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第6章
閑話・小話詰め合わせ⑩
しおりを挟む『龍の女の子は今日も元気です』
「疲れた…。」
俺は今、家への道をトボトボ歩いていた。討伐依頼を済ませ、少しだけ魔道士団本部に寄ったらレギルさんに捕まって相手をさせられた。そして気付いたら夕方になっていたので、ようやく家に帰っていると言う感じだ。
「おかえりー!」
「あれ?エレナ、その格好どうしたの?」
玄関の扉を開けると、メイド服を着たエレナが出迎えてくれた。まさしく、レストリアさん家のメイドラゴンみたいだ。
「ロゼッタの服借りたんだ!どう、似合ってる?」
「い、いいんじゃない?」
「ほんとー?!」
なんというか、サイズが合ってない気がする。スカート丈などは合っているのだが、胸のあたりが破れそうだ。紅葉ほどとは言わないが、エレナもなかなかグラマラスなので少しはちきれそうになっている。
「借りたってロゼッタに声かけたんだよね?」
「んーどうだったかな…?」
「早く着替えたほうがいいんじゃない?その…破れそう。」
「わかった!」
そう言って、エレナは自分の部屋へと走っていった。俺は疲れていたので、そのまま大浴場へ向かった。
「はぁ……至福…。」
ライオンみたいな魔物の口からお湯が出て、あたりは湯気で満ちている。まるで温泉のような大浴場を1人で使うのは、とても気持ちが良いものだった。
「ん…?なっ!」
そろそろあがろうかと思った頃、なぜかエレナが入ってきた。なんだか辺りをキョロキョロ見回している。どうやら俺には気付いていないようだ。
「エ、エレナ!ちょっと待って!今出るから!」
「レイ?!こっちに来ないで!」
だが、時すでに遅くガッツリ鉢合わせしてしまった。お互いタオルを巻いているが、なかなかに刺激が強い。
「ご、ごめん!何も見てないから!」
「待って!」
「おふっ」
その場から離れようとしたら、後ろからエレナに抱きつかれた。
「エ、エレナさん…?その、背中に色々当たっているんで、は、離れてくれると嬉しいな?(裏声)」
「み、見た…?」
「ミテナイヨ!タオルアッタシ!」
「ウソだ、絶対見たよね…。やっぱりバレちゃったか…。」
「バ、バレた?何が?」
「これ。」
エレナが離れて、俺に背中を見せた。エレナの背中には龍の鱗のようになっている部分があり、少し捲れているところがあった。
「え、これどうしたの?怪我した?」
「違うの。龍の鱗は、時間が経つと古いものが剥がれるんだ。」
「そ、そうなんだ…。」
「龍は他の人にこれを見られるのは、恥ずかしいから嫌がるの。だから、基本的に家族とか恋人にしか頼まないんだよね。」
「そっか…。じゃあ俺は先にー」
「待って!その、手伝ってくれないかな?後ろがやりづらくて…。」
「え、えぇ…。」
俺の前に、とても綺麗な背中がある。だが、ところどころ鱗が剥がれそうになっていた。
「えっと、本当に俺でいいの?」
「うん、レイがいい…。」
「そ、そうですか。では、すぐに終わらせるようにします。」
とりあえず、早めに終わらせてこの場から退散するつもりだった。だが、その望みはすぐに打ち砕かれた。
1番小さい、端っこの鱗を剥がした時だった。
「んあっ!」
「……は?」
なんだか、この場にふさわしくない声がエレナから聞こえた気がした。
「あの…エレナさん?どこか痒いところでも?」
「その…鱗が剥がれる時期は肌が敏感になってるから…。」
(なんだよそれは!すっごいやりづらいんですけど?!)
「お、俺もうあがっていいかな?」
「ダメ!成長できないからぁ!」
「成長?」
「私、初めてあった時より凄い成長してるでしょ?」
「そうだね。」
「鱗を剥がし終えるとね、個体差はあるけど魔力とか体が成長するの。私は1回だけその成長度合いが大きかった時があって、レイより身長が高くなったんだ。」
「そうなんだ…わかった、なるべく刺激が少ないようにする。」
「うん、お願い。」
そう言って、背中に手を伸ばそうとした時だった。誰かの手が俺の腕を力強く掴んだ。振り返ると、タオルを巻いたロゼッタがいた。
「マスター?何をしているんですか…?」
「いや、違う!これはあれだ、人工呼吸的な!別にやましい気持ちがあるわけじゃない!」
「じゃあなぜエレナは顔が赤いんですか…?」
「レ、レイが手荒にー」
「ちょっと口閉じてくんなまし?!」
(あれだ、深夜アニメをリビングで見てたらたまたま母親が来て、ちょうどそのタイミングで何故か主人公が何も無いところでヒロインの胸を鷲掴みにしながら転んで、テレビからやらしい声が聞こえてきた状況だ、これ。)
ロゼッタは今にも俺の腕をへし折りそうだったが、何か呟いた。
「わたしも…」
「ん?」
「私もマスターとイチャイチャしたいんです!」
「いやそこぉ?!」
結局、ロゼッタが鱗剥がしを手伝い俺はのぼせる前に風呂場を後にした。
『ある男のお話。』
平原に、小さな家が建っている。家は柵で囲まれており、柵の外には魔物がうじゃうじゃいた。
柵の中にいた1人の男が、外に向かって手を伸ばした。すると黒い魔法陣が出現し、そこから新たな魔物が何匹も出てきて魔物の群れに走っていった。
「……どれだけ作る、飽きないのかそれ…。」
「おや、お目覚めでしたか。よく寝ましたねぇ🎵」
男の側に、姫が飛んできていた。
「……いつまでそれ作ってる…?どこか、攻め落とす……?」
「さぁ、どうでしょうかねぇ🎶」
男は嬉しそうに笑うと、再び魔法陣から魔物を出し始めた。
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