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第8章
第130話
しおりを挟む「レイ・トライデント・レストリアです、よろしく…。」
「はいみなさん、仲良くしてあげてくださいね~。」
担任の言葉に、生徒たちは元気の良い返事をした。奥の方ではマリアが小さく手を振っている。今日も可愛い。
「じゃあ、一番後ろの空いてる席に座ってくれるかな?」
「わかりました。」
俺は周りの視線から逃げるように、自分の席へと向かった。
今日から学校だが、俺は1週間遅れているので完全に転校生みたいな感じだった。
2つ前の席にマリアが座っており、左側にはヤンキーみたいな男子、右隣にはメガネの気弱そうな女子が座っている。
HRが始まり、左の男子に話しかける事にした。スタートで失敗すれば、友達のほぼいない悲しい学園生活になってしまう。
(あれ…こういう時ってなんて声かければいいんだ…?『ヨーソロー!』とかか?いやここ沼津じゃないしな…。)
「な、なぁ…えっと君の名前はー」
「うるせぇよ。」
「あ、はい…。」
ちょっとヤメテヨだんし~…泣きそう。
俺がスネ夫みたいな貴族だったら、『ママに言いつけてやるー!』ってなってたぞこのヤロウ。
こちらを見る事もなく突き放されてしまったので、仕方なく右側の女子に話しかける事にした。
「あの…君、名前は?」
「え?!う、うちですか?!えっと、うちはシオリです…。」
「シオリさんね、よろしく。」
「よ、よろしゅう頼みま…じゃなかった、よろしくお願いします。」
「あ、うん。」
(方言女子キター!え、やだなにこれ可愛すぎひん?京都弁的なやつか?尊いずら!)
「ん?」
1人興奮していると、マリアのあたりから殺気のような物を感じた。他の生徒が何かわからず震えている。
「何してるんだ…。」
新しい学園生活は、嵐の予感がしていた。
シオリの中で、ディアブロは元気100倍になっていた。シオリは頭に響く声に、周りに聞こえないくらいの小声で返す。
『おい、こいつとんでもなく強いぞ!早くやらせろ!』
「あきまへん!ようやく友達になれそうな方やし、仲良くせんとー」
『男は拳を交えて仲を深めるんだぜ?な、いいだろ?』
「そ、そんな~…うち女やし…。」
「ん、どうかした?」
「な、なんでもありまへん!」
「シオリさん、静かに。」
「す、すんま…ごめんなさい…。」
レイに声をかけられて驚いていたら、担任に怒られてしまった。
「も、もう!学園では話しかけんといてください!」
『悪かったって。ただ、1個だけいい方法があるぜ?こいつともっと仲良くなるな。』
「…嫌な予感しかしまへんな…。」
ディアブロの嬉しそうな声に、シオリはがっくりとうなだれた。
思っていた通り、休み時間は他の生徒たちの質問攻めだった。ただ、だいたいみんな途中で飽きて仲の良い生徒と戻っていった。
1人を除いて。
「レイ君、同じクラスになれて良かったですね!」
「そ、そうだね…。」
マリアは俺の席に来て、嬉しそうにしている。
「マリア、その…見られてるから少し離れてくれると嬉しいんだが…」
「イヤよ、最近会えなかったしね。」
「そうですか…。」
周りの生徒たちの視線がすごく、胃に穴があきそうだった。
その頃、アルタの街の銀行では。
「はっ!何かマスターに悪い虫が…!」
ロゼッタはビクッとなったが、すぐに作業に戻った。
一方、異空間では。
「なんじゃ…メスの匂いがする。妾のレイに近づいてるやつがおるな…?」
紅葉は殺気を放ちながら、大きなせんべいを齧った。
屋敷の厨房ではー。
「お腹すいたー!」
「主人流のホットケーキを作っている、少し待っていてくれ。」
「やったー!」
フォークとナイフを持ったエレナは満面の笑みになり、スサノオはエプロンをつけて料理をしていた。
帰りの準備をしていると、机の中に一通の手紙が入っていた。
「なにこれ…。」
『放課後、屋上で待ってます。』
内容はそれしか書いておらず、差出人の名前もなかった。
(あれ、これラブレター的なやつか?!いや待て誰かのいたずらって可能性も…いやこれラブレターだ、うん、そのはず。)
そんなもの今まで貰ったことはないのでわからないが、とりあえずそれで自分を納得させた。
(かぐや様とか白銀会長じゃないしな…うん、そのはずだ。)
俺は手紙をしまい、緊張しながら屋上に向かった。
屋上の扉に手をかけて、俺は一旦ストップした。
扉の向こうには1人だけ魔力の反応があるあたり、いたずらではないようだ。
「結局何の用なんだ…。」
俺はゆっくりと扉を開けた。
扉の向こうには、隣の席のシオリがいた。なんだかモジモジしている。
「えっと…手紙入れてくれた?」
「は、はい!あの…えっと…うっ!」
「え?!」
恥ずかしそうにしていると思ったら、突然苦しそうな声を出して下を向いてしまった。
心配になって近寄ろうとした瞬間、とんでもない魔力が屋上に吹き荒れた。シオリはゆっくり顔を上げたが、それはあのシオリとは思えないくらい悪そうな顔をしていた。
「なにが…?!」
「ははっ、ようやく出てこれたぜ。待たせたな、一発俺とやろうぜ?」
「誰…?」
シオリはいきなり男のような口調になり、俺を睨んでいた。
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