63 / 210
第3章
第59話
しおりを挟むその後は4人で昼ご飯を済ませ、着替えてから闘技場に向かった。
すでに話は王都広まっているのか、大勢の見物客がおり、皆どっちが勝つかに賭けたりしているようだった。
控室のような所で待っていると、扉をノックする音がした。扉が開いて、ティナさんともう1人知らない女性が入ってきた。
「レイ君、同僚のサキよ。朝言った私に無理やり休暇を取らせた人。」
「無理やりってひどいな~。君がレイ君ね、ティナから話は聞いてるけど本当に子供だったとはね。今日は頑張ってね、私もあの王子は嫌いだからさ!」
「はい、ありがとうございます。」
「じゃあ私達は観客席に戻ってるわね。」
「あ、ちょっと待ってください!」
戻ろうとする2人を慌てて止めた。そしてティナに魔石が埋め込まれた指輪を渡した。
「これは?」
「おっ、レイ君やるね~。もうプロポーズ?」
サキが面白い物を見つけたようにからかってきた。
「違いますよ。席に戻ったらそれに1回だけ魔力を通してください。その魔石には魔法障壁と反撃魔法が付与されていて、この国のどんなに強い人でも破れないし攻撃を受けたら倍にして返す仕様になっているので。アイツが俺たちだけを攻撃してくるとは限らないですからね。」
「…本当にすごいのね。何から何までありがとう。」
「あ、それとサキさん!」
「ん?どうしたの?」
「ちょっと1つお願いがー。」
そう言ってサキの耳元で要件を伝えた。サキはあまり腑に落ちてない様子だったが、了承してくれた。
「それじゃみんな、頑張ってね!」
そう言って2人は控え室を出て行った。
「じゃあ2人とも頑張ろ…」
振り返ると、青キジも凍るような2人がいた。
「マスター、あの指輪はなんですか…?」
「レイ、あれは婚約指輪か?」
「話聞いてたでしょ?!魔道具だから!」
ロゼッタはハグをして、紅葉は頬ずりをして満足そうに出て行った。レイも後から疲れた顔をして追いかけた。
選手の会場入り口から、観客席を見るとほぼ満員になっていた。どうやら王都中から人が集まっているようだ。
「うわぁ、ちょっと緊張するなぁ。」
「マスター、それなら勝った暁には帰ったらご褒美をあげましょう。」
「え、どんなの?!」
「ま、待て!なら妾は寝殿で夜を共に…」
紅葉が変なご褒美内容を言おうとしたら、後ろから声をかけられた。衛兵の1人で、俺たちの闘技場案内係の人だ。
「なぁ、お前達本当にあの王子に勝てるのか?王子は数少ないAランク冒険者だし、部下の2人も魔法が得意な事で有名だし…」
「知ってるよ。1人は火・風・土の三属性使いで、もう1人が火・水・光のこれまた三属性でしょ?そんなのとっくに鑑定済みだから心配ないよ。」
「なっ、ボウズ鑑定が使えるのか?!」
「そうだけど…なんか変?」
「いや、スキルの鑑定を持っているやつはほとんどいないからな…。しかも相手の使える属性がわかるとなると結構レベル高いだろ。」
(ごめん、今ここにいる4人のうち2人は使えるんだよね…。)
「まぁ多少はね。」
すると闘技場から司会の大きな声がした。魔法で声が響くようにしているため、声は闘技場に響き渡った。
『みなさん!本日はお集まりいただきありがとーございます!!これから始まるのは、我が国の第2王子VS無名のFランク冒険者の決闘です!
どちらが勝つのでしょうか?!結果が気になりますね!!』
(嘘つけ。どうせクソ王子の方に賭けてたりするんだろ。)
「全く。なんであんなのがいいんだろうな。」
そう言う俺の手をロゼッタと紅葉が優しく握った。
「私はマスター以外興味ないです。それにこの勝負、私たちの勝ちと決まっていますから。」
「妾もレイ以外の男など、眼中にないからの。勝って今夜は楽しもうな!」
「ありがとな、2人とも。」
『それでは入場していただきましょう!赤コーナー!我が国第二王子!クールでお強いブレイド・リラ・ダライアス様と、お付きの双子魔道士、ギルルとガルルだー!』
ブレイドは高くジャンプし、空中で1回転して着地し観客に手を振った。女性たちから黄色い声援を浴びて、さぞご満悦そうだ。
「てか、あの2人ギルルとガルルって名前だったのかよ…。なんかケロ○軍曹にも同じようなのいなかったっけ…?」
『続いて青コーナー!Fランク冒険者のレイとロゼッタともみじの3人だー!』
「行こうか、2人とも。」
「はい!」 「うむ!」
「3人とも頑張れよー!」
案内役の衛兵の言葉を背に、闘技場入りした。もちろん、黄色い歓声など起きるはずがないと思っていたが何箇所から聞こえた。1つは貴族達が見ているエリアから。
「レイ!負けるんじゃねぇぞー!」
「レイちゃーん!ロゼちゃんと紅葉ちゃんも頑張ってねー!」
「レイ、帰ったら魔法の試合頼む!」
「お兄ちゃーん!」
「レイ様ー!ほどほどにー!」
家族の5人が来ていて、ロゼッタと紅葉はまさかの人物に驚いていた。
「マスター、なぜみなさんが…。」
「さっき転移して報告に行ったんだよ。勘当くらいされるかと思ったけど、事情を説明したら、みんな王子に怒ってたよ。でもまさか来てるとは思わなかかったな…。」
そしてもう一箇所。
「レイくーん!また面白い魔法期待してるよー!」
「ちょっ、ギルドマスター!は、恥ずかしいですよっ!れ、レイ君達頑張ってー!」
(いや、なんとなく来るとは思っていたけど少しうざい。アリアさん顔真っ赤になってるし。)
周りの客達も王都一のギルドのマスターが無名の冒険者を応援しているのに驚いていた。
『おおっと!なんとあの「アミュレット・サーガ」のギルドマスター・ジェラール様が無名の冒険者達を応援しているぞ!?一体どういうことなのか!これは試合が面白くなりそうだ!』
『それでは選手の方は位置についてくださーい!』
俺たちは向かい合うように右から、紅葉・俺・ロゼッタの順番に位置についた。
(向こうはギル…ガル…あれどっちだ似てて分かんねぇな。まぁいっか。)
『それでは選手が位置についたようです。ルールは簡単、最後に1人でも残ったチームの勝ちです!それでは…始めっ!!』
こうしてクズ王子との勝負が始まった。
---------------
試合が始まる少し前、闘技場の観客席の入り口の近くに1人の男がいた。
男はお世辞にもキレイとは言い難いローブを着ていたが、どこか上品さを感じさせる佇まいだった。
男は競技場の方を一瞥し、入り口に入ろうとしていた観客の1人の男に声を掛けた。
「失礼、ここでこれから何が始まるか教えてもらってもいいかい?」
「あんたしらねぇのか?この国の第2王子とFランク冒険者の決闘があるんだってよ!」
「ほぉ~そうなのか。でもこれ勝つ方は決まってる気がするねぇ♫」
男の一言に、観客の男も当たり前のように賛同した。
「だよな?王子が勝つに決まってんのに、相手の方が喧嘩を売ったらしいぜ?バカなやつもいたもんだ…。」
「ほぉ…。まぁ勝つのはその相手の方だと思いますけどねぇ♪」
「はぁ?あんた何言って…」
「それではご機嫌よぅ。良い悪夢を~🎶」
男は観客の肩に手を置いて、入り口に消えていった。観客の男は何を言っているのだろうかと不思議に思っていたが、自分も入り口に入ろうとした。
だが、そのまま眠るように前に倒れ2度と起き上がる事はなかった。
64
お気に入りに追加
5,972
あなたにおすすめの小説

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ~今度から新たに出来た仲間と頑張ります~
黒色の猫
ファンタジー
孤児院出身の僕は10歳になり、教会でスキル授与の儀式を受けた。
僕が授かったスキルは『眠る』という、意味不明なスキルただ1つだけだった。
そんな僕でも、仲間にいれてくれた、幼馴染みたちとパーティーを組み僕たちは、冒険者になった。
それから、5年近くがたった。
5年の間に、覚醒したスキルを使ってパーティーに、貢献したつもりだったのだが、そんな僕に、仲間たちから言い渡されたのは、パーティーからの追放宣言だった。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

チートな親から生まれたのは「規格外」でした
真那月 凜
ファンタジー
転生者でチートな母と、王族として生まれた過去を神によって抹消された父を持つシア。幼い頃よりこの世界では聞かない力を操り、わずか数年とはいえ前世の記憶にも助けられながら、周りのいう「規格外」の道を突き進む。そんなシアが双子の弟妹ルークとシャノンと共に冒険の旅に出て…
これは【ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました】の主人公の子供達が少し大きくなってからのお話ですが、前作を読んでいなくても楽しめる作品にしているつもりです…
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます
時々さかのぼって部分修正することがあります
誤字脱字の報告大歓迎です(かなり多いかと…)
感想としての掲載が不要の場合はその旨記載いただけると助かります

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる