異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし

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第1章

第10話

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俺は今、自室のベットでなぜかリゼに膝枕をされている。お披露目会は先程無事に終わった。

結論から言うと、お披露目会とらは死ぬほど疲れるものだった。まだ今までこっそりやってた、魔法や武術の訓練の方が100倍楽だった。

お披露目会には予想より多くの客人がいた。皆それなりの爵位を持っているのはすぐにわかった。
父さんが俺の紹介を終え、軽いお礼の言葉を言ったところまでは良かった。その後が正に地獄だった。何人もの大人が当たり前なのだが、挨拶に来た。
挨拶の内容は大体2つで、1つはマーキングの様なもの。次男だからか、婿に来ないか?的な話が多く、この歳なのでもちろん前世に比べ性欲の「せ」の字もないので、正直愛想笑いに疲れた。
もう1つは、商会などよろしくお願いします的な事。

もうほとんどの人の顔と名前を忘れてしまったが、何人かは簡単に覚えられた。
1人目はレストリア家長男、つまり俺の兄に当たるリンクス兄さん。父さんや姉さんと同じ青髪の美青年で、今は王都にある学校の寮に住んでいるらしい。やはり美青年は心までイケメンで、非の打ち所がなかった。
2人目が、落ち着いた雰囲気の男性で確か名前はアルザス公爵。父さんが冒険者をしていた(今日初めて知った)頃からの仲らしく、2人が特に敬語を使う事なく話しているのが印象的だった。
3人目が見た目がかなり若い男性のシエル子爵。この人は確か父さんの幼馴染で、父さんと同じく元は冒険者だったらしい。
最後がステファニーというオリビア商会の女性会長。この前の洗礼で、技神のプロメテウス様が何か面白いの頼むと言っていたので、もし作れたらこの人の所が良さそうだと思ったので覚えていた。
他の人はお披露目会がお開きになる頃にはほぼ忘れた。


それで、自室に戻って疲れて横になっていた所にリゼがやってきて、「膝枕をさせていただきます。」と強気で言ってきて今に至る。


(いや、ケモミミのクール美人メイドに膝枕されるのは嬉しいんだけど…リゼの膝の肉感もすごいよろしいし…だけどなんで今?)
薄眼を開けてみると、俺の頰を撫でながら優しそうに微笑むリゼと目があった。こんな表情の彼女を見るのは初めてだった。

「レイ様、どうかいたしましたか?」

「いや、その急にどうしたの?」

「どうした、とは何がでしょうか?」

「いや…なんで膝枕?あと頰が少しくすぐったい。」

「理由はございません。」

「えぇ…」


急にリゼの表情が少し暗くなった。

「レイ様はいつ頃、この屋敷を出られるのですか?」

「明後日かな。まぁ3年以内には帰ってくるよ。」

「そうですか…寂しくなりますね…。では1つ昔話をさせていただきますね。」

「うん?」

「昔々ある所に、獣人の村に1人の器量の悪い猫の獣人の娘がいました。娘はあまり感情表現が上手くなく、家族とも上手く付き合えていませんでした。娘の悩みをわかっていたのか、母はいつも娘の頬を撫で耳元で『大丈夫よ』と囁いていました。
ある日、娘は自分の気持ちを行動で示そうとしたのか、少し離れた野原へ花を摘みに行きました。沢山の種類の花を摘んで、家族に配ろうとでもしたのでしょうね。
ですが、家に帰るとそこには変わり果てた姿の父と兄の姿がありました。当時その辺りを根城にしていた盗賊に襲われたらしく、母は奴隷として売られたそうです。」

レイは黙ってリゼの話を聞いた。この話を聞いたのは初めてだった。

「大事な家族を失った娘ですが、泣きたいのに涙は流れませんでした。そこへちょうどある領主の方がやってきて、私を引き取ってくれました。
娘は引き取られた屋敷で、沢山のことを学びました。ですが同僚とも上手く付き合うことは出来ず、失敗ばかりでした。
娘が屋敷に来てから5年ほど経った頃、領主の奥様に1人の綺麗な桜色の髪を持った赤子が産まれました。
赤子は奥様以外のメイドには懐かなかったのですが、なぜか人付き合いの下手な獣人の娘には奥様と同じくらい懐いていました。そのため娘は赤子の子守の担当となったのです。
基本は奥様が赤子の面倒を見られましたが、奥様が仕事などで都合のあわない日は私に子守が回ってきました。」

リゼはついに娘を私と言ってしまったが、気づいていないようでそのまま続けた。

「最初の頃、私にとって子守はとても大変でした。幼い頃に自分の母とすら上手くコミニケーションを取れなかった私にとって、まだ一歳前後のレイ様をあやすというのはとても大変でした。
ある夜の事でした。その日はいつもよりひどいほど仕事がうまく出来ず、レイ様を部屋で寝かしつけている時の事でした。私はあろう事か、レイ様に向かって仕事の愚痴を吐いてしまいました。しまったと思った頃には遅く、赤子とは不思議なもので言葉は理解できなくても感情は伝わってしまったようで、レイ様は少し困ったような顔をしていました。
その事に私がさらに落ち込んでいると、不意にレイ様は私の頰に手を添えてくれました。そしてまだ回りきらない舌を懸命に動かし、大丈夫だよと言ってくれているようでした。
私はその時、生まれて初めて涙を出ました。一度流れた物は止める事が出来ず、今までの分もどんどん溢れていました。
私が今まで人付き合いが下手だったのは、皆は手を差し伸べてくれていたのにそれを無意識のうちに取ろうとしていなかったからだとようやくそこで気付けました。」

一通り話し終えると、リゼは俺の目をまっすぐ見た。

「だから、レイ様。困った事があったらいつでもここに来てくださいね。私はずっとここであなたを想っていますから。」

「うん、ありがとうリゼ」

リゼは最後に頰を撫でると、部屋を出て行った。


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