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第6章
第89話
しおりを挟む俺は今、目の前の豪邸に開いた口が塞がらない。なんというか…
「デケェ…」
(ロズ○ール邸とか桐○千棘ちゃんの家ほどじゃないけどこれは…)
目の前に派手すぎず、洒落た感じの屋敷があった。隣では、紅葉とロゼッタがはしゃいでいる。
「レイ!これが妾達の新しい家か?!庭があるぞ、庭!」
「そうだね…。」
「マスター、私達の部屋はもちろん一緒ですよね?!」
「どうだろう…。」
「今後の主人殿の成長が楽しみだな。」
「もう進撃で予想外の展開が多すぎるくらいお腹いっぱいだよ…なんでア○ちゃん女型だったのよ、推しだったのに…。」
玄関の前で並んでいた執事やメイドの中から、1人の執事が俺たちの方に来て礼をした。
「レイ・トライデント・レストリア男爵様、この度この屋敷に仕えさせていただくシュティレと申します。よろしくお願いします。」
「ど、どうも…。」
「レイ様とロゼッタ様のお荷物は既に手配してあります。」
「部屋は同じですよね?!」
「いえ、別れておりますが…一緒にした方がよろしいですか?」
「今すぐ!出来ればベットも…!」
「落ち着きなさい。」
興奮しているロゼッタを抑えて、とりあえず屋敷の中を見る事にした。
「レイ様のお部屋はこちらになります。」
「す、すごいな…。」
俺の部屋には、高そうな机やベット、クローゼットなど最低限の物は全て揃っていた。
なんだか前世では考えられないような値段がしそうなので、詳しくは聞かないでおいた。
「家具などは必要なものしか置いておりません。もし気に入らなければ、買い替えても良いとイフ副団長から言われております。」
「いや、もうこれだけしてくれてるから満足だよ。足りないのは後から買い足していけば良いし…。スサノオの部屋は?」
「私はそのような物はいらないので、ありませんよ。」
「…そういえばいつもどこにいるの…?」
「紅葉殿の寝殿の近くにある岩の上で座禅を組んでおります。」
「あ、そうだったのね…。」
その後も応接室や大浴場などを見せてもらい、高級感に疲れたので自室のベッドで休んだ。
このまま寝落ちしそうだなと思っていると、シュティレがたくさんの資料のような物を持ってきて部屋に入ってきた。
資料を机に置く音がするが、嫌な予感しかしないので寝たフリをした。
「レイ様。」
「…もう寝てるかも。」
「大丈夫です、レイ様は起きておられます。それよりこちらに目を通しておいてください。」
観念して起き上がると、すごい量の資料が山になっていた。
「…それはなに?」
「他の貴族の方からのお見合いや縁談の話がきております。それと、爵位を授かったレイ様はお披露目会を開かなければなりません。招待される方へのお手紙の準備等もあるので、早めに済ませましょう。」
「もう頭が痛い…。」
俺はスケジュールが埋まっていく現実を逃避したくなった。
とりあえずお見合い等の資料は後で目を通すとして、お披露目会をどうするかだ。
部屋にはロゼッタ、リゼ、シュティレの4人がいる。
「えっと…こういうのはやった事がないからイマイチわからないんだけど、誰を招待すれば良いの?」
「マスターのご友人などではないですか?」
「それも大事ですが、基本は貴族の方達と交流を持っておく事の方が大事ですよ?」
リゼにアドバイスされ、貴族社会の大変さを改めて実感した。
「それと日程ですね。食材や食器の準備、遠方の方や皆さまご都合があると思うので、時間を開けた方が良いでしょう。1ヶ月後などどうでしょうか?」
「わかった、じゃあそれでいこうか。」
一通り流れが決まった所で、リゼが仕事に戻って行った。
何故かロゼッタは俺にべったりだが、シュティレはあまり気にしていないようだ。
「レイ様、本日はお手紙とお見合い等の資料に目を通していただきますが、明日はどうなされますか?」
「えっと…家庭教師を頼まれてるのと、王国魔道士団の本部に行かなくちゃいけないかな…。」
「副団長に就任されたのでしたね、おめでとうございます。家庭教師というのは…?」
「あぁ、謁見では言ってなかったけど第2王女様の護衛兼、家庭教師になれって陛下に言われてるから。」
それを聞いて、初めてシュティレの表情に大きな変化が見れた。
「す、すごいですね…。わかりました、ではお手紙の方を始めましょうか。」
そして地獄の手紙作成が始まった。シュティレが貴族達のリストを持ってきてくれたので、ゴリゴリ書いていった。この世界には、当然パソコンやプリンターはないので全て手書きになる。ロゼッタは俺の筆跡をコピーして、隣で手伝ってくれている。
とりあえず知り合いなどを先に終わらせたが、後半は昔お披露目会であった程度の人達がだいぶ残ってしまった。
「あぁもう無理、なんでこれ手書きなの!」
「マスター、頑張ってください。あと半分です。」
「まだ半分!あ〝ぁもうつらたん…まだ見合いのやつとかもあるのに…
」
「マスター、頑張りましょう。終わったらナデナデしてあげます。」
「レイ様、もう少しです。いつかはなれますし、もうすぐこの屋敷での初めての昼食がありますよ。料理長は女性の方ですが、かなり腕が良いと聞いております」
「あぁ…2人ともありがとう…」
ロゼッタはもちろんなのだが、シュティレは話に聞いていた通り仕事が完璧というか、俺の扱い方が上手かった。
俺は残りを昼ご飯までに、猛スピードで終わらせた。
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