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第5章
第85話
しおりを挟むその日、ガリアとキャロルは親子揃って迷路を眺めていた。
「珍しいな、お前がこんな所に来るとは。」
「先程遊んだ女がここに出るので、最期を見届けたくて来ました。」
「はっはっはっ!私に似ていい趣味している。お前のような息子がいて良かったよ。」
そこにまた、影の中から男が現れた。
「これはこれは。親子揃って観戦するのは初めてじゃないですかぁ?」
「また来たのか。今日は何の用だ?それとも息子に用があるのかね?」
「父上、この方は誰です?」
「こいつはー」
ガリアが話そうとするのを、男は遮った。
「そんな事よりキャロル様、あちらの少女は?」
男の指差す方には、足から血を流して座り込む白髪の少女がいた。上から見るとよくわかるのだが、そう遠くない所に魔獣が1匹いる。
「父上あれです!あれが私の連れてきたヤツです!」
「ほぉ、1度魔獣に襲われたようだがなんとか逃げたようだな。だが、あれだけ血を流しているとなると、出血死か魔獣に食われるのどちらかが先だろうな。」
ガリアの言葉に、男は可笑しそうに笑い始めた。
「どうした、何がおかしい?」
「いえ、もう1つ選択肢があると思いまして♫」
「なんだって?」
「それでは、参りましょうか🎶」
男が呟くと、3人は影に沈んでいった。
--------------
「………はぁっ……はあっ……っ!」
エリスは息を切らし、足の痛みに顔を歪め座り込んだ。
キャロルが不慣れで早漏だったのか、最初に少し痛み感じただけで行為そのものはそれ以降何も感じなかった。だが、少女にとって心の傷は大きかった。
キャロルは10分ほどで出て行き、数十分して別の研究者が入ってきてエリスをここに連れてきたのだ。その時は、抵抗する気力も湧かなかった。
だが、入ってしばらくして魔獣に遭遇し足に噛み付かれた時、最後の力を振り絞ってなんとか振り払い、ここまで逃げてきた。逃げている間にも、数回別の場所から悲鳴が聞こえてきた。
怖くて逃げたかったが、もう限界だった。涙も枯れ果て、頭がフラフラしてきている。
ふと視線を向けると、よだれを垂らした魔獣がエリスの方にゆっくり歩いてきていた。なんとか座りながらも後ずさりするが、魔物との距離はむしろ近づいていく。
諦めかけたその時、影から3人の人物が現れた。
よく見ると、何が起きたのかわからないガリアとキャロル、それからもう1人は楽しそうに慌てる2人を眺める知らない男だった。
「なっ、貴様何をする!早く私を戻せ!」
「お、お前!早く僕を上にかえせ!」
2人は謎の男にすがりよったが、男は不気味な笑みを浮かべたままだ。
「それは出来ない相談ですねぇ🎶あなた方は私の恩人とレイ君のご友人に手を出した…。そんなヤツー」
「消えて無くなってしまえばいい。」
男の冷たい言葉に2人は震え、エリスでさえも今までの事を忘れそうになるくらい震え上がった。
腰を抜かしたり2人に向かって、男は影から黒い鎌を取り出しなぎ払った。
すると、ガリアとキャロルの両足が取れ2人は悲鳴をあげた。男は嬉しそうな顔のまま、魔獣に目を向けた。
「あらあら、なんとも可愛らしい魔獣がいるではありませんかぁ♫」
そして振り返ってエリスのもとへ歩み寄り、笑いながら手を伸ばした。
「さぁお嬢さん、僕の手を取って。こんな危ない所は早く出ましょうか🎶」
男はエリスの手を優しく握った。魔獣は血の匂いを嗅ぎ、慌てふためく2人の方へと走ってきている。
「ま、待ってくれ!その娘を傷つけたのはこのバカだ!私は関係ない!」
そう言ってガリアはキャロルを魔獣の方に押しのけた。
「ち、父上!なにを…ギャアァァア…」
魔獣は勢いよくキャロルに噛みつき、体中を喰らっていった。そして、その匂いと叫び声を聞き別の魔獣が走ってきた。
「た、頼む!私だけでも助けてくれぇ!」
なんとかガリアは男の足にしがみついたが、男はガリアの顔面を蹴り飛ばした。
「そういえばあなたが前に言ってましたね…最期の音を聞くのが好きだと。あなたはどんな音を聞かせてくれるのでしょうかぁ♬」
そう言ってエリスと男は影に沈んでいく。ガリアは男に弱々しく手を伸ばした。
「ま、待てジ……ギィァァアア…」
ガリアは魔獣に食い殺され、哀れな最期を迎えた。
「人の叫びは悲痛なものですが…クズの叫びはたまりませんねぇ🎶すこしはあなたの考えがわかった気がしますよ…。」
男はそう呟いて、エリスと影の中に消えていった。
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