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8つの首を持つ龍の正体

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「といっても、建築の知識なんてないんだよね…。」

「なら、今度誰かを雇えば良い。それまではここの砂で寝床だけでも造ってみてはどうじゃ?」

「賛成だ。我らがやっても、倒壊寸前の物しかできる未来しか見えんな。」

「そうだよな…じゃあ、早速。」

 俺は地面に手を置いて、魔力を流した。途端に、砂が浮き上がり簡単なベットが出来た。横ではリヴェルガと澪凜も自分の好きな形を造っている。

 
 とりあえず仰向けに寝ると、少し砂が沈んだ。ベットの上の方は密度が小さく、下にいくにつれて高くなっているので体を優しく包むような造りになっている。
 視界には、リヴェルガがいなくなったからか空気の壁越しに海を優雅に泳ぐ魚達がおり、夕日のオレンジ色の光が海全体を照らしている。

「すごい綺麗だな…。」

「わっちもこの景色は好きじゃ。もう何度も見ておるが、飽きる事などありんせん。」

「そうかもね。あれ、リヴェルガー」

「ZZZzzz」

「はや…。」

 リヴェルガは豪快ないびきをかき、すでに眠りの世界へと入っていた。
 俺と澪凜も、海の景色を見ているうちに自然と眠りについていった。

 



『グガァァァァァアアアア!!』

「なに?!」

 翌朝、朝日が海底を照らし始めた頃大きな獣が吠えるような声がした。
 慌てて起き上がろうとしたが、何かが体にのしかかっていてすぐには起きれなかった。見ると、澪凜が寝ぼけて俺を抱き枕にしていた。リヴェルガはベットに足だけ乗っけて転げ落ちている。

「ちょ、澪凜!どいて、なんかヤバイ声が!」

「ん~…?わっちは朝は低血圧でダメなんじゃ…。もう少し寝かせてくれ…。」

 とりあえずベットから降りると、澪凜はそのまま寝落ちした。2人ともあの大きな声を聞いても、起きる気配が全くない。

「なんだったんだ今のは…。」

 とりあえず、空壁を出て海に入った時にその正体はわかった。反対側に、頭が8つに尻尾が8本ある巨大な龍?がいた。

「な、なんじゃこりゃ…あれ、もしかしてー」

『ねぇ。』
『そこの人間君!』
『私達が誰かわからないわけ?』
『……………変な人。』
『こら、一気に話してはダメですわよ?』
『わーなんかあそこだけ水ない!』
『聞こえているのか?』
『ボクが話したい!』

 龍達は一気に話し始め、俺はただ圧倒されるしかなかった。本に書いてあった、8つの頭を持つ龍は確かー

「八岐大蛇なのか…?」

 俺はようやくその名前を思い出した。



『ねぇ、聞いてる?』

「あ、はい!なんでしょうか?」

 1番最初に話した龍が、俺に話しかけてきた。

『あそこにある木、セゾンの木よね?』

 龍の視線の先には、横たえられている数本の木が並んでいる。昨日リヴェルガがもってきたものだ。

「そうですけど…あれが何か?」

『あれ、私達の縄張りにあった木なのよね。』

「え〝っ…。」

 俺は告げられた事実に、驚いて木を見てから地面でいびきをかくリヴェルガを見た。蒼龍とは信じがたく、よだれを垂らして寝ている。

「えっと…ごめんなさい。俺の契約者が勝手に持ってきてしまったようで…。」

『まぁいいわよ。従兄弟だし。』

「へ?」

リヴェルガ、私たちの従兄弟なのよ。昔からあんな感じだから。』

「そうだったんですか…。」

 龍の1匹は呆れているが、もう慣れてますといった感じだ。
 すると今度は2匹目の龍が話し始めた。

『あんた、ここに街を作るってほんと?』

「街?!なんの話?!」

リヴェルガバカの置き手紙に書いてあったのよ。初めての主人との街づくりに必要だって。』

「いや…俺はゆったり暮らせればいいだけなんだけど…。リヴェルガがそんな事を言っていたとは…。」

『なら、特別に私たちが協力してあげる!』

「え?」

『まぁ本当は縄張りを変えたいのと、この子と魔力を共有したいだけなんだけどね!』

『ちょっ、それは言わない約束でしょ!』

 別の龍が会話に入ってきて、2匹めの龍は怒り出した。どの子と話せばいいのかわからない。
 見兼ねたのか、1番最初の龍が俺の方を向いた。

『そう言う事だから、私達もここに住んでいいかしら?いろいろ手伝えると思うし、魔力も共有できるわよ?』

「まぁ別にいいですけど…。」

『それじゃあ契約成立ね、主人君。体に触れてくれるかしら?』

 オロチの体に触れ、お互いの魔力を流した。なんだかいろんな種類の魔力が流れてくる。

『これで契約完了ね。』

 1匹めが嬉しそうに言うと、オロチが光に包まれた。光は空気ドームの海底まで降りていき、8個の光に分裂した。
 光が止むと、そこには8人の女性が立っていた。

「……は?」

「おーい、早く!」

 1人に呼ばれたので、俺も空気の中に入っていった。




「えっと…誰が八岐大蛇なのかな?」

「私達全員で八岐大蛇よ。」

 話によると、どうやらオロチは8人姉妹らしい。

 1番上が、最初に話した長女の一姫かずきさん。お姉さんだからか、妹達をまとめている感じだ。
 2番目が次女の二葉ふたばさん。なんだかいつも元気で、いつみても笑顔を絶やさずにいる。
 3番目が、三女の奈津三なつみさん。木を持ってきたのを怒っているのか、かなりツンツンしている。
 四女はほとんど言葉を発しない、四織しおりさん。ほとんど喋ってくれず、顔も合わせようとしてくれない。
 5人目が五女の、五十鈴いすずさん。上品な人で、貴族のお嬢様感がある。
 六女の六華りっかさんは、二葉さんと同じで、いやそれ以上に元気かもしれない。一姫さんによれば何も考えてないとか。
 七女は瑠七るなといい、クールな感じで女性にもモテそうな人だった。
 そして最後が、咲八香さやかさんだ。なんだかまだ幼い子みたいな感じで、妹がいたらこんな感じなのかなと1人思っていた。

 俺はたった2日で、本に載っているような伝説の人10名と暮すことが決まった。



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