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第3章
第39話
しおりを挟むまだ日にち的に余裕がありそうなので、ゆったり空の旅を楽しんでいると、下で魔物が馬車を襲っているのが見えた。
近くにはコルータの森という、王都からさほど離れていない、冒険者などが魔石集めによく入る魔物の森がある。
おそらくそこから来たのだろう。住処が近いのか、ざっと100匹近くのゴブリンがおり、ゴブリンライダーやゴブリンロードの姿まで見える。1番遠くには、リーダーらしきゴブリンキングもいた。
馬車を王都の衛兵らしき鎧を着た人達が10人ほど守り応戦していたが、やはり数には敵わないようで何人か既に殺されており血を流し倒れていた。
やばそうだなと思ったその時、1人の衛兵に目が釘付けになった。
そこにはマントのついた鎧を着た明るい紫のロングヘアを持つ女性がいた。
髪色はF○teのライダーに近かったが、後ろ姿はアスナのように凛々しく、劣勢といえど諦める様子はなかった。
俺は無意識に体が動き、後ろ姿アス○似の人に襲いかかろうとしているゴブリンにロゼッタを乱射しながら高速で飛んで行った。ちなみにソード・○ート・オンラインなら俺はアスナが1番好きだ!だがシノンやリーファを推す人の気持ちもわかる。
そして叢雲を魔法袋から抜き出し、アスナ似の人の前に着地し剣を地面に突き刺し、アニオタなら知っているであろうあのセリフを口にした。
「悪いな…ここは通行止めdーぶっ!」
俺がセリフを言いきろうとした瞬間、犬のような魔物に乗ったゴブリンライダーが石を顔面に投げつけてきた。石は俺の顔面で砕け、地面に転がった。普通の冒険者なら顔面血まみれ間違いないだらうが、俺の顔は無傷だった。
「て、てめぇ…!俺が異世界に来て言いたいアニメフレーズランキング4位のセリフを邪魔しやがって!」
だがゴブリン達は子供の獲物が増えたのが嬉しいのか、下衆な笑みを浮かべていた。
俺は状況を理解できてないアス○似の人へ振り向いた。やはりとんでもない美人でスタイルも抜群だった。
「君の名は?」
「…へ?!」
「だから名前!」
ここで、『アスナよ。』とか『名前は…みつは!』とか言ったら100点満点をあげたのだが、残念ながらここは異世界。そんな事などおこりはしなかった。
「えーっと…ティナだけど…。」
「わかった、ここは俺に任せて!」
「あっ、ちょっと君!」
そこに男の衛兵が走ってきた。
「ティナ副団長、負傷者多数!このままではゴブリン達に…って誰ですかあの子供は?」
「さ、さぁ…とにかく馬車に指一本触れさせるわけにはいかないわ!」
2人を放っておいて、叢雲をしまいゴブリン達の魔力を感知する。どうやらゴブリ○スレイヤーの知識の通り、女を狙っているせいかティナさんのいるここらへんに1番密集していた。ゴブリン達は木を加工した棍棒を手にペチペチ叩き、俺をどう殺そうか考えて楽しんでいるようだ。
「ったくそんな武器持ちやがって。わく○くさんが見たら、作り直しって言われるぞ。ゴ○リなんか白目剥きながら『わ○わくさん、今日はなんかつまらない工作だね。』って言うぞ、たぶん。」
そんな俺を無視して1匹のゴブリンは棍棒を俺の頭めがけて振り下ろしてきた。後ろからティナの叫ぶ声が聞こえた。
美人は叫び声も可愛いな。
俺は瞬時によけ、飛行魔法で飛び上がった。
ゴブリン達は俺がいなくなったのに驚き、キョロキョロあたりを見回している。ティナさんだけが、俺が空中にいるのに気付き驚いていた。
「こっちだ、馬鹿ども!」
ゴブリン達は上にいる俺に気付くと、石や棍棒を投げてきたが全く届いていない。
「めんどくさいな…。一気にまとめてやるか。」
俺は指を全て下に向け、詠唱した。
「『絡新婦の夢糸』!!」
俺の全ての指と爪の間から、アラクネの糸がとびだし20匹ほどにくっついた。
糸を手から切り離して、全て右手に握り一本背負いの要領でゴブリン達を少し離れた地面に叩きつけた。
ゴブリン達の骨を砕けたが、まだ魔力の反応は感じるので両手でロゼッタを持ち、叩きつけたゴブリン達にむける。
「悪いな。少しでも生かしておくとゴブリン○レイヤーみたく、女性を襲う可能性があるからな。俺の大好きな剣の乙女さんにはもう悲しんで欲しくないんだ。」
1匹のゴブリンに刻印して詠唱する。
「『 流星群の輝き』」
銃口から輝く光魔法の光線が発射され、ゴブリン達を消し炭にした。
他のゴブリンや衛兵達は、ぽかーんと俺を見つめている。
「まだ80匹近くいるな…。あ、そうだ!」
ロゼッタをそのままの向きで引き金を引く。
「『異空間の扉』」
目の前に先程の異空間の穴が空いた。中を覗くと、紅葉が袖をまくりのこぎりで丸太を懸命にゴリゴリ切っていた。
(いや、何してもいいとは言ったけど本当 何してんの…?)
「おーい!紅葉ー!」
「ん?レイ!見てみろこの見事な丸太を!」
「それよりちょっと手伝って!魔物討伐だよ!」
「なに!主人を手助けせねばな、今行く!」
そう言うと紅葉は小走りで扉にやってきた。そのまま扉をまたいだが、空に飛んでいたので落っこちそうになり慌てて俺の体に抱きついてきた。なにやら柔らかい感触がするが、戦闘中なので意識しないようにし紅葉の腕を掴んだ。
「なっ、何故浮いている時に妾をよんだ!妾は飛べるわけなかろう!」
「ごめん、忘れてた。」
「主人よ大丈夫なのか…。まぁ良い、力を貸してやる。」
そう言うと紅葉の体が紅葉色に光り出し眩しさに目を閉じた。すぐに光はおさまり、目を開けると右手に黒の鞘に収まった紅葉色の柄を持つ刀が握られていた。
『レイよ、早く終わらすのだ。妾は忙しいんじゃ。』
「うわ、念話が使えるんだ。」
『この状態は頭に話しかける事しかできん。それより下で兵士達が苦しそうにしておるぞ。』
下を見るとゴブリン達は俺に攻撃するのを諦め、近くの衛兵達を再び襲っていた。ティナさんも負けじと応戦している。
「よし、じゃあ全部斬りますか。」
『全く、妾の初舞台がこんな雑魚どもとは。』
紅葉は嫌そうにしていたが、とりあえず飛行しながらゴブリン達の首を紅葉ではねていく。叢雲よりだいぶ軽く少し刀身が短いが、かなり使い勝手がいい。
紅葉で斬りまくり、ロゼッタで魔弾を連射していくとゴブリン達はどんどん死体の山となっていき、ついにはゴブリンキングだけとなった。
ゴブリンキングの前に降り立ち、ロゼッタをしまい『霞の構え』をとった。
「あとはお前だけだな…どうする、逃げるなら今のうちだぞ?」
『グッ、グオォォォォオオ!!』
逃げる選択肢を与えたが、プライドが許さないのか剣を振り上げながら突進してきた。
「逃げなかっただけ褒めてやる。だけど…」
俺は足と柄を握る手に力込めた。
『行くぞ、レイ。』
「あぁ。」
「『《紅葉清對・紅葉襲》!!』」
俺と紅葉の声がシンクロし、ゴブリンキングとすれ違った。
お互いの動きが止まり、静寂が訪れたがゴブリンキングが呻き声をあげ腹から血を流し倒れた。
「ふぅ、楽勝だったな!」
『もちろんじゃ!妾とレイがおれば負け知らずじゃ。』
そう言うと、紅葉は元の姿に戻り頰をスリスリし満足したのか異空間へ帰っていった。
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