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第7章
第116話
しおりを挟む朝食後、俺はロゼッタとエレナを自室に呼んだ。俺の頭の上でフェンリルは気持ちよさそうに寝ている。
「つまり…その子の名前を考えれば良いと?」
「あんまりいいのが思いつかなくてな。」
「でも可愛いねー!男の子?」
「そう、だからなんかカッコいいのを思いついたら教えて。」
『ぴぃっ!』
「変わった鳴き声ですね…。」
いつのまにか起きたフェンリルが、俺の頭をポコポコ叩いている。
ひとまず3人でう~んと考え、最初に俺が案を出した。
「あ、じゃあフェリチュウとかどう?憧れの神獣マスターに…」
『ぴぁ』
俺の提案に、フェンリルは頭に小さな牙を思いっきり突き刺した。
「あだだだだだだだだだ!ちょっ、離せ!痛すぎるから!」
手で引き剥がしてなんとか無事だったが、傷口から小さな煙がたった。すっかり忘れていたが、フェンリルの牙には神殺しの魔法があるので、亜神の俺には天敵のようなものだ。
「お前…とんでもないやつだな。」
『ぴぃー?』
「マスター、フェンフェンなんてどうでしょうか?」
「なんかダサくね…ぎぃやぁぁぁぁぁあああ!」
ロゼッタの提案に、今度は手に思いっきり噛み付いてきた。久しぶりにこんなにダメージを食らった気がする。
俺はロゼッタにフェンリルを預け、椅子に力なくもたれかかった。
「はぁ…はぁ…少し考えて名前をだそう。エレナ、何かあるか?」
「そうだねー…フェンたんとか!」
「なんか可愛いよりな気が…」
『ぴゃっ!』
「ぐぁぁぁぁあああああっ!」
フェンリルが小さく鳴くと、俺の上に魔法陣が現れてそこから雷が落ちてきた。
「はぁ………何なら納得するんだこいつは…。フェンリル先生か?夏目友人帳みたい…わかった、ストップ!」
ロゼッタの膝の上で牙を光られせていたので、その案もダメになった。
「あー…フェルってのはどうだ?」
『ぴゃっ!』
「なんだか今までのより嬉しそうですね。」
「じゃあそれで決まりだな。よろしくな、フェル。」
『ぴっ!』
「おっ、モフモフいいなぁ…いだだだだだ!」
フェルが飛んできて俺の顔を舐めた瞬間、頰に電流が流れたような感じがした。舌で舐められるだけでもダメージをくらうようだ。
「失礼します。レイ様、ルージュ様からお手紙が来ております。」
ちょうどそこへ、シュティレが手紙を持って入ってきた。内容は、明日大事な会議があるから本部に来てくれとのことだった。
「昨日の事ですかね?」
「だろうね。面倒な事にならないといいけど…。」
俺はフェルを撫でながら小さく呟いた。
あの家で、ジョーカーが本を読みながら紅茶を飲んでいた。向かいにはいつものように姫が座っている。
「……お前、なんでたまご渡した……?」
「なんでですかねぇ♬」
ジョーカーは怪しく笑い、少し考えるようなそぶりを見せた。
「姫、浦島太郎という伽話をご存知ですかぁ?」
「………知ら、ない…。」
「簡単に言うと、青年が亀を助けたら亀がお城に連れていってくれるんですよぉ。そこで3年ほど過ごすのですが、ある日故郷が恋しくなって帰るんです。そして、青年は帰り際に変わった箱を貰うんですよぉ♪」
「……変わった、箱……?」
「はい♫それを開けるなと言われるんですが、青年は帰ってそれを開けてしまうんです。」
「……どう、なった…?」
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「……すごい、パワーアップ…。」
「はぁい♬物語は誰かが意図したように進んでいるのか、それとも運命に沿って進んでいるのかわかりませんねぇ🎶」
「……何が、言いたい……?」
「特に言いたいことはありませんよぉ?ただ、人生とは面白いものだなと思っただけです♬」
「………そう…。」
姫は飽きてしまったのか、部屋を出て行ってどこかへと走っていった。
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