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第6章
第102話
しおりを挟む紅葉は変身をとき、俺はジャンの元へ歩いた。ジャンの翼などは消え、人間の姿に戻っている。
「う〝っ…!」
吐き気がした。今まで魔物ならいくらでも狩ったことがあるのだが、人を手にかけたのは初めてだった。その実感が、目の前の光景を見てジワジワと侵食していった。
「レイ。あまり気をやるな、呑み込まれるぞ。」
「…ありがとう紅葉、大丈夫だよ。」
吐き気を抑えジャンの傷口を塞ぐと、パーティーメンバーがやって来た。
「ごめんなさい、あの状況では…」
「いいの、誰がどうみても彼を助けられない事は分かっていたし…。」
クレアの言葉にエリーも小さく頷いていた。ドミニクはまだ辛そうだが、俺を見て口を開いた。
「ごめんね、僕が気を失わずに止めていれば…。」
「気を失った…?何かあったんですか?」
「ジャンと2人で話してたんだけど、誰かに頭を触られたような気がしてね…。それより、ジャンの遺体は僕達が預かってもいいかな?彼の弔いは僕達でしようと思っているんだ。」
「わかりました、お願いします。」
俺が大きな布を渡すと、3人は遺体を布に包んだ。クレアとエリーは目に涙を浮かべていた。
転移門でダンジョンの入り口に戻り、御者さんに事情を話した。御者さんは驚いていたが、少し拓けた場所に案内してくれた。聞けば、ダンジョンで命を落とす冒険者は少なからずおり、その人達を埋める場所だと言っていた。パーティメンバーが遺体を埋め、黙祷をした。
馬車で帰ってきた頃には、あたりは夕焼け色に染まっていた。馬車から降りて、俺たちはギルドに向かった。
アリアさんがいたので、受付に向かって事情を話そうとすると先に話を切り出された。
「あ、レイ君!御者の人を代わりに雇ってくれたの?」
「はい?何の話ですか…?」
「馬車の御者が直前で体調を崩したから他の人に頼もうとしたら、もう出発したって聞いてね。門番の兵士の人にも聞いたけど、レイ君達が馬車に乗ってダンジョンに向かったってー。」
「っ!」
俺はアリアさんの話を聞き終わる前に、ギルドの裏側に走った。そこには馬と荷馬車しかなく、御者の姿は見当たらなかった。
「遅かったか…。」
「マスター!」
遅れてロゼッタ達が走ってきた。
「あの御者はギルドの関係者じゃなかった…。おそらく、ドミニクの意識も奪ったのもー。」
「誰かが入れ替わっていたみたいですね…。」
「多分ね。でも何のために…。」
俺たちはアリアさんに事情を話すと、明日も来て欲しいと言われた。ジェラールは他の街に出張中でいないが明日は帰って来るそうなので、明日もギルドで報告をして欲しいとの事だった。
とりあえず色々疲れたので、今日は家にそのまま帰った。
----------------
夕焼けに染まる王都の繁華街を、男と少女が並んで歩いていた。
「それにしても…今日はレイ君と面と向かって話してしまいましたぁ♫もうそれだけで、イッテしまいそうでしたよぉ。」
「………キモい…。」
「ん~辛辣ですねぇ♬」
男の隣で、姫はフルーツを食べながら毒づいた。
「…お前、結局何がしたかった?……あの男、簡単に殺された。」
「それでいいのですよ、レイ君は確かに強いですが経験が乏しい。人を己の手で殺めるという、経験がね♬」
「……そのためにワザワザあんな物まで造ったのか。そんなにあの少年、お気に入り?」
「えぇ、なんたって彼は僕の『お父さん』ですから🎶」
「……キモい。」
「ん~ん、姫のそんな所も大好きですよ!」
男は嬉しそうに姫を連れて歩いて行った。
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