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第4章
第68話
しおりを挟むその後も、依頼をこなしたりなどして1週間以上が経とうとしていた。そしてついに、国王への謁見の日が来た。
朝起きると、ベットに銅貨や野菜、魔石などが散らばっていた。
謁見の前夜に、緊張して眠れず魔法袋の整理をしてそのまま寝落ちしてしまったようだ。
だるい体を起こすと、何か重たいものがお腹にのしかかっている気がした。
何かと思い掛け布団をめくって俺は絶句した。
知らない男が、俺に抱きつき添い寝をしていたのだ。しかも、裸で。
「………………………。はぁ?!」
俺の声に目を覚ました男は、のそりと起き上がった。綺麗な黒髪が所々はねており、無精髭をはやしたダンディーな印象の男だった。
「レイ様、本日は謁見の日ですね。もうすぐ起きないと…」
最悪のタイミングでリゼが俺を起こしにきた。
男は寝ぼけながら、俺と目を合わせてきた。
「……主人よ。初めて会ったのに共に夜を明かしてしまったな。」
「レ、レイ様がそのようなご趣味に?!」
「目覚めてねぇよ!はっきりわかってねぇから誤解しないでくれ!」
「…誤解…?何を言っているん…」
「あんたは黙ってくれ!て言うか誰だ?!こういうのはアニメだったら美少女がいるのがセオリーじゃないの?!」
騒ぎを聞きつけたロゼッタも俺の部屋にやってきた。
「レイ様?何か大きな声が…」
「違う!っていうか早くあんた服着て出ろ!」
「わ、私はもうレイ様の妻にはなれなくなってしまいましたか…」
ロゼッタが遠い目をしながら、つぶやいていた。
男は床に落ちていた青い服を着て、椅子に座った。俺は向かいに座り、横にはロゼッタと眠そうな紅葉がいる。
男は、1度咳払いをして話し始めた。
「主人にはお初にお目にかかります。私、『草薙剣』、又の名を『天叢雲剣』と申します。何とぞよろしくお願いいたします。」
「「えっ?!」」
俺とロゼッタは2人して驚いていた。天叢雲剣と言ったら、あの青い刀のイメージしかない。
「叢雲ってあの龍の国の刀の?」
「左様でございます。大昔、私は前絶対神と契約した刀でした。ですが、そのお方が亡くなられる前に友人だった三代前の赤龍に渡され、二代前からは使われる事はありませんでした。そして、最近になり神に匹敵するであろう力を持つ主人に魔を注がれ、再び目覚める事が出来ました。その節はありがとうございました。」
「な、なるほど…でもこの前、ここに帰ってきてから使った時はまだ刀だったよね?」
「あの時は寝ていました。私は寝ている間は刀の状態なので。」
「そ、そうなんだ…かなり自由なんだなそこは。」
すると叢雲は真剣な顔で、身を乗り出してきた。
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「契約?別にいいけど、どうやって?名前をあげるでいいの?」
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『そうだな…じゃあスサノオにしようぜ!結構良くないか?!』
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「これからよろしくお願いします、我が主人よ。」
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