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第4章
第70話
しおりを挟むリーゼロッテさんは途中で案内役の人と代わり、先に謁見の間へと歩いて行った。
案内役の人に連れていかれた部屋には、大きく分厚い扉があった。
「それでは、開けますね。」
そう言って扉を開けてもらい中に足を踏み入れると、左右に貴族の方たちが並び、真正面は階段のようになっており、階段の下に身分の高そうな方たちが10人ほど、階段の上には国王らしき人が座っておりその横に何人か王家の方がいた。
(…あぁもう吐きそう。前世でもこんな経験ないのに、なんでラノベの主人公達はこれ平気なの、おかしくないかな…?ぅえっ。)
頭の中で、前世で見たアニメの次の話の展開を予想して吐き気を紛らわした。
中央までゆっくり歩いていき、片膝をついき左胸に手を当てて頭を垂れた。
「面を上げよ。」
そう言われて顔を上げると、たしかに冒険者にいそうなくらいガタイの良い王がいた。隣には、第一王子らしき人と第一王女、第二王女らしき人がいた。王妃の姿は見えなかった。
第二王女は俺と目が合うと、少しニコッと笑った。
(な、なに…?俺何か間違ってた?あぁもう帰りたい、胃がキリキリする…)
王が俺をまじまじと見て、話し始めた。
「レイ・トライデント・レストリアだな。私がこの国の王の、ダグラス・リラ・ダライアスだ。」
(うわーん、知ってるよ!その名前、昔本で読んだよ!本物おっかなすぎんだろ!)
俺は心の中で大泣きした。瞳が少し濡れていたかもしれない。
「お前は先日、第二王子のブレイドと勝負したという事で間違いないな?」
「…はい、間違いありません。」
「なぜ勝負をしたんだ?男が拳を交えるほどの理由があったのか?」
「それは…」
俺は少し考えてから、答えを出した。
「…王国騎士団副団長のティナ・レイティス様が望まない婚約をされ、その上ブレイド第二王子に襲われそうになったため、私が反対した結果そのような結果になりました。」
俺の答えに、周りが少しざわついた。
「ほう、つまりお前は副団長が襲われる現場にいたと?」
(ほうって言った、今この人ほうって言った!んな言葉アニメでしか聞いたことねぇよ!やばい…吐きそうな上にちびりそう。)
俺がなんとか気を落ち着かせ、答えようとするとリーゼロッテさんが横から歩いてきた。
「陛下、その証拠ならここに。」
そう言って、黒いケースに乗せられた魔石を献上した。
「これは…?神獣の魔石か。して、どのように使う。」
(え、なんで神獣の魔石って…。)
「あ、その魔石を壁に向けて魔力を壁に放つイメージで流します。ですが、ここでするのはおやめになった方がいいかと…。」
「そうか、まぁ良い。それではお前には、ブレイドにも言い渡すつもりだったが、処罰を言い渡す。」
(ついに来たか…!王子も死んでるし王国追放か…?)
「この王国を囲んでいる、壁の全面解体及び全面修復を命ずる。」
王の言葉に、貴族たちがざわついた。もちろん、壁のデカさを知っている俺も驚いた。
「異論のあるものはいるか?」
1人の貴族が手を挙げた。
「なんだ、キャロル子爵よ。」
「陛下!お言葉ですが、このような子供にそのような事が可能なのでしょうか?あの壁を全面修理するのは、王国魔道士でも難しいのでは?」
「子爵はこいつの実力を知らないようだが、私の聞いた話ではまだ8歳だが、あのジェラールの承認を得て登録済みだと聞いた。それにAランクのブレイドを、誰も見たことのない魔法で簡単に倒したというではないか。これを聞いても、私の判断は間違っていると思うか?」
「…いえ、ございません。」
キャロル子爵とやらは、少し悔しそうに下がった。
「他にないようだな。これで謁見は終了にする!それとレイ、あとで応接間に来い。話がある。」
そう言い残して、陛下と王族たちはその場を後にした。
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