異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

文字の大きさ
上 下
51 / 210
第3章

第47話

しおりを挟む

アリアとギルドマスターが2階の吹き抜けからこっそり下の様子を見ると、レイに冒険者パーティーの4人が話しかけていた。
リーダーのジャンは片手剣に盾を使ったEランク冒険者、もう1人の男は弓を持った同じくEランクのドミニク。後ろの女性・エリーはFランクのヒーラー、もう1人のクレアという女性は確かFランクの魔道士だ。

皆ランクから分かる通り、まだ冒険者になってから1年ほどしか経っていないパーティーだ。それこそゴブリンやホワイトラビットなど、小さなも魔物しか狩った事ないのだろう。
そんな自分たちより小さな、まだ冒険者登録さえしてない子供があのミノタウロスを狩ったと言うのだ。文句をつけたくなるのも分からなくもないが、レイの実力を少しでも知っているアリアからすれば、絡んだパーティーの方が哀れに思えた。他の受付嬢が止めようとしているが、ジャンは顔を真っ赤にして話を聞いていない様だし、周りの冒険者達は喧嘩になったらどっちが勝つを懸け始めている。


隣でギルドマスターのジェラール・サーガは嬉しそうにその様子を眺めていた。
「あのギルドマスター、なんでレイ君の事を知ってるんですか?」

「んー?前に1度、彼がここに来た時の喧嘩の後、声をかけたんだよ。あの時の速さと技は5歳にしては見事だったしねぇ。今度はどんな技を見せてくれるのかな?!」

「さ、さぁ…。」
(完全に楽しんでるわねこの人…。)

とりあえず下の様子をジェラールと眺める事にしたアリアだった。




「何が言いたいんでしょうか?」
俺は出来るだけ丁寧な言葉で返すよう努めた。
リーダーっぽい男は後ろの女性2人にやめるよう言われているが、聞く耳を持っていない。もう1人の男も困った顔をしている。3人とは気が合いそうだ。

「だからね、たまたま拾った魔物を自分で狩ったなんて言わない方がいいって事だよ。」

そう言って男は紅葉とロゼッタをちらっと見た。2人とも男に微塵の興味も示さず、むしろギルドの内装に興味津々だった。

(なるほどね…かっこいい所を2人に見せようって事か。どいつもこいつも自分の息子にしか血回ってないのか。ここは出会い系みたいな場所じゃねぇよ。)

俺は苛立ちを抑え、なるべく顔に出さずに対応することにした。

「何を言っているのかわかりませんね。俺は自分で狩った魔物を換えて貰いに来ただけですよ?」

男は、確か後ろの人にジャンと呼ばれていた人は俺が言う事を聞かないからか、ついに怒り口調になった。

「だから!そうやって人を騙しちゃいけないって言ってるんだ!そちらの女性も子供だからって騙されてるんじゃないのか?」

そう言ってジャンは2人を見たが、2人は全く聞く耳を持っておらず、ロゼッタは真顔でジャンを不思議そうに見つめ、紅葉に至ってはギルドの食事メニューを見て目を輝かせていた。

「なら、これを持ち上げてみては?」

俺はジャンの目の前にフェンリルの遺体を魔法袋から出した。周りで見ていた冒険者達は、俺が魔法袋を使うのに驚いていたが、さらにそこから巨大な白狼を出した事に余計驚いていた。


上で見ていたアリアも目を見開いている。ジェラールだけは、より嬉しそうな顔をしていたが。
「あれはっ!神獣のフェンリル?!そんな、本に載ってる伝説の生き物ですよね?!」

「どうやら本物みたいだねぇ。いいよいいよ!もっと僕を楽しませてくれ!」 

「ギルドマスター…」
 



「な、なんだこの大きな狼は…。」

ジャンは目の前の子供が出した魔物に驚いていた。後ろの魔道士っぽい人だけが、その正体を知っているようで震えていた。
 

「フェ、フェンリル…」

その子の言葉にギルド中の冒険者が固まった。
ジャンはハッとなりレイを見た。

「ば、馬鹿な!そんな事有るわけがないだろう!」

「でも今この子…魔法袋を…」

「ハッタリだ!これくらい俺でも…!」

そう言ってジャンは自分の何倍もあるフェンリルを持ち上げようとしたが、どれだけ力を入れてもビクともしなかった。

「ぐっ…!なんて重さだ…!」

「もういいです。」

俺はジャンを押し退け、フェンリルを片手で持ち上げて魔法袋に投げ入れた。

「これでわかってくれましたか?もういいですよね?」
(頼む、めんどくさいからこれでもう引っ込んでくれ。)

だが俺の願いも虚しく、その場を去ろうとした俺の肩をジャンは掴んだ。

「お、俺は認めないぞ!俺と勝負しろ!」

「……はぁ……。」

俺は本日何度目かの深いため息をついた。

(もう「そんなに強く引っ張ったら服が破けちゃうだろうが!駆逐してやるっ!」って言ってうなじを削いでやりたい…。)


「レイー後でこの『レッドウルフのすーてき』とやらを奢ってくれ~。」

紅葉はカウンターで、いつのまにか頼んだ酒をグビグビ飲んで、嬉しそうにメニューを掲げていた。




しおりを挟む
感想 192

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜
ファンタジー
転生者でチートな母と、王族として生まれた過去を神によって抹消された父を持つシア。幼い頃よりこの世界では聞かない力を操り、わずか数年とはいえ前世の記憶にも助けられながら、周りのいう「規格外」の道を突き進む。そんなシアが双子の弟妹ルークとシャノンと共に冒険の旅に出て… これは【ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました】の主人公の子供達が少し大きくなってからのお話ですが、前作を読んでいなくても楽しめる作品にしているつもりです… +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-  2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます  時々さかのぼって部分修正することがあります  誤字脱字の報告大歓迎です(かなり多いかと…)  感想としての掲載が不要の場合はその旨記載いただけると助かります

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...