車を降り、空気を吸って伸びした。
するとそこに、依頼をした貴族・ルイスがやってきた。
「2人ともありがとう。この街の領主と少し話しをしてくるから、少し待っててくれるかな。」
「わかりました。1つだけよろしいでしょうか?」
「なんだい?」
「なぜ、そこまで知名度のない私達を指名したんですか?私達よりランクの高い冒険者はいると思いますが。」
「君達は、あのレイ副団長の懐刀と聞いてね。是非一度依頼したかったんだよ。」
「そういう事ですか…。」
3人のところに、ルイスの使用人らしき男性が走ってきた。男性はルイスの耳元で何かを告げ、すぐにどこかへ帰っていった。
「少し君達にお願いがあるんだけどいいかな?」
「なんでしょうか?」
「あそこの小屋に、これから会う領主の方の息子さんが隠れているようなんだ。一度連れ戻してきてくれるかい?男が行くより、女性が言った方がいいだろうから。」
「え、ですがそれはー」
「りょーかいです!」
「あ、エレナ!もう…」
迷うロゼッタをよそに、エレナは少し離れた所にある小屋に全力で走っていった。仕方なく、ロゼッタもあとを追っていった。
2人の後ろ姿を、ルイスは笑いながら見送っていたー。
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