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第3章
第54話
しおりを挟む屋敷に帰り、リゼにお金を返した。リゼは少し困った顔をしていた。
「そんな…返さなくてもよろしかったのですが。それに私が渡した時より増えていません?」
「き、気のせいじゃない?あと、これ。」
「これは…キレイな髪留めですね。」
リゼは渡された髪留めをまじまじと見つめた。あまり派手な装飾はされておらず、小さな宝石が少しだけ散りばめられている。
「これはどうしたんですか?」
「え?リゼにプレゼント。いつも世話になってるからね。」
「………ぇえ!こ、このような物を私にですか?!」
「うん、気に入らなかったかな…?あんまりそういった類のものを選ぶのは得意じゃないから…。」
「そんな事ないです!とても嬉しいです!勿体無くて飾りたいくらいです!」
「いや、付けては欲しいんだけど…とにかくいつもありがとね。」
「いえ、私は一生をレイ様に捧げる者ですから。」
とりあえずリゼが喜んでくれたようで一安心した。嬉しいのか尻尾がフリフリしている。
部屋に戻って、夜ご飯までまだ時間がありそうなのでベットの上に座り、王都で買った鉄と魔石で出来た水晶玉を出した。この水晶玉はとても澄んだ海のようにキレイだったので、つい衝動買いしてしまった物だ。
手を当てて、造形魔法で水晶玉を薄い板に形を変える。板の縁を、伸ばした鉄の板で囲っていき接着魔法を使うと、前世で見たタブレットの様な物が出来上がった。もちろんアプリなどの機能は一切ないのだが。
鑑定をすると、名前は???になっていたが、ウォータースネークの魔石で出来ていると書いてあった。ウォータースネークはそこまで強い魔物じゃないので、あまり魔法は付与できないだろう。
「どうしようかな…」
悩んだ結果、この前作った『映像記憶魔法』を付与した。これにより、この板を通して見たものならこの板に記憶できる。簡単にいうなら、カメラ機能がついた様な物だ。
細かい調整をしようと思い、仰向けになって板を片手で持ち弄っている時だった。
板越しに目の前に、突如魔法陣が出現しそこから何か降ってきた。
「きゃっ!」「ぐぁっ!」
水晶板は何かに踏み潰され、真ん中にヒビが入りあっけなく割れた。
(…なんだ?柔らかい物が…それにちょっと固いような…)
目を開けると、レイの上に裸の女性がおいかぶさっていた。
「いたぃ…何が…」
女性はレイの上で身を起こすと、あたりを見て次に下にいるレイを見て固まった。レイも目の前の状況に理解できず固まっている。それより、目の前に出現した2つの山脈に目が釘付けになっている。
「…なんでレイ君が…って!」
ティナは転移した事に驚いていたが、自分の姿を把握して顔を真っ赤にさせ口をパクパクさせている。
「…な、なんで…」
「…あ、あの…」
謝ろうとした瞬間、強烈なビンタをされレイは壁に衝突した。
「マスター?!今の音は…!」
「レイ、どうしたんじゃ…」
下で買ったお菓子を食べていたロゼッタと紅葉が、慌ててレイの部屋に来て固まった。
それもそのはず、裸のティナがレイのベットにいるのだ。
「ティ、ティナ…まさか食事会を放ってレイに夜這いを…?」
「2匹目の女豹とは…覚悟してください…。」
「違うの!というかまず服か何かちょうだい!!」
ティナの可愛い叫び声が屋敷に響いた。
目の前で、屋敷にある服を着たティナはまだ顔が少し赤い。
「なるほどの、レイの仕掛けた魔石に付与された転移魔法が発動したと…」
「もしの時に付けていたんだけど…まさか風呂場で転んで発動するとは。」
「マスター、なぜそんな物を?」
「ほら、襲われた時とか抵抗しようとして魔力が高ぶると思ったから。でもまさか転んで転移するとは思わなかったけど。」
「もうその話はいいですから!早く帰らないと間に合わなくなってしまいます!」
「その魔石をつけて行った所ならどこでも転移できるよ。」
「本当?!」
「お風呂場のイメージを頭に浮かべて、魔力を高めれば魔石が反応するから。」
「わかりました!」
そう言ってティナは白い光に包まれて消えた。
「全く、マスターの考えには驚かされてばかりです。」
「あはは…」
水晶板は2つに割れていたが、片方を手に取り魔力を通してみると、いきなりティナが降ってきた時の記憶写真が表示された。つまり、キレイに2つお山がくっきりはっきり写っている。
「うわ…!」
「マスター今度はどうされ…,」
「今度はなんじゃ…」
2人に後ろから見られそうになり、慌てて背中に隠したが、2人の顔は氷の女王の様だった。
「マスター?」 「レイ?」
「えっと…これはその…」
(時すでに『お寿司』ってやつだ…。あぁ、前世のお寿司食べたいなぁ…。)
その後、レイは夜ご飯が出来るまで1時間2人に説教された。
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