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第3章
第55話
しおりを挟むロゼッタと紅葉に散々叱られたせいか、夜ご飯を食べ終えても疲れていた。
「別に撮りたくて撮ったわけじゃないんだけどな…」
そもそもまだ8歳なので、性欲もあまり湧かず前世でおそらく殆どの男子がやっていた様に、スマホでいろいろ調べる必要などないのだ。
その後は、自室で今日買った物の整理などをした。牛乳や卵などの食品は、魔法袋に入れてしまえば腐ることは無いから便利だった。
この世界では一般的な「プルイカ」と言う果物の苗も買ったので、それは庭に植えて水をやり魔法障壁をはった。食べた事がないので、どんな味なのか楽しみだ。
そうこうしているうちに、日付が変わりそうになったのでベットに入って目を閉じた。
瞬間、暗い部屋に白い光が生じ目を開けると誰かが床に座っていた。ティナだと思い、火魔法で部屋に浮く炎を灯して目を疑った。
ティナの着ているドレスは、あちこちが引き裂かれうずくまって震えていた。レイは慌ててティナの元に駆け寄った。
「ティナさん!どうしたんですか、大丈夫?!」
「……レイ君……」
ティナは目に涙を浮かべてていた。
そしてレイに抱きつき、声を殺して泣いた。
「もう大丈夫…。あいつはここには来ないから。」
しばらくして泣き止むと、ティナは慌ててレイから離れた。
「ごめんなさいっ!私ったら…」
「別にいいよ。それより、替えの服持ってくるから…ちょっと待ってね。」
俺は魔法袋から、王都で買ったラバーヌと言う丸いオレンジ色の果物を出した。これはさっき一口食べたらバナナの味にそっくりだった。
急いで魔法で皮をむき、等分した。それをコップに牛乳と蜂蜜と一緒に加えて混ぜれば前世で言うところのバナナシェイクの完成だ。椅子に座っているティナに渡して、替えの服を取りにいった。
着替えを見つけて部屋に帰ろうとすると、誰かに手を掴まれて叫びそになった。振り返るとロゼッタがいた。
「マスター、こんな時間にどうされました?」
「ちょうど良かった!部屋に来て!」
「あっ、ちょっと…!」
部屋についてロゼッタも驚いていた。それと同時に静かな怒りを顔に浮かべていた。
だが、シェイクを飲んで落ち着いた様子を見て一安心したようだった。
「…あの、何があったんですか?嫌だったら言わなくても…」
「…大丈夫よ。もう落ち着いたから。」
ティナの話によると、王城での食事会は特に問題もなく進んでいた。ティナの方は両親と、ブレイドは母親・つまり王妃様が出席した。その後が問題だった。食事会がお開きになり、ブレイドに無理やり部屋に連れて行かれると、ベットには既に4人の女性が裸で寝ていたらしい。髪は乱れ、ぐったりしている様から明らかに行為をした後のようだった。婚約者との食事会の前にだ。
怖くて固まるティナをブレイドはベットに押し倒して口付けを迫ったらしい。そこでティナが抵抗すると、ブレイドは怒ってティナの服を破き無理やり行為に及ぼうとしたそうだ。そのタイミングで魔石が反応し、転移してきたと言うわけだ。
俺とロゼッタは話を聞いてるうちに、怒りがふつふつと込み上げてきた。ロゼッタに至っては殺気さえ出ている。
「クズですね…殺しましょう。」
「ちょっ、殺すって…」
「無理ですよ…。この事を言っても証拠がないし。何より私は婚約者だから、そのような行為をしてもおかしくないと思われて当然です。」
「ですが…」
「レイ君もロゼッタさんもありがとう。それと今日はここに泊めてもらってもいいかしら?今から王都に帰るのは…」
「もちろん、大丈夫ですよ。じゃあ紅葉と一緒に寝ます?」
「出来るならそれでお願いしようかしら。」
「了解です。『異空間の扉』。」
俺の前に穴が空き、3人で中に入った。
「すごい…こんな事もできるのね…。それにここすごい綺麗…。」
「まぁこの寝殿を作ったのは紅葉なんだけどね。」
「全く、ほんと勝手な女豹ですね。」
寝室の部屋に行くと、紅葉はスヤスヤ寝ていた。
「紅葉、起きてー。ティナさんが来たよ。」
「………ぅん?…あれ、なぜティナがここにおるんじゃ…?」
「とりあえず今日は一緒に寝てあげて?」
「………わかった…。ほれ、ティナ早く来るのじゃ、妾は眠い……。」
「じゃ、お言葉に甘えて。みんな、ありがとね。」
「ぉお。ティナの頰はレイと同じくらい柔らかいのぉ…。」
そう言って2人は寄り添って寝たようだ。とりあえず安心して、ロゼッタと部屋に戻った。
「マスター、私達も一緒に…」
「はい、早くリゼの部屋に戻ってね。」
ロゼッタはふくれっ面になり、帰っていった。
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