異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

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第5章

第74話

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別室でお茶を飲んで待機していた家族と合流して、家路に着いた。
馬車の中で陛下から言われた事を伝えたら、みんな驚いていた。

「あらあら、またレイの婚約者が増えるわね~。」

「母さん、そういうのではないです。」

「第二王女が婚約者ってすごいね、レイ。僕も頑張らなきゃだね。」

「兄さんもよくお見合いの話が来てるじゃないですか…。」

「でもなかなかいい人がいなくてね…。」

「ま、焦って決めるもんじゃないからな!流れに身を任せればいい。」

「父上の言う通りですね。」

そんな話をしながら、壁の修復について考えた。とりあえず、明日にでも視察に行くのだが、問題はどう修復するかだ。
まだ馬車から見たことしかないのでなんとも言えないが、ヒビ割れや色が変わっているところがあり、かなり年季が入っているように見えた。

(まぁ、明日触ったりして決めるか。)


次の日、俺は壁の状態を視察するため王国騎士団の本部に来ていた。陛下に壁を見るなら、王国騎士団に報告してからと言われていたからだ。報告すれば、壁に住民が近づくのを防ぐよう手伝ってくれるらしい。

とりあえず、受付で陛下のサイン入りの紙を見せて中に入った。受付でティナさんは3階にいると言われたので、中に入って階段を登ろうとした時だった。


「おい、そこで何をしている。」

「え?」

振り返ると、眼鏡をかけた男が歩いてきた。

「ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ?」

「いや、一応関係者なんですけど…え?!」

試しに鑑定して、その結果に俺は目を見張った。
[名前]はサレア・ボレアースと書いてあり、[称号]の欄に王国騎士団副団長とその横に『転生者』と書いてあったのだ。

「何を驚いている。それより、委任状か何か持っていない…」

「あの…転生者なんですか…?」

「なっ、何故それを?!ここじゃまずい、ちょっとこい!」

俺はサレアに腕を引っ張られて、どこかの応接室のような所に連れていかれた。


サレアは応接室の鍵をかけ、俺を座らせた。

「なぜ俺が転生者だと?今まで陛下にしか知られた事がないのだが。」

「いや、俺も転生者で鑑定を使ったらたまたま…」

俺の言葉にサレアは目を見開いていた。

「お、俺以外にもいたのか…知らなかった。」

「俺も初めて知りました。じゃあベラム様にも会ったことあるんですか?」

「ベラム…?あぁ、あのふざけた絶対神とやらか。ここに転生する前に1度会ったが、それ以降会っていないな。まぁ会いたくなどないが。」

「ま、まぁこの事はお互い秘密にしましょう!言いふらすものでもないですし!」

「そうだな…それで今日はここに何をしにきたんだ?」

「あ、これを…」

俺はサレアにあの紙を見せた。

「まさか…壁の修復をする者がいるとは聞いていたが、お前のような子供だったとは…そういえば名はなんという?」

「レイです、レストリア家の次男です。」

「そうか…わかった。なら王都の住民には俺たち王国騎士団が、声をかけたりして壁に近づかないようにさせる。壁の件、頼んだぞ。」

「はい!なんていうか、この世界ってアニメのファンタジーみたいですよね…」

それを聞いたサレアは、ピクリと反応して固まった。

「今なんて言った…?」

「え、だから前世のアニメにありそうだと…」

「お前はあの"アニメ"を好んでいるのか…?」

やけにアニメの所を強調してサレアは聞いてきた。
(同じアニオタなのかな…?)

「は、はい。まぁかなり好きでしt…」

「ふざけるなぁぁぁああ!!」

「えぇっ?!」

応接室にサレアの怒鳴り声が響いた。

(なんだ?!夜○月みたいな声出さないでくれ!びっくりしたわ!)

「あの忌々しい"アニメ"が好きだぁ?俺はな、前世で実家がアキバにあって毎日オタク達を山のように見てうんざりしていたんだ!毎日会社帰りにガチャを回したり、ゲーセンに行ったり!何故あんなくだらない物に熱中して、金を使う!俺には到底理解できん!」

「なっ…!くだらなくないです!アニメは日本の文化だ!それにそのお金で、日本の経済の一部を回していたと言っても過言じゃないんだぞ?!」

アニメをくだらない物呼ばわりされて、途端に反論したがサレアはそんなの聞いてはいなかった。

「うるさい!だいたい何故あんなにも巨乳が多い?!ワン○ースなんて、どこを見ても巨乳しかいないじゃないか!そのせいで俺は巨乳フェチになってしまったんだぞ!それとあの漫画はもう完結したのか?!」

「あんたのフェチなんて知らねぇよ!むしろそれアニメの影響受けまくりじゃねえか!それと、ワンピースは俺がいた時はまだ終わってねぇよ!まだ終わる気配なかったよ!」

「ま、まだ終わっていなかったのか…。というか俺は別に巨乳は好きじゃ…ぐっ!」


突然、サレアは頭を抱えて苦しみだした。

「お、おい!大丈夫か…?」

「こんな時に…!おい、今は引っ込んでろ!」

「え?」

「昨日出してやっただろうがっ!話を聞け!」

「何言ってんだ…?」

「ぐっ!後で覚えとけよ!」

そう言い残してサレアは意識を失った。
俺は慌てて駆け寄り、肩をゆすった。

「お、おい!大丈夫なのか?!誰か呼んでこないと…!」

そう言ってドアの方に向かおうとした瞬間、倒れていたサレアに腕を掴まれた。
振り返ると、サレアが俺の腕を掴んでいた。だが、どこか様子が変だ。


「いや~さっきはうちのサレアがごめんね。あの人、いつもカッとなると止まらないからさ。」

「…はい?」

もう目の前の人が、サレアなのか誰なのか訳がわからなかった。

「はじめまして、僕はイフ。よろしくね。」

もう自分がおかしくなったんじゃないかと思い始めた。
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