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学園都市編
91話 学園都市へ
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ボスモンスター討伐隊を壊滅に追い込んだ人物の死は、すぐに国民達に伝えられた。
安堵し亡くなった身内に知らせに行くと言う者もいれば、例え敵である人物が死んだ所で亡くなった身内は戻って来ないと嘆く者もいる。
人の反応は様々である。
貧血により意識を失っていたヒビキが目覚めた頃には、既に三日が経過しており街の外へ避難していた国民達は自分達の家に戻り、妖精達は妖精界へ帰還するために人間界を出た後だった。
太陽の光が差し込む室内で、窓枠に手をかけて城の外を眺めるヒビキが目蓋を閉じる。
首の傷は魔力によって回復したものの多くの血を流したため、体力がまだ回復していなかった。
窓枠に掛けた手に頭を乗せて眠りにつこうとしていた所で、ノックする音と共にガチャリと扉が開く音が続く。
「怪我の具合はどう……って、立ったまま眠っちゃ駄目だよ!」
室内に足を踏み入れるのと同時に、窓枠に手をかけて壁にもたれかかり今にも眠りにつこうとしているヒビキの姿を視界に入り込む。
タツウミが慌てて弟の元へ駆け寄った。
「意識が途切れて床に倒れた時に頭を打ち付けたらどうするの? もしかしたら窓から転落するかもしれないでしょう?」
ケープの裾を手に取り勢いよく引き寄せたタツウミの行動により、一歩二歩と脚を引き転びそうになりながらも崩れかけた姿勢を整えたヒビキの意識が瞬く間に覚醒する。
「父上が呼んでいるけど、体調が悪いのなら横になってよう? 父上には体調が悪いことを伝えておくからね」
血が足りていないことによりヒビキの顔色は真っ青だ。
ヒビキの体調を心配したタツウミが機転をきかそうとするけれども、ヒビキは首を左右にふる。
「大丈夫」
このまま部屋に居ては、ずっとベッドの上で一日を過ごす事になる。
体力の回復が完全ではないため、武器の造形どころか防御壁を張る事すら出来ない状況ではあるものの、簡単な素材集めのクエストだったら遂行する事が出来る。
「そう? 何だか無理をしているようにも思えるけど」
ついておいでとヒビキに向かって手招きをしたタツウミが扉を開く。
ヒビキに向かって手招きする際タツウミは、ヒビキの身に付けている服を確認する。
じっくりと頭のてっぺんから足の爪先まで確認してもヒビキの纏っている服は狐耳フード付きの白いケープで間違いない。
普段の表情の乏しい口数の少ないクールなイメージを人に与えるヒビキには似合わない服装も、目蓋を擦り眠たそうに目蓋を閉じて顔を俯かせるヒビキには良く似合う。
珍しい弟の姿を観察していると今に嫌がられるだろうかと考えるタツウミは苦笑する。
ヒビキと共に寝室を抜け出した。
謁見の間ではヒビキの到着を待つ人物が三名。
中央に深々と突き立てられた木の枝に腰かける妖精王と、木の幹に背中をあずけて佇んでいる国王と、二人からは離れた位置におり、壁に背中をあずけて佇んでいる魔王の姿があった。
ガチャリと音を立てて巨大な扉が開かれると、木の幹に背中をあずけて佇んでいた国王が真っ先に反応を示す。
俯かせていた顔を上げると室内に足を踏み入れた息子達を視界に入れた。
王様達を視界にいれるなり、大きく肩を揺らしたタツウミが足を引く。
「妖精王と、魔王と、国王が揃うと威圧感が増すと思わない? ノックをする所か失礼しますも言わずに入ってきちゃったけど、やり直した方がいいかな?」
父に謁見の間へヒビキを連れてくるようにと指示を受けていた。
よくよく考えてみれば分かる事だけれども、父だけであったのなら謁見の間へヒビキを呼び出す事はせずに、直接ヒビキの寝室を訪ねただろう。
しかし、謁見の間へ体調の悪いヒビキが出向かなければならないと言う事は客人がいるのかもしれないと安易に予想する事が出来たはず。
「一度、部屋の外へ出よう。まずはノックをしてから。あ、でもこの大きな扉をノックしたところで中まで音が聞こえるのかな? 聞こえないよね。扉を開いた状態でノックをした方がいいのかな?」
ヒビキの身に着けているケープの裾を引くと身を翻したタツウミが考えを全て口にする。
兄は無口な人だと思っていた。
基本的に同じ建物内にいても兄は自分の部屋に籠っていることが多かったため、顔を合わせる機会が殆んど無かった。
騎士や使用人が話している内容を盗み聞きする事によって、勝手に兄の人物像を体の弱い儚げな人だと予想していた。
しかし、実物は驚くほど良く喋るし慌ただしい人物である事が分かる。
「兄上、落ち着いてください」
ヒビキの言葉を右から左へ聞き流したタツウミが部屋から抜け出そうとした所で、大人しく状況を見守っていた魔王が吹き出した。
笑ってしまっては失礼だと思い何とか堪えようとしたものの、一人で右往左往しているタツウミの姿が、みすぼらしい姿をしたユタカと重なってしまってこらえきれずに腹を抱えて笑いだす。
小刻みに肩を震わせつつ、タツウミに向けていた視線を国王に向ける。
「お前と随分よく似た性格の持ち主だな」
ぽつりと本音を漏らした。
魔王の言葉を耳にして、真っ先に反応を示したのはヒビキだった。
「よく似た性格?」
まるっきり性格の違う父と兄の姿を、交互に眺めたヒビキが首を傾げて問いかける。
全く同じ疑問をタツウミも抱いていた。
「父上と私の性格は正反対ですよ。私は思っている事が、すぐに表情に出てしまいます。考えるよりも先に行動に移してしまって後になって後悔する事も多くあります」
言葉を続けたタツウミに同意するようにしてヒビキが頷いた。
「兄上の性格は父上とは違って明るく本当に良く喋ります」
タツウミに続くようにして考えを述べたヒビキの言い方だと、まるで国王の性格は暗く無口であると言っているようなもの。
ヒビキの言葉に少なからずショックを受けている国王は魔王と互いに顔を合わせる。
表情に表しはしなかったため、魔王も妖精王もヒビキの言葉を訂正することなく聞き流す。
元々ヒビキが兄に対して抱いていたイメージは表情が乏しく暗い性格をした人物だった。
城内を移動している時に、一度だけ大勢の騎士を引き連れて歩く兄を見かけた事があった。
騎士達と言葉を交わすこと無く、ただひたすら足元を見て歩く兄と廊下ですれ違う際に視線が合う事は無く、てっきり兄は人と変わりを持ちたく無い人だと思っていた。
「明るく良く喋る印象を持ってくれたんだね。ヒビキに好印象を与える事が出来て良かったよ。僕はヒビキの性格を今まで話した事も無かったけど勝手に予想して、しっかり者で何事も卒なくこなしてしまう人なんだと思っていたんだよね。表情も乏しくて口数も少ないから話しかけづらい雰囲気を持つ弟だなって思ってた。けれど、まさか立ったまま寝ようとするほど無防備な一面があるとは。今日、部屋を訪ねて驚いたよ」
タツウミはヒビキの性格を勝手に予想して勘違いしていた事を口にする。
城内で見かけたヒビキは話しかけづらい雰囲気を醸し出していた。
てっきり、可愛げのない弟だと思っていた。
しかし、実際は危なっかしい性格をしている事を知る。
「それに、まさか白い狐耳フード付きのケープを身に纏っている弟の姿を見る事になるとは思わなかったよ。可愛い服装は全く似合わないだろうと思っていたけれど、ヒビキが身に付けると狐耳フード付きケープから可愛さが消えるよね」
茶化すようにヒビキの身に着けている狐耳付きのケープに視線を向けたタツウミが笑顔を見せる。
見え方は人それぞれとは言うけれども、狐耳フード付きケープから可愛さが消えるとはどのような意味なのだろうかと真面目な顔をして考えるヒビキは結論が出ずに目蓋を伏せる。
「可愛い服が好きなんだね」
ケープの裾を手に取り持ち上げたタツウミに悪気はない。
「命の恩人が購入してくれた服だから身に付けているんだよ。後々、確認したら高額なものだって事も分かったし。自分の好みとは異なっているよ。せっかく買って貰ったのに着ることなく箱の中に片付けるのも失礼かなと思って着ているんだよ」
慌ててタツウミの考えを訂正したヒビキがケープの裾を握りしめる。ヒビキの視線が自然と足元を向く。
「自分で購入したものではなかったんだね。ごめんね。勘違いをしていたよ」
てっきりヒビキが自分で購入したものだと勘違いをしていたタツウミが苦笑する。
「明らかに俺の趣味とは異なるよねと言いたいけど、兄上と初めて言葉を交わしたのは三日前。俺の性格など知らないか」
勢いよくタツウミに突っ込みを入れようとしたヒビキが我に返る。
タツウミが自分の性格を知るよしもないかと言葉を続けて一人で納得する。
「話した事は無くても、ヒビキの見た目や表情から何となく性格の予想はついていたよ。だから、人は見た目に寄らないものだなと思っていたんだよね」
苦笑するタツウミがヒビキの言葉を訂正する。
「確かに人は見た目に寄らないと兄上を見て思いました」
足元に向けていた視線をタツウミに移す。
ヒビキがタツウミに視線を向けると本音を口にした。
タツウミはヒビキの言葉を耳にして、どういう意味と首を傾げていたけれども、素直に見た目は大人しそうなのになと答えてしまうとタツウミに怒られそうな気がしてヒビキは口ごもる。
つい本音が漏れてしまった事をタツウミに伝えたヒビキは悪い意味では無い事を伝える。
タツウミに返事をした後すぐにヒビキは妖精王に視線を移す。
「一つ質問してもいいですか?」
疑問に思っていた事を問いかけるために妖精王に声をかけた。
「はい、何でしょうか?」
突然ヒビキに声を掛けられたため一瞬、驚いたように目を見開いた妖精王が気を引き締める。
表情に笑みを浮かべると首を傾ける。
ヒビキは真剣な眼差しを妖精王に向けてから、謁見の間中央に突き立てられた巨木に視線を移す。
「どうして謁見の間、中央に巨大な木が突き立てられているのですか?」
妖精王が腰かけている木を指さしてヒビキが真顔で問いかける。
ヒビキの問いかけに対して真っ先に反応を示したのは妖精王ではなくて魔王だった。
ヒビキからの予想外の問いかけに対して巨木を突き立てた張本人、魔王が吹き出した。
妖精王の腰かけている巨木を視界に入れると小刻みに肩を震わせる。
「巨大な木が謁見の間の中央に突き立てられている理由はですね。魔王が妖精は木の枝に腰をあずけて眠りにつく種族と考えていたため、城の庭に佇んでいた木をへし折って城内へ持ち運んだそうですよ。木を立てるために床に穴をあけて木を突き刺したため、この異様な光景が出来上がったそうです」
口元に手を添えて小刻みに肩を震わせる魔王は、過去の自分の行動を思い起こす。
妖精王が魔王を指差して謁見の間の中央に巨大な木が刺さっている理由を説明する。
「それに関しては国王に深く頭を下げて詫びておる。修復の手伝いも約束した」
苦笑する魔王が国王に視線を向ける。
両手を胸の前で合わせて小さく頭を下げた魔王に向かって国王は同意するようにして頷いた。
「ヒビキ君が城に戻る頃には謁見の間は元通りになっているでしょうね」
笑みを浮かべた妖精王の言葉に対して、ヒビキは疑問を抱く。
「城に戻る頃?」
もしかしたら聞き間違えをしたのかもしれないと疑問を抱いたヒビキが首を傾げて問いかける。
「今回ヒビキ君を呼んだのは学園都市に出向き、都市の中央にある学園に通ってもらいたいと伝えるためです。ヒビキ君は現在、怪我の影響で魔力を上手に操作して術を発動する事が出来ない状況である事は承知しています。ヒビキ君の妹さんが学園に通っている事をユタカから聞きました。妹さんは素性を隠しているとは言え、いつ黒幕であるシエル先生に身元が知られるか分からない状況です。急を要するとは言え、妹さんに学園をやめさせてしまうとユキヒラが死んで間が無いので先生に怪しまれる可能性があります。事は一刻を争います」
「今すぐにでも俺は学園都市に向かって、妹に危険が及ぶ前に学園に編入をした方がいいって事?」
妖精王がヒビキの問いかけに対して頷いた。
「そう言うことになりますね。妹さんの身を守るために要注意人物のいる学園にヒビキ君は編入する事になります」
妖精王の言葉を耳にして、ヒビキの頭の中にはツインテールが印象的な人懐っこい笑顔を見せる妹の姿が思い浮かぶ。
銀騎士や使用人と笑顔で話をする妹は、二番目の兄であるヒビキを視界に入れると途端に表情から笑みが消える。
妹に苦手意識を持たれていることはヒビキ自身、把握しているもののヒビキは迷う事なく頷いた。
「妹のためなら何だってするよ」
即答だった。
「ヒビキには、もう一つ頼みたい事があるんだが」
ヒビキの学園の編入が決まった所で、妖精王とヒビキの会話を耳にしていた魔王が口を挟む。
事前にヒビキの父親であるユタカに許可を得た。
後は当人であるヒビキに許可を得るだけだが、果たして首を縦に振ってくれるだろうかと考える魔王がヒビキの目の前に移動する。
ヒビキの顔を覗き込むようにして顔を寄せた魔王が魅力的な笑顔を浮かべる。
「君には暗黒騎士団として、今までアリアスが行っていた役割を果たしてもらおうと思っている。人間界で起こった出来事や情報を少しずつ私たちに教えてほしい。既にユタカには許可を得ているから、後はヒビキの返事次第なのだが魔界と人間界を繋ぐ役割を担って欲しい」
随分と魔王との距離が近い気がする。
「俺で良ければ、魔界と人間界の情報を共有する役割を務めます」
魔王が一歩、前進したことによりヒビキが足を引き後退する。
魔界と人間界の情報を共有する役割を務めると口にしたヒビキは、一方的に魔族へ人間界の情報を流すつもりは無いと事前に考えを口にしておく。
「調査員から魔界の情報を記した手紙が届くはずだから、用紙に人間界で起こった出来事を記して欲しい。ユタカに対する不満や悪口も書き記してくれても構わないからな」
真面目な顔をして佇む国王を横目に見て茶化す魔王は、ユタカの僅かな表情の変化に気がついた。
ヒビキの背後に佇む国王は大きく目を見開き眉を上げると魔王の顔を凝視する。
しかし、ヒビキの視線が国王に向くと素早く表情を引き締めたユタカは真面目な顔をして口を開く。
「敵陣に乗り込むんだ。無茶はするなよ」
我が子の頭に手を乗せて、勢い良く撫で回したユタカの行動によりヒビキの髪は乱れ、前髪が顔を覆い隠す。
「はい」
髪の毛はぼさぼさ。
前髪が目に入りそうで怖い。
てっきり、氷属性を扱う父の手は氷のように冷たいと思っていれば意外と父の手は温かい。
眉尻を下げたヒビキが頷くと、魔王と妖精王が互いに顔を見合わせた。
安堵し亡くなった身内に知らせに行くと言う者もいれば、例え敵である人物が死んだ所で亡くなった身内は戻って来ないと嘆く者もいる。
人の反応は様々である。
貧血により意識を失っていたヒビキが目覚めた頃には、既に三日が経過しており街の外へ避難していた国民達は自分達の家に戻り、妖精達は妖精界へ帰還するために人間界を出た後だった。
太陽の光が差し込む室内で、窓枠に手をかけて城の外を眺めるヒビキが目蓋を閉じる。
首の傷は魔力によって回復したものの多くの血を流したため、体力がまだ回復していなかった。
窓枠に掛けた手に頭を乗せて眠りにつこうとしていた所で、ノックする音と共にガチャリと扉が開く音が続く。
「怪我の具合はどう……って、立ったまま眠っちゃ駄目だよ!」
室内に足を踏み入れるのと同時に、窓枠に手をかけて壁にもたれかかり今にも眠りにつこうとしているヒビキの姿を視界に入り込む。
タツウミが慌てて弟の元へ駆け寄った。
「意識が途切れて床に倒れた時に頭を打ち付けたらどうするの? もしかしたら窓から転落するかもしれないでしょう?」
ケープの裾を手に取り勢いよく引き寄せたタツウミの行動により、一歩二歩と脚を引き転びそうになりながらも崩れかけた姿勢を整えたヒビキの意識が瞬く間に覚醒する。
「父上が呼んでいるけど、体調が悪いのなら横になってよう? 父上には体調が悪いことを伝えておくからね」
血が足りていないことによりヒビキの顔色は真っ青だ。
ヒビキの体調を心配したタツウミが機転をきかそうとするけれども、ヒビキは首を左右にふる。
「大丈夫」
このまま部屋に居ては、ずっとベッドの上で一日を過ごす事になる。
体力の回復が完全ではないため、武器の造形どころか防御壁を張る事すら出来ない状況ではあるものの、簡単な素材集めのクエストだったら遂行する事が出来る。
「そう? 何だか無理をしているようにも思えるけど」
ついておいでとヒビキに向かって手招きをしたタツウミが扉を開く。
ヒビキに向かって手招きする際タツウミは、ヒビキの身に付けている服を確認する。
じっくりと頭のてっぺんから足の爪先まで確認してもヒビキの纏っている服は狐耳フード付きの白いケープで間違いない。
普段の表情の乏しい口数の少ないクールなイメージを人に与えるヒビキには似合わない服装も、目蓋を擦り眠たそうに目蓋を閉じて顔を俯かせるヒビキには良く似合う。
珍しい弟の姿を観察していると今に嫌がられるだろうかと考えるタツウミは苦笑する。
ヒビキと共に寝室を抜け出した。
謁見の間ではヒビキの到着を待つ人物が三名。
中央に深々と突き立てられた木の枝に腰かける妖精王と、木の幹に背中をあずけて佇んでいる国王と、二人からは離れた位置におり、壁に背中をあずけて佇んでいる魔王の姿があった。
ガチャリと音を立てて巨大な扉が開かれると、木の幹に背中をあずけて佇んでいた国王が真っ先に反応を示す。
俯かせていた顔を上げると室内に足を踏み入れた息子達を視界に入れた。
王様達を視界にいれるなり、大きく肩を揺らしたタツウミが足を引く。
「妖精王と、魔王と、国王が揃うと威圧感が増すと思わない? ノックをする所か失礼しますも言わずに入ってきちゃったけど、やり直した方がいいかな?」
父に謁見の間へヒビキを連れてくるようにと指示を受けていた。
よくよく考えてみれば分かる事だけれども、父だけであったのなら謁見の間へヒビキを呼び出す事はせずに、直接ヒビキの寝室を訪ねただろう。
しかし、謁見の間へ体調の悪いヒビキが出向かなければならないと言う事は客人がいるのかもしれないと安易に予想する事が出来たはず。
「一度、部屋の外へ出よう。まずはノックをしてから。あ、でもこの大きな扉をノックしたところで中まで音が聞こえるのかな? 聞こえないよね。扉を開いた状態でノックをした方がいいのかな?」
ヒビキの身に着けているケープの裾を引くと身を翻したタツウミが考えを全て口にする。
兄は無口な人だと思っていた。
基本的に同じ建物内にいても兄は自分の部屋に籠っていることが多かったため、顔を合わせる機会が殆んど無かった。
騎士や使用人が話している内容を盗み聞きする事によって、勝手に兄の人物像を体の弱い儚げな人だと予想していた。
しかし、実物は驚くほど良く喋るし慌ただしい人物である事が分かる。
「兄上、落ち着いてください」
ヒビキの言葉を右から左へ聞き流したタツウミが部屋から抜け出そうとした所で、大人しく状況を見守っていた魔王が吹き出した。
笑ってしまっては失礼だと思い何とか堪えようとしたものの、一人で右往左往しているタツウミの姿が、みすぼらしい姿をしたユタカと重なってしまってこらえきれずに腹を抱えて笑いだす。
小刻みに肩を震わせつつ、タツウミに向けていた視線を国王に向ける。
「お前と随分よく似た性格の持ち主だな」
ぽつりと本音を漏らした。
魔王の言葉を耳にして、真っ先に反応を示したのはヒビキだった。
「よく似た性格?」
まるっきり性格の違う父と兄の姿を、交互に眺めたヒビキが首を傾げて問いかける。
全く同じ疑問をタツウミも抱いていた。
「父上と私の性格は正反対ですよ。私は思っている事が、すぐに表情に出てしまいます。考えるよりも先に行動に移してしまって後になって後悔する事も多くあります」
言葉を続けたタツウミに同意するようにしてヒビキが頷いた。
「兄上の性格は父上とは違って明るく本当に良く喋ります」
タツウミに続くようにして考えを述べたヒビキの言い方だと、まるで国王の性格は暗く無口であると言っているようなもの。
ヒビキの言葉に少なからずショックを受けている国王は魔王と互いに顔を合わせる。
表情に表しはしなかったため、魔王も妖精王もヒビキの言葉を訂正することなく聞き流す。
元々ヒビキが兄に対して抱いていたイメージは表情が乏しく暗い性格をした人物だった。
城内を移動している時に、一度だけ大勢の騎士を引き連れて歩く兄を見かけた事があった。
騎士達と言葉を交わすこと無く、ただひたすら足元を見て歩く兄と廊下ですれ違う際に視線が合う事は無く、てっきり兄は人と変わりを持ちたく無い人だと思っていた。
「明るく良く喋る印象を持ってくれたんだね。ヒビキに好印象を与える事が出来て良かったよ。僕はヒビキの性格を今まで話した事も無かったけど勝手に予想して、しっかり者で何事も卒なくこなしてしまう人なんだと思っていたんだよね。表情も乏しくて口数も少ないから話しかけづらい雰囲気を持つ弟だなって思ってた。けれど、まさか立ったまま寝ようとするほど無防備な一面があるとは。今日、部屋を訪ねて驚いたよ」
タツウミはヒビキの性格を勝手に予想して勘違いしていた事を口にする。
城内で見かけたヒビキは話しかけづらい雰囲気を醸し出していた。
てっきり、可愛げのない弟だと思っていた。
しかし、実際は危なっかしい性格をしている事を知る。
「それに、まさか白い狐耳フード付きのケープを身に纏っている弟の姿を見る事になるとは思わなかったよ。可愛い服装は全く似合わないだろうと思っていたけれど、ヒビキが身に付けると狐耳フード付きケープから可愛さが消えるよね」
茶化すようにヒビキの身に着けている狐耳付きのケープに視線を向けたタツウミが笑顔を見せる。
見え方は人それぞれとは言うけれども、狐耳フード付きケープから可愛さが消えるとはどのような意味なのだろうかと真面目な顔をして考えるヒビキは結論が出ずに目蓋を伏せる。
「可愛い服が好きなんだね」
ケープの裾を手に取り持ち上げたタツウミに悪気はない。
「命の恩人が購入してくれた服だから身に付けているんだよ。後々、確認したら高額なものだって事も分かったし。自分の好みとは異なっているよ。せっかく買って貰ったのに着ることなく箱の中に片付けるのも失礼かなと思って着ているんだよ」
慌ててタツウミの考えを訂正したヒビキがケープの裾を握りしめる。ヒビキの視線が自然と足元を向く。
「自分で購入したものではなかったんだね。ごめんね。勘違いをしていたよ」
てっきりヒビキが自分で購入したものだと勘違いをしていたタツウミが苦笑する。
「明らかに俺の趣味とは異なるよねと言いたいけど、兄上と初めて言葉を交わしたのは三日前。俺の性格など知らないか」
勢いよくタツウミに突っ込みを入れようとしたヒビキが我に返る。
タツウミが自分の性格を知るよしもないかと言葉を続けて一人で納得する。
「話した事は無くても、ヒビキの見た目や表情から何となく性格の予想はついていたよ。だから、人は見た目に寄らないものだなと思っていたんだよね」
苦笑するタツウミがヒビキの言葉を訂正する。
「確かに人は見た目に寄らないと兄上を見て思いました」
足元に向けていた視線をタツウミに移す。
ヒビキがタツウミに視線を向けると本音を口にした。
タツウミはヒビキの言葉を耳にして、どういう意味と首を傾げていたけれども、素直に見た目は大人しそうなのになと答えてしまうとタツウミに怒られそうな気がしてヒビキは口ごもる。
つい本音が漏れてしまった事をタツウミに伝えたヒビキは悪い意味では無い事を伝える。
タツウミに返事をした後すぐにヒビキは妖精王に視線を移す。
「一つ質問してもいいですか?」
疑問に思っていた事を問いかけるために妖精王に声をかけた。
「はい、何でしょうか?」
突然ヒビキに声を掛けられたため一瞬、驚いたように目を見開いた妖精王が気を引き締める。
表情に笑みを浮かべると首を傾ける。
ヒビキは真剣な眼差しを妖精王に向けてから、謁見の間中央に突き立てられた巨木に視線を移す。
「どうして謁見の間、中央に巨大な木が突き立てられているのですか?」
妖精王が腰かけている木を指さしてヒビキが真顔で問いかける。
ヒビキの問いかけに対して真っ先に反応を示したのは妖精王ではなくて魔王だった。
ヒビキからの予想外の問いかけに対して巨木を突き立てた張本人、魔王が吹き出した。
妖精王の腰かけている巨木を視界に入れると小刻みに肩を震わせる。
「巨大な木が謁見の間の中央に突き立てられている理由はですね。魔王が妖精は木の枝に腰をあずけて眠りにつく種族と考えていたため、城の庭に佇んでいた木をへし折って城内へ持ち運んだそうですよ。木を立てるために床に穴をあけて木を突き刺したため、この異様な光景が出来上がったそうです」
口元に手を添えて小刻みに肩を震わせる魔王は、過去の自分の行動を思い起こす。
妖精王が魔王を指差して謁見の間の中央に巨大な木が刺さっている理由を説明する。
「それに関しては国王に深く頭を下げて詫びておる。修復の手伝いも約束した」
苦笑する魔王が国王に視線を向ける。
両手を胸の前で合わせて小さく頭を下げた魔王に向かって国王は同意するようにして頷いた。
「ヒビキ君が城に戻る頃には謁見の間は元通りになっているでしょうね」
笑みを浮かべた妖精王の言葉に対して、ヒビキは疑問を抱く。
「城に戻る頃?」
もしかしたら聞き間違えをしたのかもしれないと疑問を抱いたヒビキが首を傾げて問いかける。
「今回ヒビキ君を呼んだのは学園都市に出向き、都市の中央にある学園に通ってもらいたいと伝えるためです。ヒビキ君は現在、怪我の影響で魔力を上手に操作して術を発動する事が出来ない状況である事は承知しています。ヒビキ君の妹さんが学園に通っている事をユタカから聞きました。妹さんは素性を隠しているとは言え、いつ黒幕であるシエル先生に身元が知られるか分からない状況です。急を要するとは言え、妹さんに学園をやめさせてしまうとユキヒラが死んで間が無いので先生に怪しまれる可能性があります。事は一刻を争います」
「今すぐにでも俺は学園都市に向かって、妹に危険が及ぶ前に学園に編入をした方がいいって事?」
妖精王がヒビキの問いかけに対して頷いた。
「そう言うことになりますね。妹さんの身を守るために要注意人物のいる学園にヒビキ君は編入する事になります」
妖精王の言葉を耳にして、ヒビキの頭の中にはツインテールが印象的な人懐っこい笑顔を見せる妹の姿が思い浮かぶ。
銀騎士や使用人と笑顔で話をする妹は、二番目の兄であるヒビキを視界に入れると途端に表情から笑みが消える。
妹に苦手意識を持たれていることはヒビキ自身、把握しているもののヒビキは迷う事なく頷いた。
「妹のためなら何だってするよ」
即答だった。
「ヒビキには、もう一つ頼みたい事があるんだが」
ヒビキの学園の編入が決まった所で、妖精王とヒビキの会話を耳にしていた魔王が口を挟む。
事前にヒビキの父親であるユタカに許可を得た。
後は当人であるヒビキに許可を得るだけだが、果たして首を縦に振ってくれるだろうかと考える魔王がヒビキの目の前に移動する。
ヒビキの顔を覗き込むようにして顔を寄せた魔王が魅力的な笑顔を浮かべる。
「君には暗黒騎士団として、今までアリアスが行っていた役割を果たしてもらおうと思っている。人間界で起こった出来事や情報を少しずつ私たちに教えてほしい。既にユタカには許可を得ているから、後はヒビキの返事次第なのだが魔界と人間界を繋ぐ役割を担って欲しい」
随分と魔王との距離が近い気がする。
「俺で良ければ、魔界と人間界の情報を共有する役割を務めます」
魔王が一歩、前進したことによりヒビキが足を引き後退する。
魔界と人間界の情報を共有する役割を務めると口にしたヒビキは、一方的に魔族へ人間界の情報を流すつもりは無いと事前に考えを口にしておく。
「調査員から魔界の情報を記した手紙が届くはずだから、用紙に人間界で起こった出来事を記して欲しい。ユタカに対する不満や悪口も書き記してくれても構わないからな」
真面目な顔をして佇む国王を横目に見て茶化す魔王は、ユタカの僅かな表情の変化に気がついた。
ヒビキの背後に佇む国王は大きく目を見開き眉を上げると魔王の顔を凝視する。
しかし、ヒビキの視線が国王に向くと素早く表情を引き締めたユタカは真面目な顔をして口を開く。
「敵陣に乗り込むんだ。無茶はするなよ」
我が子の頭に手を乗せて、勢い良く撫で回したユタカの行動によりヒビキの髪は乱れ、前髪が顔を覆い隠す。
「はい」
髪の毛はぼさぼさ。
前髪が目に入りそうで怖い。
てっきり、氷属性を扱う父の手は氷のように冷たいと思っていれば意外と父の手は温かい。
眉尻を下げたヒビキが頷くと、魔王と妖精王が互いに顔を見合わせた。
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相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

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