異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

文字の大きさ
上 下
104 / 210
第6章

閑話・小話詰め合わせ⑧(前編)

しおりを挟む

『あなたのありのままを好きになってくれる人と付き合いましょう』



それは少し先のある日の事、俺はロゼッタと紅葉と副団長室にいた。
俺は自分の机で報告書などに目を通し、ロゼッタは部屋の掃除、紅葉はお菓子を食べてソファーでくつろいでいた。

街は夕焼けに染まり、報告書も最後の1枚になった時だった。ノックもなしに扉が開き、1人の男が入ってきた。

「誰です…ってお前か。」

そこには、焦った様子のサレアがいた。お前と言ったにもかかわらず、それに気づいていない様子で部屋にズカズカ入ってきた。

「…貴様に相談がある。」

「な、何だよ…。」

「……俺を………にしてくれ…。」

「え、なんて?」

サレアは意を決したのか、力のこもった瞳で俺を見た。


「俺を…ヤリチンにしてくれ!」


「はぁ?!」


俺の驚いた声が部屋中に響いた。



とりあえずソファーに座らせて、向かいに座った。

「あのさ…さっきなんて言った?」

「だから、ヤリチ…」

「ちょっと待て!何でそれを俺に?!」

「この部屋にいる2人を見ればわかるだろ!こんな美女2人とお前はいつもイチャついているっ!うらや…じゃなかった、このすけこましが!」

「人聞きの悪い事言うな!『ToLOVEる』みてぇなハーレムを築こうなんざ思っちゃいねぇよ!だいたい気付いたらこうなってただけだ!」

「ほぉ…つまり貴様は知らない間に女性をたぶらかしていると?!それに俺の前でアニメの話を、許せん!」

2人でギャーギャー言っていると、ロゼッタがお茶を出してくれた。

「紅茶です、よかったらどうぞ。」

「うわっ!」

何に驚いたのか、サレアはソファーごと後ろにぶっ倒れた。

「おい、ソファー壊すなよ?」

「す、すまない…。だが、今日ここに来たのは。」

「は?これって何だよ。」

サレアは一瞬固まったが、少し顔を赤くしながら話し始めた。

「実はな、今度知り合いとその…出掛けることになったんだ。」

「へー。」

「興味を持て!」

「わかったわかった、それで?」

「その相手が、だいぶ前に学園で数回話したことがある女性でな。親の勧めで2人で出掛けるんだが俺はその…今まで勉強や武術ばかりやってきたから女性慣れしてないというか、女性と上手く話せないんだ。」

「なるほど…でもなんで俺の所に?俺も別に慣れてるとかそういうわけじゃないんだけど。」

「最初はティナ副団長に相談したんだが、彼女も同じような感じでな。それでお前を薦められたというわけだ。」

「ティナさん…。」

色恋沙汰の話になったからか、ロゼッタと紅葉が隣に座り食い気味に聞いていた。

「それで、その方とお出掛けなさるのはいつなのですか?」

「明後日だ。」

サレアはロゼッタと目を合わせず、変な方向を向きながら答えた。

「本当に苦手なんだな…。っていうかあと2日しかねぇじゃん!しかも今日はもうすぐ帰るぞ?!」

「だからこうして貴様の所に来てるわけだ!頼む、貴様に頭を下げるのは癪だが、俺が失敗しないように特訓してくれないか?!」

「さらっと貶したよね?そんなのお断り…」

「わかりました!」「任せておけ!」

「はぁ?!」

俺が返事をする前に、ロゼッタと紅葉が即答した。

「ほ、本当か?!たすか…」

顔を上げて紅葉の胸が目に入ったのか、顔を赤くしてサレアは倒れた。

「はぁ……前途多難すぎる。」


とりあえず明日の1日で、サレアの特訓をする事が決まった。



次の日、俺たちは副団長室で昨日と同じ位置に座り、特訓とやらが始まった。

「えっと相手の名前は?」

「セイラさんだ。もうだいぶ前に学園で会って以来だから、どんな容姿か想像つかんな。性格は優しい穏やかな人だった。」

「そうか…ならとりあえずロゼッタと会話して練習するのはどうだ?」

「なっ!ハードルが高すぎるだろ!」

「高くねぇよ!それが出来なきゃ何も始まらねぇよ!」

「そ、それもそうだな。わかった、ロゼッタさんお願いしよう。」

「わかりました。」

とりあえず、カフェなどを想定して2人は向かい合わせに座った。俺と紅葉は、少し離れた所で見守っている。
ロゼッタがセイラさん役になり、会話練習をする事になった。

「久しぶりだね、サレア君。学園で会って以来だね。」

「おぉ…」 「鉄娘にしてはやるな。」

ロゼッタの演技の上手さに2人で感心していた。対する、サレアはー


「ひひひ久しぶりだなっ!げげげげげげげんきにしてたか?!」


アホみたいに震えながら、下を向いて答えてた。

「ちょっと待て!なんだ今の返しは!ジャスタウェイみたいになってたぞ!?」

「し、仕方ないだろ!それをなんとかしてくれと言っているんだ!」

「くっそーこんな頼み聞くんじゃなかった!こんなんAランクのギルド依頼だろ!」

「これは…重症ですね。」

「妾もこんな奴とは話が続けられる自信はないな。」

「はぁ…わかった、もっと基本的な事から練習しよう。」


とりあえず、目を合わせなければ話にもならないので、無言でお互いの目を見るという謎の練習が始まった。

「………………。」

「………………。」

ロゼッタとサレアがじっとお互いを見るという、俺の部屋で謎の光景が繰り広げられている。サレアは顔を赤くしながらも、なんとか耐えている。

「もう明日なのに…大丈夫かな。」

「まぁ最低限の会話が出来れば大丈夫じゃろ。」

「だといいけど…。」


30分ほどそれを続け、やっと会話の練習に戻ってきた。

「いいか?まずは相手の目を見て話をする事。顔を反らしながら話しても、相手はなんだこの人って思うからな。」

「わ、わかった…!」

そして再び会話の練習が始まった。さっきよりは随分マシになっていたが、たまにオドオドしている感じがある。

それからも会話の練習を続け、気付けば昼の時間になっていた。

「あ〝あ〝ぁぁぁ…分隊の特訓もしなきゃいけないのに、俺は何で成人男性(独身)の特訓をしているんだ…。」

「わ、悪いとは思っている!」

「マスター、明日はお出掛けを見守らないといけないので引き続き頑張りましょう。」

「明日も行くの?!」

「はい、サレア様に念話などでアドバイスをした方がいいと思うので。」

「はぁ……もうイヤ…。」  


その後は紅葉が会話練習をして、デート中のエスコートの仕方やしてはいけない事を3人で叩き込んで、夕方頃にはだいぶマシな位にはなっていた。


「はぁ…後は俺が紙に書いた事を帰ったらおさらいしてくれれば大丈夫だと思う…。」

「本当に助かった。これで明日は無事乗り切れそうだ!」

「サレア様、明日は相手の方を上手くエスコート出来るよう頑張ってください!」

「何かあったら妾達が念話でアドバイスするから安心しておれ。」

「わかった、皆ありがとう。」

そう言ってサレアは部屋を出て行った。


そしてついにデートの日となった。

しおりを挟む
感想 192

あなたにおすすめの小説

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜
ファンタジー
転生者でチートな母と、王族として生まれた過去を神によって抹消された父を持つシア。幼い頃よりこの世界では聞かない力を操り、わずか数年とはいえ前世の記憶にも助けられながら、周りのいう「規格外」の道を突き進む。そんなシアが双子の弟妹ルークとシャノンと共に冒険の旅に出て… これは【ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました】の主人公の子供達が少し大きくなってからのお話ですが、前作を読んでいなくても楽しめる作品にしているつもりです… +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-  2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます  時々さかのぼって部分修正することがあります  誤字脱字の報告大歓迎です(かなり多いかと…)  感想としての掲載が不要の場合はその旨記載いただけると助かります

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...