98 / 210
第6章
第89話
しおりを挟む俺は今、目の前の豪邸に開いた口が塞がらない。なんというか…
「デケェ…」
(ロズ○ール邸とか桐○千棘ちゃんの家ほどじゃないけどこれは…)
目の前に派手すぎず、洒落た感じの屋敷があった。隣では、紅葉とロゼッタがはしゃいでいる。
「レイ!これが妾達の新しい家か?!庭があるぞ、庭!」
「そうだね…。」
「マスター、私達の部屋はもちろん一緒ですよね?!」
「どうだろう…。」
「今後の主人殿の成長が楽しみだな。」
「もう進撃で予想外の展開が多すぎるくらいお腹いっぱいだよ…なんでア○ちゃん女型だったのよ、推しだったのに…。」
玄関の前で並んでいた執事やメイドの中から、1人の執事が俺たちの方に来て礼をした。
「レイ・トライデント・レストリア男爵様、この度この屋敷に仕えさせていただくシュティレと申します。よろしくお願いします。」
「ど、どうも…。」
「レイ様とロゼッタ様のお荷物は既に手配してあります。」
「部屋は同じですよね?!」
「いえ、別れておりますが…一緒にした方がよろしいですか?」
「今すぐ!出来ればベットも…!」
「落ち着きなさい。」
興奮しているロゼッタを抑えて、とりあえず屋敷の中を見る事にした。
「レイ様のお部屋はこちらになります。」
「す、すごいな…。」
俺の部屋には、高そうな机やベット、クローゼットなど最低限の物は全て揃っていた。
なんだか前世では考えられないような値段がしそうなので、詳しくは聞かないでおいた。
「家具などは必要なものしか置いておりません。もし気に入らなければ、買い替えても良いとイフ副団長から言われております。」
「いや、もうこれだけしてくれてるから満足だよ。足りないのは後から買い足していけば良いし…。スサノオの部屋は?」
「私はそのような物はいらないので、ありませんよ。」
「…そういえばいつもどこにいるの…?」
「紅葉殿の寝殿の近くにある岩の上で座禅を組んでおります。」
「あ、そうだったのね…。」
その後も応接室や大浴場などを見せてもらい、高級感に疲れたので自室のベッドで休んだ。
このまま寝落ちしそうだなと思っていると、シュティレがたくさんの資料のような物を持ってきて部屋に入ってきた。
資料を机に置く音がするが、嫌な予感しかしないので寝たフリをした。
「レイ様。」
「…もう寝てるかも。」
「大丈夫です、レイ様は起きておられます。それよりこちらに目を通しておいてください。」
観念して起き上がると、すごい量の資料が山になっていた。
「…それはなに?」
「他の貴族の方からのお見合いや縁談の話がきております。それと、爵位を授かったレイ様はお披露目会を開かなければなりません。招待される方へのお手紙の準備等もあるので、早めに済ませましょう。」
「もう頭が痛い…。」
俺はスケジュールが埋まっていく現実を逃避したくなった。
とりあえずお見合い等の資料は後で目を通すとして、お披露目会をどうするかだ。
部屋にはロゼッタ、リゼ、シュティレの4人がいる。
「えっと…こういうのはやった事がないからイマイチわからないんだけど、誰を招待すれば良いの?」
「マスターのご友人などではないですか?」
「それも大事ですが、基本は貴族の方達と交流を持っておく事の方が大事ですよ?」
リゼにアドバイスされ、貴族社会の大変さを改めて実感した。
「それと日程ですね。食材や食器の準備、遠方の方や皆さまご都合があると思うので、時間を開けた方が良いでしょう。1ヶ月後などどうでしょうか?」
「わかった、じゃあそれでいこうか。」
一通り流れが決まった所で、リゼが仕事に戻って行った。
何故かロゼッタは俺にべったりだが、シュティレはあまり気にしていないようだ。
「レイ様、本日はお手紙とお見合い等の資料に目を通していただきますが、明日はどうなされますか?」
「えっと…家庭教師を頼まれてるのと、王国魔道士団の本部に行かなくちゃいけないかな…。」
「副団長に就任されたのでしたね、おめでとうございます。家庭教師というのは…?」
「あぁ、謁見では言ってなかったけど第2王女様の護衛兼、家庭教師になれって陛下に言われてるから。」
それを聞いて、初めてシュティレの表情に大きな変化が見れた。
「す、すごいですね…。わかりました、ではお手紙の方を始めましょうか。」
そして地獄の手紙作成が始まった。シュティレが貴族達のリストを持ってきてくれたので、ゴリゴリ書いていった。この世界には、当然パソコンやプリンターはないので全て手書きになる。ロゼッタは俺の筆跡をコピーして、隣で手伝ってくれている。
とりあえず知り合いなどを先に終わらせたが、後半は昔お披露目会であった程度の人達がだいぶ残ってしまった。
「あぁもう無理、なんでこれ手書きなの!」
「マスター、頑張ってください。あと半分です。」
「まだ半分!あ〝ぁもうつらたん…まだ見合いのやつとかもあるのに…
」
「マスター、頑張りましょう。終わったらナデナデしてあげます。」
「レイ様、もう少しです。いつかはなれますし、もうすぐこの屋敷での初めての昼食がありますよ。料理長は女性の方ですが、かなり腕が良いと聞いております」
「あぁ…2人ともありがとう…」
ロゼッタはもちろんなのだが、シュティレは話に聞いていた通り仕事が完璧というか、俺の扱い方が上手かった。
俺は残りを昼ご飯までに、猛スピードで終わらせた。
31
お気に入りに追加
5,960
あなたにおすすめの小説

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

チートな親から生まれたのは「規格外」でした
真那月 凜
ファンタジー
転生者でチートな母と、王族として生まれた過去を神によって抹消された父を持つシア。幼い頃よりこの世界では聞かない力を操り、わずか数年とはいえ前世の記憶にも助けられながら、周りのいう「規格外」の道を突き進む。そんなシアが双子の弟妹ルークとシャノンと共に冒険の旅に出て…
これは【ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました】の主人公の子供達が少し大きくなってからのお話ですが、前作を読んでいなくても楽しめる作品にしているつもりです…
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます
時々さかのぼって部分修正することがあります
誤字脱字の報告大歓迎です(かなり多いかと…)
感想としての掲載が不要の場合はその旨記載いただけると助かります

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる