異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

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第5章

閑話・小話詰め合わせ⑦

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『グルメ漫画って最初は「料理の絵が上手いだけでしょ?」と思って読み進めて、気付いたらめちゃくちゃハマってる事多い説』(タイトルに深い意味なし)



屋敷で初めて昼を済ませた俺は、屋敷の調理場に向かっていた。シュティレの言う通り、女性料理長の腕は確かだった。異世界ならではの生物を使った料理など、ガツガツ食べてしまった。

調理場に行くと、男性の料理人が1人と料理長のラキがいた。

「ラキ、ちょっといいかな?」

「はい?ってレイ様!どうかなさいました?さっきの昼食が口に合わなかったとか…。」

「違う違う、料理は美味しかったし!

「なら良かったです!」

ラキはまだ25歳と若いが、その腕を買われてこの屋敷に来たらしい。茶髪のショートヘアで元気な少女のような感じだ。

「それより、食材を買いに行きたいんだけどあんまり詳しくないから、今から一緒に来てくれない?」

「えぇっ?!ムラムリムリムリです!男爵様と一緒に歩くなんて…」

「そんなの俺は気にしないし、早くしないと料理時間がなくなっちゃうからさ。」

「料理…?レイ様も料理をされるんですか?」

「うん、ちょっと気になったものがあってね。」

「…わかりました。手短に済ませましょう!」


そして2人で屋敷を出ようとした瞬間、誰かに肩を掴まれた。振り返ると、不気味なオーラを放つ紅葉がいた。

「レイ、何をしている?まさか、でーととか言うやつじゃないだろうな…?」

「違うわ!食材を買いに行くだけだから!」

「そ、そうです!私なんかが滅相も無い!」

紅葉は理解したのか、オーラを消して笑顔になった。

「なら妾も行くのじゃ!」

そう言って紅葉は俺の手を引っ張って、屋敷を飛び出した。   


今日俺が探すのは、パンケーキの材料だ。『幻夢の図書館ドリーム・ライブラリー』と言う魔法で、ありとあらゆる知識を手に入れる事が出来る。これを使うと、夢で無重力の空間に入り、調べたい事柄を頭に思い浮かべると本がフワフワ飛んでくるのだ。

俺は先程それを使い、パンケーキの作り方を調べた。前世ではよく朝に食べていたのだが、こっちにはホットケーキを作れる魔法の粉がないので、それなしで作れる調理法を探したのだ。

 

「あとは…小麦粉ならあっちのお店に良いものがありすよ!」

「ならそこに行こっか!」

「レイ、あそこに美味そうな肉が売ってるぞ!」

「はぁ…さっき昼食べたばっかりでしょ?」

「こういったものは別腹じゃ!」

結局、紅葉の食べ歩きをしながら必要な材料を揃えて屋敷に歩いた。

「ラキといったか?お主は想い人がおらんのか?」

「はい?!」

帰る途中、不意に紅葉がそんな事を言ったのでラキは持っている食材を落としそうになった。

「なんで急にまたそうなったの?」

「女に恋の話はつきものじゃ。妾のように!」

「だからってラキにいるとは限ら…」


そう言ってラキの顔を見るとリンゴのように真っ赤になっていた。今にも湯気が出て、ぶっ倒れそうな勢いだ。


「いるんかい!」

「ほれ見ろ!で、誰じゃ誰じゃ?あ、レイは妾がもらったからダメだぞ?」

「あげたっけ…?」

「とにかく誰じゃ?」

「えっと…ぅぅ……リトです…。」

ラキは紅葉の前では逃げられないと思ったのか、小さな声で答えた。

「誰じゃ?」

「ラキと一緒に料理を作ってくれた男の人いたじゃん。って職場恋愛だ!」

「た、確かにそうじゃな!チャンスなんていくらでもあるではないか!」

最初はそこまで気にならなかったが、目の前で少女漫画みたいな展開が始まりさすがに気になってきていた。
 

(え、やだ男なのにキュンキュンしちゃんうんですけど!だって同じ空間に好きな人がいるって少女漫画みたいやん!あれだ、ドS系主人公がヒロインの体にチョコを塗って『お前を食べてやるよ…』って言って…ってそれはR-18だったわ。)

俺がリアル経験のない妄想を膨らませる中、紅葉とラキは2人の世界が出来上がっていた。

「どんな所が好きなんじゃ?」

「えっと…初めは料理仲間だったんですけど、一緒に働いてるうちに意識して…みたいな?」

「妾は会った時から好きじゃぞ!」

「えっ!一目惚れみたいなものですか?すごいですね…。」

「レイは強くてかっこよくて、優しいやつじゃからな。惚れない要素がないくらいじゃ。」

「レイ様をとても愛されているんですね…。」

「当たり前じゃ。ラキも早く行動しないと他の奴にとられてしまうかもしれんぞ?」

「そ、そうですよね…今度お菓子なんか作ってあげてみます!」

「ジワジワ攻めていくタイプじゃな?なかなかやるな!」

「そ、そうですかね?レイ様はお菓子なんかすき…」



「………え?なんか言った?」

俺は完全な前世の女性漫画の妄想世界に入っていたので、2人の会話が耳に入っていなかった。
2人とも、なんだか俺に残念なものを見る目を向けている。

「はぁ…妾がこれだけ想っているというのに…」

「レイ様、今のはさすがに可哀想かと。」

「え?!だから何が?!」

「もう良い、今度たっぷり愛してもらう。」

「だから何が?!」

紅葉の機嫌が急に変わった事に戸惑いながら、3人で屋敷に帰っていった。
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