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第5章
第75話
しおりを挟む今俺の前には、サレアだかイフだかわからない人物が、足を組み優雅にお茶を飲んでいる。
「あの…」
「おっと、ごめんね。って相変わらずサレアの眼鏡は度が強いな…全くこんなのいらないのに。」
そうってサレア(?)は眼鏡を投げ捨てた。
「えっと…サレアさんですよね?」
「違うよ、僕はイフだって言ったじゃん。もー忘れないでよ。」
「いや、忘れたわけではなくて…えっとどういう事ですか?」
イフはハッとして、カップを静かに置いた。
「あ、説明するんだった。僕はね、というかこの身体には2人の人が住んでるんだよ。」
「2人が住んでる…?」
「うん。サレアがこの世界に転生した時に、神様なのかな?が転生記念におまけをくれたんだって。それがこの身体らしいよ。それで僕とサレアは、こうやってたまに入れ替わってるわけ。」
「そ、そうだったんですか…。大変そうですね。」
「うーん、どうだろ。これが僕らにとって当たり前だから、そこまで苦ではないかな。こうして、動きたい時には出れるしね。今回は、君を見て気になったから出てきたんだ。」
イフは俺を珍しい物でも見るように見つめた。
「出ていなくても見れるんですか?」
「うーん、目で見ると言うより夢の景色を眺めてるって言う感じかな。出てない時は、身体で眠ってるような感じなんだ。でも夢のようだから、サレアが話した声と見てる景色は見れるんだ。入れ替わる直前なら、サレアと少し会話も出来るしね。」
「な、なるほど…あ、ティナ副団長の部屋って3階のどのあたりですか?」
「壁の件かな?それなら僕が案内するよ。じゃあ行こっか!」
そう言って、イフは俺を連れて部屋を後にした。
階段を上がってすぐのところに、ティナさんの部屋はあった。
イフさんがノックして先に入った。
「あら、その感じだとイフさんかな?それとレイ君も!今日はどうしたの?」
ティナさんは、俺たちを見て嬉しそうな顔になった。
「お久しぶりです。とりあえずこの紙を。」
「なになに…あ、やっぱりこれレイ君だったのね。1人で壁を直す人が来るって聞いてたから、なんとなく予想はしてたけど当たってたみたいね。わかったわ、住民達の事は任せて。」
「それと1つお願いが…」
「何かしら?」
「壁を一緒に視察してくれる方を誰か派遣して欲しいんです。建築等のことはあまり詳しくないので、意見を聞きたくて。」
「そうねぇ…誰かいたかしら…。」
ティナさんが少し考えていると、その肩をイフさんがちょんちょんとつついた。
「僕がいるじゃないですか!」
「イフさんが?あ、確かにぴったりね!」
「イフさんはそう言った事に詳しいんですか?」
イフさんは俺の方を嬉しそうに見た。サレアの顔でニコニコされると、なんとも言えない気分になる。
「うん!剣術とか魔法はサレアが詳しいけど、反対に僕は王国の本とか読み漁ったからね。建築関係の本も何回も読んだことあるよ!」
「そうだったんですか!なら今から壁の上に行きましょう!」
「うーん…でもあの壁は10m近くあるよね。どうやっていくの?よじ登るの?」
イフさんの疑問に、ティナさんは嬉しそうに笑った。
「ふふっ、レイ君は飛行魔法を使えるんだよ!私も1回飛んだけど、あれは楽しかったなぁ…。」
「えっ、そうなの?!王国魔道士が昔から研究中しているものを子供なのに…。すごいんだね、じゃあ僕もお願いしようかな。」
「はい!じゃあティナさん、そちらの方はお願いします!」
「わかったわ。イフさん、レイ君の手助けお願いね。」
「喜んで。楽しみだな~。」
ティナさんと途中で別れて、俺たちは壁の方に向かった。
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