異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

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第7章

第121話

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それからは忙しい日々が続いた。
街の家令と改善点を話し合ったり、魔道士団の仕事をしたり。空いた時間などで、ギルドの依頼に行ったりエレナの遊園地遊びに付き合ったりもしていた。

だが1週間もすれば、少しはこの生活にも慣れてきていた。


今は家の自室で、住人からの要望などの紙に目を通していた。何か困った事があれば、住民には遠慮なく提出してもらうようにしている。
ロゼッタも向かいで手伝ってくれており、紅葉は夕食を食べて眠くなったのか俺の膝でスヤスヤ寝ている。

「全く、本当にだらしない人ですね。」

「まぁお疲れなんじゃないかな?自分のお店の事とかで。」

街には紅葉の、着物など和風な物が売られているお店がある。芸術的な物が多く女性からの人気が高い。

「あれのどこがいいのやら…。あ、1枚きてますよ。」

「えーっと…『道に迷ってしまうので、簡易な物でもいいので地図が欲しいです。』か。」

「作っていなかったのですか?」

「いや、家も宿も全部の部屋に置いてあるはずだけどな…。明日確認してくるよ。」

「そうですね。そういえば、編入試験はいつですか?」

「今週末だよ。軽い筆記と実技だけ。」

「そうですか、頑張ってください!」

「あれ、それよりエレナとスサノオは?異空間?」

「夕食後に体を動かしたいので依頼に行ってくると。」

「雨降ってるのにすごいな。じゃあもうすぐ帰ってー」


俺がそう言いかけた時、勢いよく自室の扉が開かれた。びしょ濡れの、エレナとスサノオだった。

「レイ!」
「主人殿!」

「ん?」

エレナは子供を抱っこしており、スサノオは女性をお姫様抱っこしていた。




数十分前、雨の中エレナとスサノオは空を飛んでいた。ギルド依頼を済ませて家路についていた所、突然雨が降り出してしまったのだ。

「早く帰ってお風呂入りたーい!」

「そうですな、温まらないと風邪をひいてしまいます。」

「うぅっ、さぶい…あれ?」

エレナは下の道を見て驚いた。
小さな子供が、大人の女性に肩を貸してなんとか歩いていたのだ。2人とも雨具も着ておらず、子供は雨の中必死に歩いている。

「ねぇ!あれ!」

「あれは…急いだ方が良いですな。」

「うん!とりゃー!」

エレナとスサノオは2人の前まで高速で飛んでいき、2人の様子を確認した。

「大丈夫?!」

「…え?ぁ…人、だ…。」

少年はそう言って力尽きて倒れかけた。慌ててエレナは少年を抱え、スサノオは女性をお姫様抱っこした。

「すぐに主人殿の所へ。」

「うん!」

2人はすぐに屋敷へと飛んで行った。




レイは空いてる部屋のベッドに少年を寝かせた。女性の方は、ロゼッタとエレナが手当てしてくれている。
少年の服を変えようとして、とんがり帽子をとった時だった。

「これ…。」

「珍しいですね。」

俺とスサノオは少年の頭を見て少し驚いた。少年の頭には、小さな角が生えていたのだ。鑑定すると亜人(混血種)と書いてある。

とりあえず服を変え、回復魔法をかけた。すぐに少年の呼吸は安定し、静かに眠りについたようだ。

その後、女性もロゼッタが回復してくれたらしくなんとか一命をとりとめたようだ。ただ、腹部の傷から血を流しすぎたせいか回復まで少し時間がかかるらしい。

一旦その日は2人をそのまま寝かせ、俺達も寝る事にした。




「………ぁれ……。」

「お目覚めか。」

「ひっ?!」

翌朝、少年が目を覚ますとベットの近くにはスサノオが座っていた。スサノオは無表情で少年を見下ろしている。

「まだあまり動かない方がいい。」

「だ、誰ですか…?!ぼ、帽子が…。」

「これか?」

スサノオがとんがり帽子を差し出すと、少年は慌てて帽子を深くかぶった。角を見られるのがあまり好きではないようだ。

「少し待っていろ、主人を呼んでくる。」

「……え?」

状況の掴めない少年を残し、スサノオは部屋を出て行った。




「主人殿。」

「ん?」

朝食後、自室に戻っている時にスサノオに声をかけられた。

「あの少年が目覚めた。」

「わかった、ありがとう。」

俺はスサノオと少年のいる部屋に向かった。



「おはよう。」

「ひぃっ!」

扉を開けると、少年は怯えた表情をしていた。
とりあえず側の椅子に腰掛ける。

「大丈夫か?」

「ぼ、僕をどうするつもりですか…?!売り飛ばしたり…。」

「しないよ、ここ俺の家だし。昨日、倒れかけてた君をスサノオたちがここまで運んでくれたんだよ。」

「………あ。」

少年は意識を失う前のことを思い出したのか、ハッとしてスサノオを見た。

「あ、ありがとうございました…。それと失礼な態度をとってごめんなさい…。」

「気にするな。私は偶然通りかかっただけだ。礼を言うなら、主人殿に。」

「ありがとうございます。…あれ、お、お母さんは?!どこに?!」

「隣の部屋にいるよ。まだ寝てるけど、怪我は治ってるから安心して。」

「はぁ、良かった…。」

少年は安心したのか、ようやく安堵した表情になった。どうやらあの女性は少年の母親だったらしい。

「とりあえず朝食があるから、食べてきなよ。」

「そ、そんな!僕なんかがこんなお世話になっていいはずないです…!」

『ぐぅぅぅぅぅ……』

少年の言葉とは違い、腹の虫は正直な声を出した。少年は顔を真っ赤にしている。

「ほら、気にしなくていいから。」

「…ありがとうございます。」

シュティレに少年を任せ、俺とスサノオは隣の部屋に向かった。



--------------


1人の女性が、アリヒの奴隷商の檻にいた。女性がいるのは奉仕奴隷の区画で、他の檻にも女性と同じくらいの歳の人が何人もいる。


辺りに人がいないのを確認し、檻の奥で女性は胸ポケットから小さな箱を取り出して、箱の上部にあるボタンを押した。

「着きました。」

『早かったなぁ。ちょうど今、嬢ちゃんと茶を飲んで休憩してたところだ。』

『あ、お疲れ様です!』

箱からは、おじさんの声と若い女性の元気な声がした。

「少し遠回りをしているかもしれませんが…引き続き調査を続けます。」

『あぁ、頼んだぜ。年寄りにはちとキツイからな。』

『頑張ってください!』

奴隷商に客が来た足音がしたので、女性は急いで箱をしまった。
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