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第3章
第63話
しおりを挟む『ティナさんに…なぜ?!』
『レイの指輪があるのに何故じゃ…』
ティナさんはゆっくりこちらへと歩いてくる。とりあえず中規模の魔法障壁をはり、あたりの街に被害が出ないようにした。
「多分さっき転移した時かな…一瞬だけど、ここが崩れた時指輪に魔力が通らなくなってそこをつかれのか…状態異常無効魔法はかけてなかったからね。それかここで試合が始まった時にクソ王子の霧を既に少し吸ってたのかもな…」
念のために街中に、霧に似た魔力を探したが、ティナさん以外には感じられなかった。
ティナさんから感じる魔力は、ブレイドの時に比べるとティナさん本来の魔力と、違う魔力が少し混ざっているような感じだ。
「多分これで攻撃したら普通にダメージが入るかも…」
『えっ?!』
「あの黒い霧の成分が少なそうだし、不完全なーってうわ!」
ティナの手に黒い剣が現れ、いきなりレイに突き技を放ってきた。
「あぶねぇ…これは困った…。」
すると突然ティナが頭を抱えてうずくまった,。
「……レイ君……ワ、ワタシヲ……コロシテ………」
「『『っ!』」」
『まだ自我が?!』
『ティナ、しっかりするんじゃ!』
ティナは苦しそうに頭を抱えている。レイが近づいて声をかけようとした瞬間、もう一本黒い剣が現れ、レイの顔と腹を薙ぎ払おうとしてきた。
「……コロ…ス……!!」
慌てて紅葉とロゼッタで二本ともガードするが、剣が両方消えたと思ったら、ティナは手を振り上げそこに新たな剣が生じレイの頭に突き刺そうしてきた。
なんとか紅葉で受け流し、後方に飛んで距離をとった。
そしてすぐに駆け出し、斬りかかった。だが、それは罠でティナが剣でガードしようとした瞬間に背後に転移して、羽交い締めにする。
そこで光魔法を詠唱し、状態異常回復を試みたが、ブレイドの時と同じでLv.Maxのステ持ちでも効果はなかった。
諦めてもう一度距離を取る。
『マスターの回復魔法が効かないとなると…』
「術者の闇魔法か何かのLv.がMaxなのかあるいは…人工的に作られた魔法なのか、龍の国の時みたいに違う世界の魔法なのかだね…」
『そんな人がいるとは…』
『可能性はゼロではないが、だとすると厄介じゃな。』
「いや、1つだけ方法はある。」
『そうなのか?!なら早くそれを…』
だが、レイは気まずそうにしていた。
『マスター、どうかしましたか?』
「いや、これをやると2人に怒られるかも…いや、2人には後で好きにさせるから今は許してな。」
『一体何のことじゃ…?』
ティナが黒い槍を何本か飛ばしてきたので、レイは大きく走り周りながら軽々避けて近づいていく。
「2人とも、1回だけだから許してね。それとティナさんも、後で好きなだけ殴っても蹴ってもいいから許して!」
そう言ってレイは大きく跳躍すると、ティナに牽制の光弾を放ち怯んだ隙に、飛びかかった。
ティナがとっさに黒い剣を突き出しだが、レイは止まることなくティナに向かっていった。
黒い剣がレイの腹を貫通したが、レイは気にすることなくティナを抱きしめ動けないようにした。
『マスター!』『レイ!』
2人の心配そうな声が聞こえるが、構っていられない。
そしてレイはティナに口付けをしたー。
口付けを一瞬で終わらせることなく、そこからティナの魔力を一気に吸い取っていった。
ティナの魔力がなくなると、ティナは気絶して倒れ黒い剣もなくなった。
レイは自分とティナに回復魔法を瞬時にかけ、ティナの魔力を回復させ自分の傷を治した。そして、ロゼッタをこめかみに当てて引き金を引いた。
「……はぁ…あとは解析お願い…。」
そう言い残してレイの意識は遠のいていった。
『呪詛魔法を確認。取り込んだ微量の魔力を直ちに解析…。解析完了。新たに《聖魔法》を作成…。作成完了、1番有効な魔法をマスターに発動。』
「……はぁっ!はぁ…はぁ…。」
意識を取り戻して目を開けると、心配そうに覗き込むティナ、ロゼッタ、紅葉の顔があった。
「マスター!良かった…本当に良かったです…。」
「全く…妾も焦ったぞ!」
ロゼッタは抱きついてきて、紅葉は相変わらず頬擦りをしてきた。
「まぁ龍の国で1回やってるからね…。上手くいくと思ったし、どんな魔法か気になったからね。それとティナさん、その…勝手に唇を奪ってしまってごめんなさい。これじゃクソ王子と変わらないですよね…。煮るなり焼くなり…」
だがティナは怒った表情など一切せず、むしろ微笑んでいた。
「いいのよ。あのままだったら私の好きな国に被害が出ていたかもしれなかったし。それに、感染?していた時の記憶はほとんどないのよね…。だから、謝る必要なんてないわ。むしろ私を助けてくれてありがとう。」
「いえ、別にそんな…」
「うぅ…ここは…?」
3人が話していると、後ろの方から男の声がした。見ると、ブレイドがようやく意識を取り戻したようだった。
ロゼッタと紅葉が歩いていき、ゴミを見るような目で見下ろした。
「あなたは開始早々、私達に負けた挙句、何の罪もない一般市民を15人ほど殺害しました。もう逃れられないでしょうね。」
「観客の皆が見ておったからな。それとティナを襲おうとした事もキッチリ報告させてもらう。」
「ば、馬鹿な…!この私がそんなことを!」
ブレイドはティナを見つけると、すがるような目でティナを見つめた。
「ティ、ティナ!頼む、君だけは僕の味方だと信じている!僕たちは婚約者同士じゃないか!僕はまだ君の事を愛しているんだ!」
ティナはビクッと体を震わせたが、ティナに"あるもの"を渡すと、ハッとなり初めて会った時のような凛々しい表情になった。
レイはティナに、試合前にサキさんから預かっていたティナの剣を渡したのだ。本当は試合後にクソ王子をぶった斬ってもらおうと思っていたのだが、ここで渡すのもいいだろう。
ティナは剣を抜きながら、ゆっくりブレイドの元へ歩いていく。それを見たブレイドは顔色をどんどん悪くしていった。
「…私はもうあなたのような卑劣な男に屈しない!私は、私の好きなこの国をいつまでも護り続ける…。だから、あなたと結婚などしない!」
そう言って剣を振りかぶった。
「ま、待て!悪かった!この前の事は謝るから命だけは!たのm…!」
「はぁぁぁぁああ!!」
ティナはブレイドの頭めがけて、剣を振り下ろしたー。
が、その剣は当たる事はなく、ブレイドの頭ギリギリで止められていた。ティナはゆっくり剣を納め、真っ直ぐとブレイドの目を見て言い放った。
「…あなたの事は大嫌いですが、殺そうとまでは思っていません。私以外の女性にも謝罪をして罪を償って生きていきなさい。」
それだけ言ってティナは、ロゼッタと紅葉を連れてレイの所に帰ってきた。
みんな、心の靄が晴れたような顔をしていた。
「レイ君、ロゼッタさん、紅葉さん。今回は本当にありがとう。私だけだったら今頃望まない未来に…。」
「気にする事はないです。友人として当然の事をしたまでです。キ、キスは何とも言えませんが…」
「そうじゃな、妾もあの男は嫌いだったから一石二鳥という物じゃ。」
「本当にありがとう!」
ティナは瞳に涙を浮かべていたが、その涙はこの前の物とは全く違う物のようだった。
「みんな、先に帰っててもらえるかな?」
「ん、どうかしましたかマスター?」
「ちょっとやり残してた事があってね。ほら、早く早く!」
「あ、レイ!」
レイは3人を押してティナの家に向かわせた。
「さてと…」
レイはブレイドの方を向いた。先程、ティナ達が離れた時、魔法で聴覚を強化したらブレイドの言っている事がハッキリ聞こえた。
『…このクソ女が…!父さんに言って絶対私の性奴隷に……!』
正直聞いた瞬間、魔法で撃ち殺そうと思ったが何とか理性で抑えられた。
レイはブレイドの所へ歩いて行った。ブレイドはブツブツとまだ何か言っている。さっきの言葉が元の性格のせいなのか、あの呪詛魔法のせいなのかは分からなかったが今はそんな事どうでもいい。
レイはブレイドの胸ぐらを掴んで殺気を放って睨み付けた。
「1つだけ言わせてもらう。ティナさん達はお前達達の性欲処理の道具でも、ましてや孕み袋でもなんでもねぇ。お前みたいなクズに人生を壊されていい女性なんてこの世に1人もいない。みんな自分の人生を必死こいて生きてんだよ!だからもう2度とティナさんの前に現れるな…。」
ブレイドは放心していたが、それだけ言ってレイは去って行った。
-------------
レイが去った後、宙にほんの僅かな小さい黒い点のようなものが浮かんでいた。
点は少しずつ大きくなると、やがて霧のような靄になり、人の形となった。
そして最終的に、薄汚れたローブを着た男へと変わった。
「いやぁ、まさか愛しのレイ君に取り込まれそうになるとは…最高の体験でしたぁ♫でも…まだまだ君の事を見ていたいから今回はお預けだね。それにさっき僅かに聞こえたあの言葉!僕が女だったら1発で堕ちてましたよぉ♡おや…?」
男の視界の先には、地面を見つめ放心するブレイドの姿があった。
「あれは…誰でしたっけ?あ、レイ君を虐めていた人だったかなぁ?酷い奴が居るものですねぇ♪そんな人は…」
男が手を開くと、大きな黒い鎌が現れた。
「この世に必要ありません🎶」
そう言って綺麗に鎌を横に振った。
「さて…次は何をしましょうかねぇ…」
男はそう言って去っていった。
しばらくして、ブレイドの頭が体から離れ地面に転がった。
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