異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

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第2章

第36話

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バハルとの戦いの後、五龍の3人と龍騎士団が後始末をしにやってきた。

「レイ君、お疲れ様。城に戻って休んでていいわよ?」

「わかりました…。あの、アイナさん!」

「なに?」

「…その、俺がいたのにおっさんは…」

そう言う俺の肩に、アイナさんはそっと手を乗せた。 

「そんなに気に病まなくていいのよ。主人も最後はあなたと戦えて幸せそうだったし。」

「…でも…」

「レイー!ママー!」

俺たちの所へ、エレナが飛んできた。

「レイ、お疲れ様!ママー、パパがいないけど、どこにいるか知ってる?」

「…っ」

おっさんを探すエレナの前に、アイナさんはしゃがんで頭を撫でた。

「エレナ、パパはねちょっと遠くに旅に出たみたいなの。だから今は会えないの、ごめんね。」

「えーなんだ…せっかく終わった後遊ぼうと思ったのに…。」

「ふふっ、また今度ね。」

そう言いながらアイナさんはエレナの頭を撫でていたが、唇をきつく噛んだのか少し血が出ていた。よく見ると、目元が少し赤かった。
俺はその光景に目を当てられなくなり、その場を後にした。





あれから2日が経った。龍の島は、バハルの封印がなくなり元の大陸が空いたので、みんなそこへと移住した。

俺はあれから、移された城の窓から龍が空を飛び交い街を再建していくのをただ眺めていた。何度かエレナが遊ぼうと誘ってきたが、丁重に断った。
 
そろそろ元の世界に戻ろうかと思っていると、誰かが部屋のドアをノックした。

「レイー入るよー?」

ドアを開けてエレナがとことこと入ってきた。

「エレナ、悪いまだ遊べる感じじゃないんだけど…」

「違うよ、これ!」

そう言うと、エレナは1通の封筒を差し出した。後ろには「ガレアスより」と書いてあり、目を見開いた。

「エレナ、これどこにあったんだ?」

「んーと…確かパパの机に置いてあった!」

「ありがとな。」

エレナの頭を撫でて、手紙を持って部屋を出た。



新しい中庭にある岩に座って封筒を開けると、中には一枚の手紙が入っており、筆で龍の国の文字が書かれていた。

「『解読デクリプション』」

解読魔法を使いおっさんからの手紙をよんだ。





レイへ


これを読んでるって事は全部終わったようじゃな。あまりこういった物は得意じゃないから、手短に終わらすつもりじゃ。


お前と特訓した日々は儂の人生で1番と言っていいくらい楽しいもんじゃった。当たり前じゃ、男が強い奴と戦える、これほどの喜びはないからのぉ。ありがとう。



お前は儂らより強い、遥かに強い。だが心にはまだまだ弱い部分が見える。
そのせいで今後お前が挫ける事があるかもしれん。だがな、それはないよりはむしろあった方がいいもんじゃ。

人も龍も、己の弱さに気付いて初めて強くなれる。それはただ単に力や魔法では手に入らんもんじゃ。



レイ、お前はまだまだ強くなれる。お前はお前の道を迷わず駆け抜けろ。
儂がお前に教えた事、忘れるんじゃないぞ?

達者でな。


       ガレアス




『儂の背中に早く乗れ!』
『はぁ?!』

 
『がはははは!早く行ってこい!』
『はいはい。』


『笑ってる場合じゃねぇよクソジジィ!』
『あ〝ぁ?なんか言ったかのぉ?』


『エレナに手を出すんじゃないわー!』
『だー!誤解だゴ・カ・イ!』


『お前そんなのずるいぞ!』
『そんなの知らないよーだ!』


『どうじゃ、儂の秘技は!』
『…フツウ。』
『なんじゃと?!』


『エレナ、逃げろ!』
『待たんかこらー!』


『……まだまだ、子供じゃな……』
『…負けるなよ……レイ…………』



手紙を持つ手が震えて、頰に冷たいものが流れて文字が滲んだ。ここ最近の事なのに、全てが昔の事のように懐かしい。




「……っ………ふっ………っ………クソジジィがっ!……………またな………」






一息ついて、空を見上げると雲ひとつない青空が広がっていた。
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