60 / 210
第3章
第56話
しおりを挟む誰かに鼻を突かれているような気がした。ゆっくり目を開けると、イヴがニコッと笑ってレイの鼻をつついていた。
「…おはよう。無事に帰ってこれたようで良かったよ、ご苦労さん。」
魔石を取り出すと、イヴは動かなくなった。イヴを魔法袋にしまい、魔石をポケットに入れた。
ちょうどリゼが俺を起こしに来た。
「レイ様、おはようございます。もうすぐ朝食の準備が整いますので、着替えてお越しください。」
「うん、わかった。あ、1人分追加しておいてもらえる?」
「?わかりました。」
リゼは不思議そうにしていたが、準備のために出ていった。急いで着替えて、紅葉たちを呼びに行く。
寝室に着くと、2人は仲良く手を繋いで寝ていた。
(なんというか…雑誌の表紙とかに載ったら即重版になりそう…。)
俺の気配に紅葉が気づいて、ゆっくり起きて頰を擦り寄せてきた。
「…レイか。朝ごはんの時間か…?」
「うん、ティナさんの分もあるから早く行こう。ティナさん、起きてー。」
「………んん………あ、おはよう。」
「さ、戻ろうか!」
2人を連れて食卓に行くと、父さんと兄さんが驚いていた。
「レイ、また婚約者を増やし…ってティナ副団長か。なんでうちにいるんだ?」
「それは…まぁそのいろいろ。」
「ふーん、まぁいいか。腹減ったから早く食べよう!」
「そうね。レイちゃんもやるわね~」
「母さん、違うから…」
ティナさんはクスクスと笑っていた。
朝食の後自室に戻り、4人でテーブルを囲んだ。
「とりあえずティナさんを家に帰してあげないとね。」
「えーティナもうお別れなのか?妾は寂しいぞ~。」
「こら、駄々をこねるのは良くないです。寂しいのはみんな同じなのですから。」
「ふふっ、またすぐ会えるわよ。」
「本当か?!なら良いぞ!」
「ティナさんはどこに住んでるの?」
「基本は副団長室で仕事してそのまま潰れてる事が多いけど…たまに中心街にある家に帰るわね。今日まで休みだからたまには家に帰ろうかな。」
「そうですか…じゃあ準備をして紅葉と下で待っててもらえますか?少しやりたいことがあるので。ロゼッタはここに残ってね。」
「わかりました。」
「なら妾は昨日買ったお菓子をティナと食べておる!」
「えーもう食べるの?」
そう言って2人は1階に降りていった。ティナさんも紅葉のおかげか笑顔が戻ってきていて、少し安心した。
「それでマスター、やりたい事とは?」
「とりあえず変身してくれるかな?」
「?わかりました。」
ロゼッタは魔法を使って銃の形になった。なんだか久しぶりに見た気がする。
ロゼッタのフロントサイトに、ポケットから出した魔石を起き、白い壁に向かって引き金を引き続けた。
するとロゼッタの銃口からプロジェクタのように、魔石に記憶された映像が壁に映し出された。
『これは…』
「大成功だね。」
『流石です…これは完璧な証拠になりますね。』
そこにはブレイドと会った後、イヴが目にした映像が残っていた。
俺たちと別れた後は、王城へと帰ったようだ。そこですっかり忘れていたが、ティナの話通りものすごい映像が始まった。
(なんて言えばいいんだろう…大乱行スティックシスターズで前世なら伝わるかな…。ステージは…ピーチ城じゃなくてダライアス王城「SMの部屋」って感じかな。なんというか知ってる人のこう言った映像って生々しいな、しかも性癖丸出しなんだが…というかこいつは飯の前に何をしとるんだ。)
ロゼッタからも少し殺気が伝わってきた。魔力を少し増やすと、映像が早送りされ食事会の映像に変わった。ティナの両親と王妃様は楽しんでいるが、ティナはうつむき気味でブレイドは卑しい目で時折ティナを見ていた。
『殺したいですね…コイツ』
「気持ちはわかるけど、一応こんなんでも王子だから。」
食事が終わり、ブレイドが何かをティナの両親と王妃様に提案したようだ。おそらく、適当な嘘でティナと2人の状況を作り出したのだろう。
そしてティナは連れていかれた。
『…マスター。ここでやめてもいいでしょうか?』
「うん、わかったよ。」
同じ女性として、やはり嫌なものなのだろう。魔石を取ると、ロゼッタは元の姿に戻った。
「わがままを言って申し訳ないです。ですが友人がクズに襲われる所を見るのは嫌でしたので。」
「いいよ、俺も別に見たいわけじゃないから。じゃあ行こっか。」
「はい。」
1階でお菓子を食べている2人に声をかけ、4人で王都に向かった。
64
お気に入りに追加
5,960
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜
ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった!
謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。
教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。
勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。
元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。
力を持っていても順応できるかは話が別だった。
クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。
※ご注意※
初投稿、試作、マイペース進行となります。
作品名は今後改題する可能性があります。
世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。
旅に出るまで(序章)がすごく長いです。
他サイトでも同作を投稿しています。
更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

チートな親から生まれたのは「規格外」でした
真那月 凜
ファンタジー
転生者でチートな母と、王族として生まれた過去を神によって抹消された父を持つシア。幼い頃よりこの世界では聞かない力を操り、わずか数年とはいえ前世の記憶にも助けられながら、周りのいう「規格外」の道を突き進む。そんなシアが双子の弟妹ルークとシャノンと共に冒険の旅に出て…
これは【ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました】の主人公の子供達が少し大きくなってからのお話ですが、前作を読んでいなくても楽しめる作品にしているつもりです…
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-
2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます
時々さかのぼって部分修正することがあります
誤字脱字の報告大歓迎です(かなり多いかと…)
感想としての掲載が不要の場合はその旨記載いただけると助かります
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる