異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

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第3章

第52話

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いつも通り神様たちとの会話を終えると、意識が完全に戻った。

「紅葉…神様の娘だったんだね。」

「ん?言っておらんかったか?」

「そ、そんな…!こんなのが神様の娘?」

「こんなのとはなんじゃ!少しは見直したか?」

「別に。あなたに敬意を払おうなんて思いません。」

「まぁまぁ。それよりこれからどうしようか?」


3人でどこに行くか話しながら教会を後にした。入り口を出ると、ティナさんが待っておりこちらに気付いて手を振ってきた。うん、聖女だ。

「こんにちは~!」

「どうかしました?」

「この前の礼をしようと思ってね。今から時間ある?」

「そんな…わざわざいいのに。」

「それでは私の気がすまないからね。ダメかな…?」 

「ダメじゃないです!」

「マスター?!」「レイ?!」

「お2人も一緒にいかがですか?」

「なんて人…。」
「これは恐ろしい奴が増えそうじゃ…。」


2人とも少しむすっとしていたが、聖女の優しさの効果はすぐに現れた。
まず一緒に街を散策し始めて、10分で紅葉が陥落した。
「ティナとやら、あれはなんじゃ!」

「あれは王都でも有名な、ファングボアのサンドイッチね。他にも中に挟むのには種類が沢山あるのよ!」

「ほんとうか~?!」

紅葉はティナさんに胃袋を掴まれた様で、すっかり仲良くなっていた。かたやロゼッタは、むすっとしながら俺の手を握っている。というか力が入りすぎて痛い。

「全く、食で釣られるとはとんだあばずれですね。」

「どこでそんな言葉覚えたんだよ…。」

「マスターは盗らせませんから!」

「え、俺物なの?」

「そ、そういうことじゃなくて…」

「レイ、見てみろ!葉っぱに色んな魔物の肉が巻かれておる!」

そう言って紅葉は俺の口にそれを突っ込んできた。スパイスも効いていてなかなかいける味だった。

「けっこううまいな!」

「そうじゃろ?!これは妾が巻いてきたのじゃ!」

えっへんと胸を張り、俺の方をチラチラ見てきた。
(これはあれか?頑張って一条くんにチョコを作った千棘ちゃんと小咲ちゃんと同じやつか?ちなみに俺は万○花推し。)

「えっと…美味しかったよ、ありがとう紅葉。」

そう言うと紅葉は少し顔を赤らめてそっぽを向いた。

「そ、そうか!ならいいのじゃ!」

そう言って紅葉はティナの所へと戻って行った。

(え、ヤダ。なにあの子いつの間にそんな技を覚えたの?五等○の花嫁の3番目の子みたいにときめいちゃったんですけど!「尊い魔法 Lv.10」でも持ってるのか…。)

「いだだだだだた!」

ロゼッタが冷たい目で俺の手を強く握った。





広場の噴水の所に腰掛け、ロゼッタは3人を眺めていた。
あの後、色んなお店を周っては紅葉は沢山食べていたがロゼッタはなにも買わなかった。物欲が湧かないし、そもそもレイ以外に必要なものなど、この世にない。
向こうでは、王都で人気のお菓子を紅葉に手を握られ一緒に選ぶマスターとティナがいる。さっきはティナと2人っきりで、楽しそうに何かを選んでいるマスターの姿もあった。

(私といるより楽しいのでしょうか…。)

自分でもわかるようにロゼッタはあまり感情を表に出さない。レイは良くロゼッタの顔の変わり様に驚いているが、本人は無自覚だ。そうなると、やはりあの女豹の方がマスターはお気に入りなのかと思ってしまう。

「はぁ…」

自然とため息が漏れた。
そこにティナがこっそりやってきた。今日は部下の前じゃないからか、かなり柔らかい雰囲気で口調も大分違う。もしかしたら、こっちが普段のティナなのかもしれない。

(私もこれくらい愛嬌というものがあればいいのでしょうか…。)

「どうかした?」

「い、いえ。何かありましたか?」

「違うの、レイ君からプレゼントを預かったから…はいこれ!」

ティナの手には小さな青いジュエリーケースの様なものがあった。

「…これをマスターが私に?」

「うん!さっきレイ君に言われたの。こういうのはあげた事がないから選ぶのを手伝って欲しいって、あと渡した事なんてもちろんないからハードル高すぎるって私に。ほら、開けてみて!」

「は、はい…。」


恐る恐る箱を開けると、中にはお洒落な装飾の中に、ロゼッタの瞳と同じ色の宝石が埋め込まれたネックレスが入っていた。

「これを、本当にマスターが私なんかに…?」

「うん、かなり悩んでから決めてたからね。誰かにそんな熱心に探した物を贈ってもらえるなんて羨ましいわね。」

遠くにいるマスターを見ると、偶然目が合いマスターは恥ずかしかったのか、目をそらして紅葉をどこかに引っ張っていった。

(マスター、ありがとうございます。私は幸せ者ですね…。)

「帰ったらレイ君につけてもらってね。」

「はい、そうします。」

そう言いながらロゼッタはふわりと笑った。その笑顔を見て、ティナも微笑んだ。

だが、遠くの方を見て一瞬でティナの顔が凍りついた。ロゼッタは何かと思い視線を追うと、1人の騎士と2人の部下らしき男が歩いてこちらに来ていた。


「ティナじゃないか!こんな所で会うとは奇遇だね!」


そう言って男はティナを鎧を着た体で抱きしめた。
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