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第4章
第72話
しおりを挟む案内された部屋は、王城の寝室の1つだった。ベットの上には金髪の綺麗な女性が、目を閉じて窓の方を見て座っていた。
「俺の妻だ。数ヶ月前に食事に毒か何かを盛られてな。それ以来、視力がどんどん低下してるんだ。」
陛下の声に、第一王妃が俺たちの方を向いた。
「あら、どなたかいらっしゃったの?こんな形でごめんなさいね、ダグラスの妻のエリザベスです。あなたは?」
「お初にお目にかかります。レストリア家次男のレイ・トライデント・レストリアです。」
「あら、レストリア家の方ね。レイラさんとは、何度かお披露目会で会った事がありますわ。あとでよろしく伝えておいてくださる?」
「かしこまりました。」
そこでダグラス様がエリザベス様の手を握った。
「こいつはな、この国でおそらく1番の魔法の使い手だ。だから、お前の目を治してもらえるかと思って連れてきた。」
「そうだったのね!治るといいわね、あなたやマリアの顔も久しぶりに見たいものね…。レイ君、お願いできるかしら?」
「わかりました…やってみます!」
「レイ様、頑張って!」
ベットのそばに立ち、エリザベス様の顔に両手を向ける。
「『聖なる妖精の輝き』」
小さな魔法陣から、輝く小さな光がたくさん出現しエリザベス様の顔のまわりを飛んで消えていった。
「……………ん。」
小さな声を出し、エリザベス様が瞼を開いた。
「…あなた、マリアも!見えるわ!久しぶりにあなた達と目を合わせられるわ!」
「お母様ー!」
「ふふっ、ごめんなさいね。娘のあなたにまで心配をかけてしまって。」
マリア様はエリザベス様の胸に飛び込んだ。ダグラス様も嬉しそうな顔をしていた。
「レイ君、本当にありがとう。もうあのまま、家族の顔も見れないままだと思ってたわ…。あなたのお陰よ、本当にありがとう。」
「いえ…私は私に出来る事しかしていないので、お礼なんて。」
「レイ様、本当にありがとうございます!また助けられてしまいましたね。」
「レイ、俺からも礼を言う。娘の事といいありがとう。」
そう言って陛下は俺に頭を下げた。
「ちょっ!お顔をお上げください!」
「いや、ここで身分を気にする必要はない。今だけは、一家族の夫であり父である1人の男に過ぎないからな。本当にありがとう。」
「わ、わかりましたから!あ、それと先程もう1つ頼みがあると…?」
「そうだったな、とりあえず座るか。」
ベットから離れた小さなテーブルに向かい合って、俺と陛下は座った。
陛下は、エリザベス様と抱きつくマリア様を優しい目で眺め、俺の方に向き直って話し始めた。
「レイ、マリアの家庭教師と護衛を頼まれてくれないか?」
「え?!」
俺の声が寝室に響いた。
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