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第2章
第31話
しおりを挟む少し離れた場所に、火が消えている所があった。
手はそこに立っている身体へと戻り、手首にくっついた。
そこには青いコートをきた男が立っていて、最初にいた肉塊と同じ魔力を放っていた。もしかしたらそれ以上かもしれない。
男は心臓をまじまじと見つめ、それを口に放り込みぐちゃぐちゃと音を立てて噛み、ゴクリと飲み込んだ。
「……ふむ、現赤龍とはこんなものか…あまり美味とは言えないな。今となっては元赤龍か。」
「バハル!」
バレルが嬉しそうな顔になり、バハルの元へと飛んで行った。
「無事に復活されたのですね!民達の魔力がわずかながら残っていて良かったです!」
バハルは少し笑ってバレルを見たが、その目は少しも笑ってはいなかった。
「少し違うな息子よ。確かに民の魔力を使ったが…それはほんの一部にすぎん。」
「ではどうやって…」
疑問を口にするバレルに向かって、バハルは手を横に払った。
「お前の魔力を我が器へと戻しただけだ、虫ケラよ。お前はもう用済みだ。」
「え?今なんとー」
バレルは言葉を続けようとしたが体に大きな傷ができ、そこから青い血が大量に噴き出した。
「ごはっ…!と、父さん…何を…?」
「お前は我が復活するまでの駒にすぎん。もう必要ない。」
「そ、んな…僕は父さんのた、めに…」
そう呟くとバレルは倒れた。バハルは倒れたバレルを見て鼻で笑うと、かがんでバレルの左胸に手を突っ込んで心臓を取り出した。
『グシュッ!』
「これも少しは足しになるだろうか…。まぁいい、多い事に越した事はないだろう。」
そう言ってバレルの心臓も食べ始めた。
「不味い。こんな味の者が五龍を務めていたとは。父親の身としては申し訳ないな…。」
上で見ていたゼリスは目の前で起きる惨劇に、言葉を失っていた。
「そこで呆けている貴様、我が愚息から少し話に聞いていたが…我より強い魔力を感じるがこの世界の物とは異なるな。何者だ…?」
もはや俺の耳にはバハルの言っている事など入ってこなかった。
「………ロス…」
「ん、なんだ?」
「ーオマエ、コロス」
俺は無意識で詠唱した。
「『制限解除』」
瞬間、俺の体から凄まじい魔力の嵐が吹き荒れた。
制限解除とは、魔力無限のおれの魔力を抑える技だ。普段は10個ほど制限魔法をかけているが、無限の魔力を抑える事なく戦ったりすると、元の世界でもこの世界でも全てを破壊しかねないからだ。
だが、今はそんな事を考える余裕などなかった。
ただ目の前にいるコレを消せばいい、それしか頭になかった。
「ぐっ、なんだこの魔力は…!コレが貴様の本当の力か?!」
「……ダマレ。」
俺はバハルの目の前に転移して、無属性魔法で全身を強化し、更に手に光魔法を宿して鳩尾に拳を叩き込んだ。
バハルの身体がくの字に曲がり、骨の折れる音がした。
「ぐはっ!」
力を抑える事なく拳を振り抜いたため、バハルは後方に吹っ飛んで行った。そのまま吹っ飛んだバレルの下に転移し、背中を思いっきり蹴り上げた。
バハルは器用に空中で体制を整えると、飛んでくる俺に向かって手を向けた。
「くっ…!この我がこんな小僧に…!
『**○○###』!!」
すると巨大な氷塊が降ってきた。
邪魔な氷塊の前に手を向けて、火魔法を詠唱する。
「『炎の精の輝き』」
魔法陣から氷塊に向かって灼熱の火柱が何本も発射され、氷は空中で溶けて無くなっていった。
だが俺が詠唱した間にバレルは俺の真横に迫ってきており、スピードを出して俺の脇腹に氷魔法を纏わせた蹴りを入れた。
俺は防御する気もなく、そのまま吹っ飛んで行った。
大地に激突して、ようやく勢いが収まり立ち上がった。あばらが数本と腸骨にヒビが入ったので、口から唾と血をぺっと吐き出し即座に回復魔法をかけた。
「『聖女の慈愛』」
1秒と経たずに骨のヒビが治ったが、バハルがすぐそこまで迫ってきているのが見えたので手に風魔法を付与する。
「ふっとべ小僧!」
「……………」
俺とバハルの拳がぶつかり合い、大きな衝撃が大地を揺らした。
「ぐっ…貴様化け物かっ!」
「………ケス。」
俺がさらに殺気を放つと、バハルは怖気付いたのかすぐに離れ、近くの水面に飛び込んだ。
「………ニガサナイ。」
俺は手を水面についてすぐに詠唱した。
「『全球凍結』」
詠唱した途端、この世界の海が全て氷となった。俺は飛んで、氷の中のバハルを目で探した。すぐに氷の中で凍るバハルを見つけ、両手を向けて詠唱する。
「……………コレデオワリニスル。」
俺は魔力を高め、詠唱を始めた。
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