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第3章
第61話
しおりを挟む一瞬だが、レイは何か不吉なものを感じた。ロゼッタと紅葉も同じように、辺りを見回している。
観客達が帰ろうとしている中、ティナが観客席から手を振っている。
「みんなー!お疲れ様!ってどうしたんだろ…」
「なんか探してるみたいだね。」
不吉な何かを感じ取っていたため、ティナの声も3人には響いていなかった。さっきのは何かと思い、魔力の根源を探ろうとするが人が多いのでわかりづらい。
すると、くたばっているブレイドを中心に大きな黒い魔法陣が出現した。
(この魔力量、まずい…!)
「全員、ここから離れろ!!」
レイが叫んだと同時に、魔法陣が光り始め黒い霧が倒れているブレイドを包んでいった。霧には小さな雷が走り、まるで雷雲のようだった。
観客も何が起きたかわからず、みんな帰ろうとしていたが闘技場を見て固まっている。
霧が晴れると同時にブレイドがゆっくり立ち上がった。目は赤く血走り、魔力も以前のものとは別物のように感じた。
「マスター…これは…」
「鑑定したけど、操られてるっぽいな。《呪詛魔法》の類か…。使った事ないから解けるかどうかわかんないな…。」
ブレイドは辺りを見回して、客席の方に手を向けた。
「まさか…!よせっ!」
レイが止めようとしたが、それよりも早く黒い魔法陣から黒い槍が何本もとてつもない速さで飛び出し、客席を貫いた。当然辺りには血が飛び散っていた。
それを目の当たりにした観客達は、叫びながら出口へと走り始めた。
「お前…!何やってんだ!」
レイはブレイドを殴り飛ばし壁に激突させた。そのまま崩れた壁に土魔法を使い、ブレイドを土の中に閉じ込めた。急いで魔法袋から魔石とイヴを取り出し
た。
「上空から映像記憶を頼む!」
イヴは頷くと透明になり飛んで行った。
客席では、サキがティナの腕を引っ張っていた。
「ティナ!早く逃げないと!ここにいたら危ないよ!」
慌てふためくサキの手を、ティナは優しく掴んだ。
「ごめんね、私はここに残る。友達を残して逃げたくないからね。」
「でも…!」
「大丈夫よ、レイ君からもらった指輪もあるしね。サキは早く逃げて。」
サキはティナの目を見て確信した。この目は何を言っても、もう譲らない覚悟がある目だ。サキはため息をついて、手を離した。
「…わかったよ。でも危なくなったら絶対に逃げてね?」
「うん、ありがとう。」
礼を言われたサキは足早に客席を去っていった。ティナの目の前では、倒れたはずの王子と3人が再び戦いを始めようとしていた。
とりあえず、ブレイドを土の中に埋めたが、土の隙間から黒い靄が出始めている。
「レイ、どうするんじゃ?」
「久しぶりに3人で戦うか。」
「了解です。やられる事はないと思いますが、お気をつけて。」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう。」
2人は変身魔法を使い、右手に紅葉を持ち左手にロゼッタを構えた。
黒い靄はやがて一箇所に集まり、人型になりブレイドが現れた。
「なんだそれ…自然系の悪○の実でも食ったのか?」
ブレイドは無表情でレイを見つめている。が、次の瞬間両手に黒い爪をはやし、一瞬で距離を詰めてきた。
「ほっと。」
とりあえず紅葉でガードするが、かなりパワーが上がっているように感じる。
ブレイドは力を込めてレイを押し飛ばそうとするが、ビクともしない。力を込めているのか、息が獣のように荒い。
「臭い息吐いてんじゃねぇよ。」
左手のロゼッタをブレイドの腹に向けた。
「『新世界の神の光』」
銃口から渦を巻いた巨大な光魔法のレーザーが放たれ、ブレイドを壁に激突させた。
(どうだ?取り憑かれたやつには光を浴びせると効くもんだけど…)
ブレイドは霧になり再び立ち上がると、レイを睨み付けた。
『ウォォォォォオオオオオ!!!!』
人の叫びとは思えないような、低い怒りの声が闘技場に響いた。
「どう倒そうかな…。」
レイは1人静かに呟いた。
客が逃げ回る中、ティナの他に1人闘技場を見つめる者がいた。視線の先には刀と銃を構える少年がいる。
(さぁ…君はこの状況をどうするんだい?僕をもっと驚かせてくれ♫)
男は人差し指をブレイドに向け、指先に魔力を込めた。
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