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第7章
閑話・小話詰め合わせ⑫
しおりを挟む『みんなで何か強大な敵を倒そう系の漫画って、高い確率で自分の推しが敵のスパイだったりする。(ちなみに私はアニとライナーの金髪2人推し。)』
※今回の話はアレ退治のお話なので、苦手な方はカムバックしてください。
※Gなんかじゃなくて○○さんの閑話くれ!みたいな要望は、あったら遠慮なく言ってください。
「じゃあ行ってくるね!」
「主人殿、夕方には帰ってきます。」
「うん、行ってらっしゃい。」
ある休みの日の昼過ぎ、エレナとスサノオはギルド依頼へと向かった。
俺は今日はあまりそんな気分ではなく、ゆっくりしたかったので家にいることにした。
本を読んで過ごしていると、昼ごはんで水を飲みすぎたせいかトイレに行きたくなった。
「ふぅ……。」
用を済ませ、トイレを出ようとした時だった。
俺の足元に、ヤツがいた。前世でたまに出没した、カブトムシ似てるが比べ物にならないくらい気持ち悪いアイツだ。
『じょうじ。』
「…え?ぎぃゃやぁぁぁあああ!!!」
俺は慌てて宙に飛び、上からGを見た。よりによって少し茶色いヤツで、大きさも異世界特有なのかアメリカンサイズくらいある。こんなサイズ日本には絶対にいない。
「マスター!どうしました?!」
「あ、開けるな!フルティンだしアレがいるから!やっぱ開けて助けて!あ、ダメだ廊下に出たら捕まれられなくなる!」
「ど、どっちですか?!」
俺は慌てて忘れていたが、ズボンを上げて扉の外に転移し床にへたり込んだ。
「はぁ…はぁ…な、なんでアイツがこの世界に…。」
「ど、どうしたんですか?中で何が…」
「だ、だめだぁ!開けたらヤツが出てくる…それだけは絶対にダメだ!」
「ヤツとは?」
「Gだよ…。」
「ジ、ジー?」
「ゴキ…あ〝あぁぁ名前も言いたくない!」
俺とは正反対で、ロゼッタは何のことかわからないと言った感じだ。仕方なく小さな声で名前を教えたが、見た事がないのか表情は変わらなかった。
「少し待っててください…。」
そう言って、ロゼッタは『幻夢の図書館』でヤツの詳細を調べ始めた。そして1分もただずに戻ってきた。
「……滅ぼしましょう、この家ごとヤツを。」
「いやそれはあかんでしょ!」
「何言ってるんですか!あ、あんな…何ておぞましい!鳥肌がすごいです!」
「き、気持ちはわかるけどなんとかしてヤツを始末せねば…。藤原書記かミッシェルさんでもいれば…。」
「誰か虫が平気な人はー」
「「あ。」」
俺たちの頭に、お菓子好きのぐーたら娘が浮かんだ。前に森で虫探しを楽しんでた筈だ。
「紅葉!」
俺は急いで紅葉を探しに向かった。
「…んん……ねむい…。」
案の定、紅葉はお菓子を食べた後に寝ていたようだ。遠慮なく叩き起こし、トイレの前に連れてきた。
「紅葉、今この中に神なんかより強いヤツがいるから。なんとかしてくれ。」
「悔しいですが…今回ばかりはあなたが頼りです。」
「ど、どうしたんじゃ…?そんなヤツが手洗いにおるのか?」
「それはだな…。」
俺は紙にヤツのイメージを念写し、紅葉に渡した。
「こいつだ。」
「………。」
紅葉は紙を受け取り、無言で絵を見つめている。表情に動きがない。
「紅葉、虫好きでしょ?そいつを捕まえて王国の外にでも逃すか、跡形もなくなるくらいに消してくれるか?潰すのはダメだ、仲間を呼ぶホルモンみたいなのが出るから。」
「さぁ、早くしてください。いつもの粗暴っぷりを、ヤツにぶつけてください。」
「………じゃ。」
「「え?」」
俺たちが聞き返すと、紅葉は紙を握りつぶしてどっかに投げ捨てた。少し涙目になっている。
「ムリじゃ!なんだこの気色悪い生き物は!」
「なんで?!虫好きなんじゃないの?!」
「虫の種類によるんじゃ!なんだこの…見ただけで背筋に寒気が走る感じは!妾は絶対に生でこんなヤツ見たくないぞ!」
「何を言ってるんですか!いつもの無神経っぷりはどこにいったんですか!」
「うるさい鉄娘!だったらキサマがやれ!」
「あ〝あ〝ぁぁぁ…人類はテラフォーマーに勝てねぇのか…。ギルドに依頼するわけにもいかねぇし、魔道士団も呼べないしな…。」
結局10分ほど話に進展はなく、俺たちはその場から動けなかった。
「わかった…じゃんけんだ。」
「それしかないですね…。」
「こんなに気が重いじゃんけんは…初めてじゃ。」
「いくぞ…最初はぐー、じゃんけんー」
俺はグーを出し、恐る恐る2人の手を見た。ロゼッタも紅葉も手を綺麗に開いている。
「う、嘘だぁぁあああ!」
「マスター、頑張ってください。」
「期待しておるぞ♡」
「くっ、お前ら…!」
仕事がなくなり、明らかに2人とも機嫌が良くなった様子でとてもいい笑顔をしている。
「最悪だ…氷づけにでもするか。」
俺は諦めて、ドアノブに手をかけた。あたりに冷たい空気が流れる。
「地球を…嘗めんなよ!」
異世界で言いたかったなかったフレーズ上位のセリフをつぶやき、俺は勢いよくドアを開けた。
『じゃうじ!』
「ぎゃぁああああ!ごめんなさい俺がなめてました!」
「マスター?!」
「おい、飛んできてるぞ!」
扉を開けた瞬間、デカイ何かが勢いよく飛んできた。ヤツらの急に飛んでくるところも嫌いなポイントの1つだ。
「あっちいけ!」
「マスターそっちいきました!」
「燃やすのじゃ!」
「どこどこどこ?!」
俺たちはスライムなんかより圧倒的に弱いヤツから、なす術なく逃げ回った。
「……はっ!」
俺は慌てて目を覚まし、辺りを見回した。机の上には本が開かれており、どうやら眠ってしまっていたようだ。
「なんだ…夢か。そうだよな、あんなのいるはずねぇよ…。」
俺は夢を振り払うように頭を振り、少し寝ぼけた状態でトイレに向かった。
用を済ませ、トイレを出ようとした時だった。
(あれ…そういえば夢もこんな感じで…。)
気持ち悪い汗が頰をつたい、俺はゆっくり床を見た。
ーヤツがいた。それも、2匹。
「ぎゃぁああああ!なんで増えてんだぁ!」
このあと滅茶苦茶ゴキ退治した。
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