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第3章
第44話
しおりを挟む屋敷の一階の部屋のソファーに両親と兄と妹が座っていた。兄のリンクスが王都の学校を卒業し、今は父のジークの跡を継ぐために仕事を手伝い勉強中だ。それと入れ違いで姉のエマは王都の学校の寮に入ったそうだ。
そして俺は今家族の前に立っている。理由は後ろにいる、あまり仲が良さそうでない2人を紹介するためだ。
どう話そうかと迷っていると、父さんが話し始めた。
「久しぶりだな。3年でも男はだいぶ変わるもんだな…。」
「レイ、久しぶりだね。この前のお披露目会ぶりかな?」
「それで、後ろの2人は誰なんだ?レイラは知ってるみたいだけど…。」
母さんは嬉しそうに笑うと、意味ありげな視線を俺に向けてきた。
「ふふっ、2人ともレイちゃんの婚約者さんなのよ。ねぇ~ルイちゃん?」
ルイは不思議そうに2人を見ていたが、母さんに話しかけられ嬉しそうに笑った。
一方で父さんと兄さんは驚いた顔をしているが。
「ま、まじか!お前修行という名目で女を作ってくるとは…!その歳にしてやるな!」
「違います!いや、違うかどうかわかんないけど、戦う時のパートナーというか…。」
「なるほど、未来永劫のパートナーと言うわけだね?」
「兄さんまで…。」
「そうじゃ!」「そうです!」
「くぉらぁ!」
俺は深いため息をついた。疲れる、もう何もかもがどうでもよくなってきた。
「はじめまして、お義父様・お義兄様。マスターのパートナーのロゼッタです。以後、よろしくお願いします。」
「妾は紅葉じゃ。これからずっとレイと一緒におるからよろしく!」
「はぁ…全く礼儀もなっていないとは。とんだ女豹が紛れ込んでいるようですね。」
「そっちこそ堅苦しすぎるのじゃ。少しは柔らかくならんか。まぁその貧相な胸じゃ無理だろうな。」
そうしてまた2人が火花を散らしはじめた。もう、いい加減にしてほしい。
そこで俺は前に言われたことを思い出した。
「あ、そういえば8歳になったら国王様への謁見があるとか…。」
「あぁそういえばそうだったな。ちょっと待ってな…再来週末にあるぞ。」
「わかりました。ではそれまで王都に行ったりしてもいいですか?いろいろ見て回ったりしたいので。」
「あぁ、好きにしていいぞ。でもその前に俺と手合わせしてくれ!久しぶりに体を動かしたいからな。」
「それならレイ、僕も頼むよ。まぁ僕は父上と違って魔法がメインなんだけどね。」
「わかりました、空いた時間で是非やりましょう!」
「なら私はルイと応援しなきゃね~。」
「うん!」
こうしてその場はお開きになった。
次の日、俺は屋敷の外の平原でストレッチをしていた。ここは王都の近くの父さんの領土だから、多少激しい戦いをしても特に心配はない。
今日は午前中に少しだけ父さんと手合わせして、終わったら王都の散策の予定だ。
「マスター、私をお使いください。」
「いや、妾に決まっておろう。貴様なんか使ったらレイの実力が充分に出んわ。」
「何か言いましたか女豹。」
「引っ込めといったんじゃ鉄め。」
ストレッチをやめて、相変わらず仲の悪い2人を止める。
「はい、喧嘩しない。父さんは剣をメインに使うから、今日は紅葉の番だよ。」
「よしっ!ほれみろ妾の方がいいらしいぞ?」
「マスター、次は絶対に私ですからね?」
「わかったわかった…。」
「おーい!」
振り返ると父さんが手を振ってこちらに来ていた。
「いやぁ、モテる男はいいな!」
「父さん違います。」
「それよりお前がくれたこの大剣、結構良かったぞ!振りやすいし刃毀れしないし、王都の鍛冶屋でもなかなか造れないだろうな。」
「気に入っていただけたようで良かったです。それでは始めましょうか、紅葉お願い。」
「任せろ!」
そう言うと紅葉は魔法を使い、刀へと変身した。
「…まじかよ。そんなの見たことないぞ?」
「…あはは、あんまり気にしないでください…。」
「まぁいいか、始めよう。」
「マスター、手加減は大事ですよ?」
「あなた頑張って~!ほら、ルイちゃんも。」
「パパ頑張れー!」
2人離れた位置に立つと、審判の兄さんが真ん中に立った。
「制限時間は10分、相手を殺すような技は禁止です。気絶・降参した場合は、そこで一時中断とします。2人共準備はいいですか?」
「あぁ!」「はいっ!」
父さんは大剣を中段に構え、俺は紅葉を両手で握り左に少し倒して構えをとった。
「それでは………始め!」
始めと同時に、俺と父さんは一直線に駆け出した。
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