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第4章
閑話・小説詰め合わせ④
しおりを挟む『オタクは気分を味わいたい』
俺は今、自室でロゼッタと睨み合っていた。
「マスター、では始めますよ…?」
「あぁ…いつでもこい!」
時は少し前に遡る。
ギルドを出ておかしくなった俺を元気づけるため、ロゼッタが夜に賭けをしようと言ってくれたのだ。そして、まさしく今それが始まろうとしていた。
「ルールは私が決めて良いんですよね?」
「うん、人生初にして人生最期の賭けだけどね。」
「わかりました…ではルール説明を始めます。」
俺は無意識に唾を飲み込んだ。もう既にゲームは始まっているのだ。
(ここでの相手の動作や目の動きなどをよく観察し、試合に備えるんだ…。)
そしてロゼッタがルール説明を始めた。
「今回は3本勝負です。3本のうち1本でも当てられたらマスターの勝ちです。」
「3本中1本だけでも?それって俺に有利すぎないか?」
「ふふっ、まだ判断するのは早いですよ?」
「なにぃ?!」
無駄に臭い芝居みたいなセリフを返すが、ロゼッタはそのまま続けた。
「試合内容を聞いてから判断してください。賭けるのは、1試合に大銀貨1枚。勝ったら相手の大銀貨をもらえます。」
「それで試合の内容は?」
「それは…」
ごくりっ。遂に俺の初のギャンブルの試合内容が明かされる時が来た。
「私の履いている下着の色を当ててもらいますっ!」
「………………………………………。」
(あれ、今ロゼッタさんから凄いアホな言葉が聞こえたかも。そんな訳ないよね、あのロゼッタさんだもん!)
「ロゼッタ、もう一回聞いてもいいかな?」
「聞こえませんでしたか?私の履いてる下着を…」
「ちょっと待てぇぇ!なんでそうなった?!試合前に相手を観察するとか考えてた俺がバカみたいじゃん!それにお前はそれでいいのか?!お金を得る代わりに、何か大事な物を捨ててないか?!」
「あら、逃げるんですかマスター?」
何故かS女のような笑みを浮かべるロゼッタに、俺は頭を抱えた。
「もうドMなのかドSなのか訳わかんねぇ…!こんなゲーム、ノゲ○ラでもねぇよ!本当にそれでいいのかっ!」
「えぇ、マスターの夢にでも出れば更に良いですね。」
「あ、悪夢なのか吉夢なのかわかんねぇよそれ…。」
「では始めましょうか。」
「うぉい!」
慌てる俺をよそに、ロゼッタはテーブルを俺たちの間に置いた。
「今からこのテーブルの上に賭け金をおいてください。そしたら、ゲームスタートとなります。1試合終わったら、私は魔法で下着を変えますので。それと、マスターには1試合に1回だけ質問するチャンスがありますので、よく考えて質問してください。」
「…ぁあ、もうやる流れ決定なんだ。」
俺は力なく大銀貨1枚を机に置いた。ロゼッタも俺に続いて置いた。
「それでは開始します。」
そう言うと、ロゼッタの足元に白い魔法陣が浮かんだ。
「第1試合、スタートです。」
「始まっちゃったよ…」
男としてここは外すわけにはいかない。決して下着の色を見たいとか、そういった感情は決してない。と思う。
(心を無に…。パンツの色を当てるのではない、ただの布の色を当てるだけだ…。)
とりあえず思考をフルで動かす。
(さっき白い魔法陣だったよな…。あれはパン…じゃなかった布の色と関係あるのかな…?)
「よし、質問する。」
「はい、どうぞ。」
「そ、その…白ですか?」
「さぁどうでしょうか?」
ロゼッタは先程のS女のような笑みを浮かべた。
(あぁぁああ!!勿体ねぇ事した!そりゃ色聞いて、はいそうですなんて答え返ってくるわないじゃん!そんなん尾田○一郎先生にルフィは海賊王になりますか?って聞くようなもんじゃん!)
「残り1分です。」
「なっ!制限時間とかあんのか?!」
「いつまでも考えていいわけないです。」
ロゼッタはさも当たり前のように俺に言ってきた。
(クッソどうする!白でいくのか…それとも!…って俺は異世界に転生してまで何してんだ?!)
俺はそこでようやく落ち着いた心を取り戻し、無の表情で答えた。
「答えは"白"だ。」
「ファイナルアンサー?」
「…ファイナルアンサーだ。」
「正解は…」
そう言ってロゼッタは、スカートの裾に手をやった。
「おい、まさか…」
(なんだ、この週刊誌とかの袋とじを開ける瞬間みたいな感覚は!)
「水色です。」
答えを言いながら、少し裾をあげた。そして水色の何かが見えた。
俺は床に手を叩いて悔しい涙を流した。
「クッソー!最初の白はフェイクかよ!水色なんて…もはや頭にも浮かばなかったよ!」
正直、側から見たらバカ2人がアホな事をしているようにしか見えないが、試合に夢中の俺にはそんな事どうでも良かった。
ロゼッタは賭け金を没収し、さぞご満悦な顔をしていた。
「ふふっ、第1試合は私の勝ちですね。」
「別にいい!次で終わらせる!」
そして2人とも賭け金を置き、また魔法陣が出現した。今度はピンクの魔法陣だった。
「それでは第2試合、スタートです。」
(どうする?!これで負けたら次が最後だ。今回はピンクだったよな…。いや、前回と同じで魔法陣とは違う色パターンかもしれないし、今度は逆に同じってパターンもあるな…。質問するか…)
「質問だ。そ、それはロゼッタの好きな色か?」
「そうですね…なんとも言えません。」
(なんとも言えない…?ロゼッタはよく魔法も火と光を混ぜて桜色にしてる傾向があるから、ピンクはなしと言っていいだろう。どうする、これ完全に確率なんだよな…。)
そこで、俺にある考えが浮かんだ。ここは『異世界』なのだ、つまり魔法が使えるのだ。
(水魔法でロゼッタの下に小さな水溜りを作って…よしっ!)
「う、う~んどうしよっかな~。」
子供が嘘を隠す時みたいな声を出し、俺はバレないように水魔法で作戦通り、小さな水溜りをロゼッタの足元につくった。
(よし!あとは見るだけ…)
俺が見ようとした瞬間、ロゼッタがしゃがんで俺の顔を覗き込んだ。
「おかしいですね…こんな所に水黙りなんてありましたっけ、マスター?」
「う〝っ…!」
「マスター、ダウトです。掛け金は没収します。ちなみに私が履いていたのは紐パ…」
「見せなくていいから!」
こうして俺は第2試合もあっさり負けた。おそらく魔法を使った時点で、バレていたのだろう。それを敢えてギリギリまで言わず、俺の反応を楽しむとは。ロゼッタ、なんて恐ろしい娘。
「次で最後ですね、準備はよろしいですか?」
「あぁ、ここで必ず勝つ!」
「では勝った方は、望みを負けた方に叶えてもらうなどどうでしょう?」
「もう好きにしてくれ…」
そう言うとロゼッタは俺の耳元で囁いた。
「マスターが勝ったら、私にあんな事やこんな事をしていいんですよ?」
「え〝っ?!」
(いや、あなたいつからそんな小悪魔女子みたいなキャラになったの?絶対浮気とかしたらすぐわかるタイプの人だよこの人。)
賭け金を置いて、最終試合が始まった。
今度は赤の魔法陣だった。
(赤か…派手だな。ロゼッタがそんなのを履くとは思えないしな。というかさっき紐って言ってなかったか?これはノーマルな考えじゃダメなのか。もっとアブノーマルな…まさかこやつ!)
ロゼッタの顔を見ると、ニヤリと怪しく笑った。
(は、履いてないのでは?!バ、バカなっ!そんな痴女みたいな真似を…いや、可能性はないとは言い切れないな。)
「質問だ…履いてはいるんだよな?」
「さぁ、どうでしょう?」
(くっそー!確信が得られねぇ!だが、流石に布の色を当てるゲームだ、何かしら履いているはず!)
もう誰が見てもバカな状況なのに、ヒートアップした俺の思考は止まらなかった。
「よし!答えはピンクだ!」
「ファイナルアンサー?」
「………ファイナルアンサー!」
「正解は…」
緊張しすぎて唾を飲み込みながら、時が止まっなような感じがした。
「履いていな…」
(ぶふっー!)
一瞬肌色が見えたような気がした瞬間、普段より頭を使いすぎたせいか俺は勢いよく鼻血を吹き出して倒れた。
「マ、マスター?!しっかりしてください!」
「ム、ムリ…トウゲンキョウガ…」
「マスター!」
その日以来、俺が賭けという言葉を口にすることはなかった。
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