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第3章
第38話
しおりを挟む目を開けると、アステルの森の中央の山の頂上にいた。
「帰ってきた…」
異空間の砂時計を確認すると、上側にはまだ少し砂が残っていた。ひとまず3年を過ぎていないようで安心した。
よし!と気合を入れて飛行魔法を発動しようとしたら、前にも一度あったステータス画面が強制表示され、前世でよく見た通話画面が出てきた。画面には『絶対神ベラムと愛神サラーキア』と書かれていた。
(サラーキアさん…前世の同人誌みたいに快楽落ちでもさせられたんですか…)
ため息をついてとりあえず電話に出る。
すぐに「やぽー!」と愉快な声がしてきた。
「はぁ…。また何か用ですか?」
「ひどいなぁ、久しぶりなのにぃ。」
ふざけると思ってたが、ベラムは真面目目な声になり話し始めた。
「それより、龍の国ではありがとね。他の世界の事だがら映像しか見れなかったけど、君を送って正解だったよ。僕もガレアスさんと仲良かったから行きたかったんだけど、どうしても外せない仕事があってね…。」
「レイ、サラーキアよ。私からも礼を言うわ。今回ばかりはこの人を責めないであげて?本当に真面目に仕事をしていたから。」
サラーキアさんはちょっと声に熱がこもっているような気がしたが、本当に真面目に働いていたのだろう。それに俺は別にベラムに怒るなど考えてもいなかった。
「いいですよ、2人してやめてください。俺もいい修行ができましたから。」
「そう言ってもらえると助かるよ。」
それで通話は終わりかと思っていたが、ベラムはいつもの調子に戻り話し始めた。
「それよりあの銃はなに?!魔法○の司波達也のシル○ーホーンを模した物かな?!僕もそれ欲しいんだけど!」
「ちょっと!本題を忘れたの?それは今どうでもいい事でしょ?!」
「どうでも良くないよ!生徒会書記の中条あずさちゃんだって夢中になってるくらいだよ?!あの美しいフォルム…僕も1度さわってみたいな…いでっ」
「いいから早く本題を話しなさい!」
「わかったよ…えっとね、2つ用があるんだけど確か…あ、そうそう武神のマルスがレイ君の刀を使う姿が気に入ったらしくて、今いる頂上のあたりに贈り物があるとかないとか…。あともう1つは、あの丸がたくさんあるゲーム?をプロメテウスが気に入ったから、今度礼拝した時に1つ欲しいんだって!」
「なるほど…わかりました。」
「さぁサラーキアちゃん!昨日の続きがまだ終わってないよぉ…?今から明日の朝までオールしちゃおっか!」
「えっ?!ほんと…じゃなかった!何こんな所でいっているのよ!」
「あれれ~何を妄想してるのかなぁ?もしかして僕の事欲しくなっちゃったぁ?」
「そ、そ、そんなわけないでしょ!だいたい私はー」
(俺は一体何を聞かされているんだうか…。一方的に電話をかけられたと思ったら神がいちゃつきだしたぞ。イチャラブが許されるのはアニメの中だけじゃないのか…?)
とりあえずもう俺を放って仲良く言い合っているようなので、通話終了ボタンを押してステータスを閉じた。
とりあえず、武神のマルス様から贈り物があるとか言ってたな…。あたりを見回すが、ごつい岩が転がっているだけだった。
(この岩が武器って事はないよな…。)
とりあえずウロウロ歩いてみると、ある岩の端に何かオレンジ色の物が見えた気がした。
岩の後ろに回ってみると、オレンジのシートの上で黒を基調としオレンジの紅葉のような柄が描かれた着物を着た女性が、優雅にお茶を飲んでいた。
女性は俺の事に気付いているのかいないのか、お茶を飲み1人の世界に浸っている。
「あ、あの…」
「なんだお主は。妾の時間を邪魔するとは、いい度胸じゃ。今すぐ妾の主人に倒させ…しまった、まだ主人に会っておらんな…。」
「あの、もしかして武神のマルス様に送られてきました?」
「む、お主何故それを知っている?まさかお主が…?」
「はい、レイ・トライデント・レストリアです。」
「なんと、お主の様な幼子が妾の主人だったとは…。少し手を貸してくれ。」
そう言うと女性は俺の手を握った。
「………確かに計り知れぬ魔力を持っておるな。よしレイよ、これからよろしく頼むぞ!」
「こ、こちらこそ…。えっとお名前は?」
女性は少し考える素ぶりをしたが、結局首を振った。
「妾は妾じゃ。レイの好きなように呼ぶが良い。」
「そ、そうだな…じゃあ紅葉とかはどう?その着物すごい似合ってるし!」
「紅葉か…。悪くないな、なら妾は今日から紅葉じゃ!」
紅葉は勢いよく立ち上がり、シートを空へ投げ捨てた。
「よろしくなレイ。それにしてもお主、なかなか可愛い顔をしておるな…。」
そう言っていきなり頰をスリスリしてきた。
(ほ、ほわぁ…。なんかすごい落ち着く匂いがするんですけど…。)
「じゃなくて!い、今から俺家に帰えんないと!」
「ほぉ、レイの家か。妾はどうすれば良い?」
「えっと、武器なんだよね?」
「確かになれるが、あれはちとめんどくさいのじゃ。」
「めんどくさいって…。あ、なら『異空間』にいる?そこなら魔法袋と違って容量制限はあるけど、ほぼ無限大だし生きてる人も入れるよ?」
「な、なんじゃそのあ、あなざーわーるど?とは。」
「えっと…空間魔法の応用で異次元に魔力に応じた空間を作れる魔法なんだけど…」
「なんと!レイは空間魔法まで使えるのか!さすが妾の主人だ!」
そう言うとまた嬉しそうに頰を擦り寄せてきた。どうやらこれが癖らしい。
「と、とにかくそこならお茶もできるよ!」
「うむ、気に入った!今すぐ妾をそこに案内してくれ!」
「はいはい。」
俺は魔法袋からロゼッタを取り出して起動し、目の前に銃口を向けた。
「『異空間の扉』」
空気中に人が1人通れるくらいの穴が空いた。中にはまだ未使用なので何もないが、紅葉は嬉しそうにしていた。
「ここに入ってもレイと切り離させることはないんだろう?」
「うん、それと出てきたくなったらこれに魔力を流して。」
「これは?」
俺は紅葉に、ピンク色の綺麗な魔石が埋め込まれた指輪を渡した。
「バルトロスって言う魔物の魔石なんだけど、仲間同士で念話でコミニケーションをとるんだ。その魔石に魔力を流せば、念話で言葉を俺の頭に送れるよ。だから、出たい時とか用がある時はそれに魔力を流して。」
「レイは器用じゃな。わかった、妾に用がある時はいつでも呼んでくれ。」
そう言って紅葉は異空間に姿を消した。
「さて、帰りますか!」
俺は飛行魔法を起動して家路に着いた。
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