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第6章
第105話
しおりを挟む最初、会長の言った事が聞き間違いかと思った。
「えっと…もう1度言ってもらってもいいですか?」
「だから、自分の商会を持たないかと言っているんだ。」
「む、無理ですよ!なんでそんな話に?!」
会長はチェスの駒を手にとって、嬉しそうに見つめた。
「今ここにある商品を全て売れば、私の商会はこの国で揺るぎない地位を築けるだろう。だけど、それじゃレイ君の物を使って私の所にお金が入ってきただけに過ぎない。私はそんな商売に魅力を感じない。だったら、レイ君が自分の商会を作って自分の所で売ればいいんじゃないか?」
「いや、でも最近忙しくて商売とかしている時間もないですし…。」
「なら、こんな感じでどうだろうか?」
会長の提案はこうだ。今は学園の試験勉強と副団長の仕事に集中する。だが、10歳で入学したら、商会を作り学園で経済学などを学びつつ現場で商品を売ればいい。それまでは、オリビア商会に数ヶ月に2点ほど机の上の物を売るそうだ。それにより、俺には原案料などが入るらしい。
「でも、学園に入ったら忙しいんじゃ?」
「『魔法袋』を使えるような人が学べる事など、座学ぐらいしない。魔法の授業や実技の時間は、恐らく君は暇になるだろう。なんならサボってもいいくらいだ。」
「サボりはしないですけど…そんなにですか?」
「あぁ。何より君は王国魔道士団の副団長様だ。そんな人が教わる事はほぼ無い。だからどうだろうか?今ここにある商品は、見たら誰でも欲しがるだろう。」
「そうですね…一旦この話は持ち帰ってもいいですか?少し考えたいので。」
「構わないよ。ただ、もしする事になったら私に言ってくれ。人や場所は私が色々知っているから、手配できるだろう。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、早速私の商会で売るものについて話そうか。」
その後、ツイスターと便座を売る事になった。便座は会長が「絶対これは早く売りたい!」と言ってすぐに決まった。俺が製作資金を出し、売り上げのうちの原案料を貰うという形で話は落ち着いた。
「そういえば、アルタの街を知ってるか?」
「はい、あの街の森が好きで何度か行ったことがあります。」
「噂で聞いたんだが、陛下があそこの領主を探しているらしいぞ。ガリア伯爵とキャロル子爵が行方不明らしいからな。あそこの街の実態を知ってるか?」
「住人が殆どいないんですよね。」
「そう、だから誰も領主を引き受けようとしないんだと。まぁ自分の領土がお金を稼げないような所となれば、引き受けたくない気持ちもわかるが。」
「えっと…その話がどうかしたんですか?」
会長は俺の言葉に妖しい笑みを浮かべた。
「レイ君は、第二王女様の家庭教師をしているんだよね?」
「そう、ですね…。」
「それだけ陛下に気に入られているという事は、そこの領主を任されるかもしれないよ~?」
「ま、まさかそんな事ないですよ!」
「どうだろうね~。まぁそうなったら自分の領土に商会を作れば良い。最初は大変かもしれないが、自然と人が集まってくるだろう。」
「そんな事ならないですから大丈夫ですよ!それじゃあ、今日はこの辺で。」
「あぁ、今日は素晴らしい商品をありがとう。途中経過などはしっかり報告するけど、空いた時間があったらいつでも来てくれ。」
俺は嫌な予感がしながらも、商会を出て家に帰った。
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