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第7章
第117話
しおりを挟む翌朝、本部の会議室に行くとまだルージュさんしかいなかった。
「おはよう、もう少しで揃うと思うからちょっと待ってね。」
「わかりました。」
座って待っていると10分後、扉が開いて何人かが入ってきた。そのメンツに俺は少し驚いた。
宰相のロトエナと防衛大臣のガルディ、それと何故かオリビア商会のステファニー会長までいた。そして最後に、会ったことのない少女が入ってきた。
全員が席に座ったところで、ガルディが話し始めた。
「十聖・防衛大臣のガルディです。今日は集まっていただき、ありがとうございます。早速ですが、先日いただいた報告書の確認をさせていただきます。」
ガルディは1枚の紙を持ち、内容を読み上げた。紙はルージュさんの報告書らしく、間違いは1つもなかった。そしてジョーカーの事について話すと、ガルディは満足したのかメモをして席に着いた。
「今度はボクだね!」
次に、知らない少女がぴょんと立ち上がった。俺はリアルボクっ娘に少し感動した。
「レイ君は初めましてだね、ダライアス学園の理事長・クレアだよ!」
「はじめまして、レイ・トライデント・レストリアです。」
初見の少女は、まさかの学園の理事長様だった。
「君、入試の面接受けなかったんでしょ?」
「そうですね…討伐に向かったので受けてないです。」
「でもね、ボクとしては君に是非入学して欲しいんだよね。だって筆記満点だったし、実技も見たけどあれは驚いたよ!君のような逸材は、ぜひウチの生徒になって欲しいからね。だから、編入試験を受けてくれるかな?」
「編入、ですか?」
「うん。面接なしで入学は無理だけど、陛下が学園が始まって1週間したら編入試験を受けて次の日からは通わせるのはどうかって言ってたんだけど。転校生扱いになるけど、どうかな?」
「わかりました、是非受けさせていただきます。」
「ほんと?!良かった~。じゃあボクは急ぎの用があるからこれで。」
クレアは嬉しそうな顔になり、部屋を出て行った。俺も無事学園に通える事が決まり一安心した。
「最後に私ですね。」
ロトエナさんが立ち上がり、紙を胸ポケットから出した。
「陛下から、レイ君へ叙勲のお話があります。」
「え…?」
「『この度の魔物討伐の功績を称して、男爵から子爵への陞爵、それからアルタの街の領主に任命する』との事です。そのため、謁見が1週間後にありますので。」
「はい?!」
俺が慌てて立ち上がると、ロトエナは紙を渡してきた。ちゃんと陛下のサインまで入っている。
「それと、陛下からお手紙もあります。帰宅後に目を通しておいてください。」
「わ、わかりました…。」
手紙を受け取り、会議は終わったと思っていた。だが、帰る前に俺だけステファニーさんに呼び止められた。
「いや~やっぱり任命されたね。」
「あの…最初から知っていたんですか?」
「どうだろうね。でも陛下が困ってたから、前に会った時にレイ君の話をした事はあったかもね。」
「完全にそれですよ…。」
「とにかく、商会を作るんだろ?あの街は人がいないからね。」
「そうするしかないですね…。」
楽しそうに商売話をする会長の向かいで、俺は目まぐるしい展開に力なくため息をつくしかなかった。
あの後、会長とは軽く今後について話し合い、また今度相談をする事にした。
今は自室で、街に必要なものを考えている最中だ。
「あ、手紙…」
俺は胸ポケットに入っていた陛下からの手紙を出し、内容を確認した。
『魔物の討伐や俺たちにくれた護身用の魔導具には感謝している、ありがとう。
今回は伝えたい事がいくつかある。1つは、お前を国外追放しろという話があった事だ。』
手紙の内容にさすがに驚いたが、先を読み進めればその理由がわかった。ジョーカーの言っていたのはこの事か。
『あの魔物の大群を出したのが、お前の仕業じゃないかと言う貴族が何人かいてな。全員、ソラノ派と言われているやつだ。まぁ俺がねじ伏せておいたから安心しろ。
それと、クレアと話して入学の特例措置を出しておいた。反対する者が何人かいたが、他の生徒の良い刺激にもなると思ったから今回は特別だ。マリアの家庭教師をしてくれたお礼もあるしな。
最後にアルタの街の復興を頼む。ガリアが何を企んでいたのか知らないが、あの街は人がいないからな。ステファニーがお前がいればあの街を復興出来ると言っていたのでな、頼んだぞ。』
「やっぱり会長が言ってたのか…」
「凄いですね、マスター!」
「うわっ!」
いつのまにか後ろにロゼッタがおり、手紙の内容を読んでいた。
「街を1つ任されるなんて凄いです。今から一緒に街に視察に行きませんか?森にも行きたいですし!」
「そうだね。これじゃRe:ゼロから始める領主生活なんだけど…大丈夫かな?」
とりあえずまだ昼前なので、街の視察へと向かう事にした。
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