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ヒビキの奪還編
58話 妖精王と再会です
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伸ばされた腕の肩から爪の先まで螺旋を描きながら風が移動すると、風は落ち葉を纏い砂埃を巻き上げながら妖精王の元を離れた。
風量を間違えてしまったことに気がついた妖精王が、ユタカに向けていた指先を咄嗟に地面に向けて振り下ろした。
しかし時すでに遅く、土埃を纏ったまま風魔法はユタカの体を包み込む。
砂埃を鼻から吸い込んでしまったユタカが激しく咳き込むと、妖精王は慌てて歩み寄った。
ユタカに向けた指先を動かして、巻き上げてしまった砂埃を少しずつ外へ弾き出す。
不透明だった幕の内側は少しずつ透明になり始めて妖精王がユタカの元に到着した頃には、ユタカの表情を確認することが出来るほど見通しが良くなっていた。
ふわふわと体が浮かぶ感覚に身を包まれて、ユタカは安堵する。
「助けてくれたんだね。有難う」
激しく咳き込んでいたため、声が掠れているようにも思える。
まさか、妖精王が魔術を使って助けてくれるとは思ってもいなかったため、深々と頭を下げたユタカは顔をほころばせていた。
「いえ、あの……」
術の発動を失敗したにも拘わらず、深々と頭を下げた国王の態度を見て妖精王は我が目を疑っていた。
現国王は全く表情を変える事のない、つまらない人物だと聞いていたから話しかけづらい雰囲気を醸し出す青年である事を予想していた。
数年前、人間界に立ち寄った時に国民や銀騎士から厳しい人であると聞いていたため、術の発動を失敗してしまったことに対して注意を受けるのではないかと、身構えていた妖精王は国王の予想外の態度に戸惑いを隠せずにいた。
その時は城まで足を運んではみたものの国王と出会う事は出来ず、一目見ることもなく妖精の森に帰還したため人から聞いた人物像を、そのま思い描いていた。
あれから数年が経過したため国王の性格は、すっかりと変わってしまったのかもしれないと、考えを改めた妖精王が深々と頭を下げる。
「手荒い真似をしてすみません。私はリンスールと申します」
その表情は無表情。
内心では国王を目の前にして緊張をしているにも拘わらず、緊張は表情に現れてはいなかった。
「僕はユタカだよ。宜しくね」
右手を差し出して握手を求めたユタカの手が透明な膜に阻まれる。
妖精王はユタカにとっては得体のしれない人物であるため、表情には表さないもののユタカも極度の緊張から心臓をドキドキと高鳴らせていた。
しかし、見えない膜が邪魔をして、それ以上手を前に突き出す事が出来ないと分かると、ユタカの心臓の鼓動も落ち着きを取り戻す。
リンスールの手を取る事が出来なかったユタカは、伸ばした腕を引こうとした。
リンスールがユタカの手を取るために、風魔法を解除したのはそれから間もなくの事だった。
パシュッと音を立てて透明な膜が消えたためユタカの体が、支えを失って地面に落下する。
尻もちをついた。
お尻から地面に着地をしてしまったユタカは、予想外の状況に思わず肩を震わせて笑う。
声を出して笑っているわけではないけど、両腕で腹部を押さえて笑うユタカは呼吸が乱れてしまっており、何だか息苦しそう。
「いきなり魔法を解除したらそうなりますよね。考えが及ばず、ごめんなさい」
大爆笑するユタカの前で膝をつき、リンスールが深々と頭を下げる。
「咄嗟に着地をしなかった僕が悪いんだよ」
ユタカは乱れた呼吸を整えるため、大きく息を吐き出すとリンスールの肩に手を置き顔を上げるようにと促した。
「君とは一度会って、話をしてみたいと思っていたんだ」
明るい口調でリンスールに声をかけたユタカは、初めて近くで目にする妖精王に興味深々。
「私も一度会って話をしてみたいと思っていました」
本当に小さな声で、ぽつりと呟いたリンスールが改めて手を差し出した。
「あのさ、気になってたんだけど妖精には見る力があるって本当なの?」
ユタカが妖精王と出会うことが出来たら聞こうと思っていた事を問いかける。
伸ばされた手を取り握手をかわす。
「力の強い妖精には見る力がありますね。その他にも私には、その人の持つ属性を見ることが出来ます。私からも質問ですが、人間界で氷属性を持つ人物は一人しかいませんよね?」
口元を手で覆い隠しながらリンスールは、小さな声で問いかける。
ユキヒラに口の動きで話している内容を悟られることがないようにと、気を使った妖精王の真似をして
「凄い、そんな事まで分かっちゃうんだね」
同じように口元を手で覆い隠したユタカが大きく頷いた。
属性を見分けることの出来る妖精王に嘘は通用しない。
妖精の森でフードつきのローブを購入し、身につけてはみたものの、妖精王には身元を知られていた。
妖精王の見る力に興味を示したユタカが続けて質問をしようとしていた所に、アイリスが飛行術をとき地面に着地する。
ユタカに視線を向けると、すぐに視線をそらしてリンスールの背後に移動する。
顔だけを覗かせて、再びユタカに視線を向けたアイリスは人見知りの激しい女の子。
「孫のアイリスです」
アイリスの頭を優しく撫でながら、リンスールは国王にアイリスの紹介を行った。
「僕はユタカだよ! 宜しくね」
頭を下げて自己紹介を行ったユタカの視線がアイリスに向くと、眉尻を下げて頬を赤く染めて顔を俯かせてしまう。
「すみません。初対面の相手の前では、いつも喋る事が出来なくて黙りこんでしまうのです」
アイリスの頭を撫でた妖精王が、茶色い紙を懐から取り出した。
「気にすることはないよ。うちにも似たような子がいるから。同じ建物の中にいても一言も言葉を交わさない日もあるからね」
クスクスと笑いだしたユタカはヒビキを例にあげる。
「それって、第二王子の事ですか? 噂では耳にしていますよ。独特な雰囲気を持つ子供のようですね」
「うん。正直何を考えているんだろうと思う時があるよ。ねぇ、何をしているの?」
懐から取り出した茶色い紙が突然、淡い光に包まれたためユタカが紙を指差して問いかける。
「私の考えを紙に書き記しています」
妖精王の言葉通り、紙には文字が次から次へと浮かび上がる。
眺めていると瞬く間に紙一面を覆いつくすほど細かい文字がズラリと書き込まれた。
紙に書き連ねられている文字は、人間であるユタカには読む事が出来ない。
ぽかーんとした表情を浮かべるユタカの目の前でリンスールがアイリスに紙を手渡す。
「これを届けて欲しいのだけど」
何処へ届けるのか、リンスールはあえて言葉に出して言わなかった。
「分かりました」
手紙を手に取ると目を通したアイリスが、リンスールに頭を下げる。
紙に向かう場所が記されていたようで、丁寧に折り畳み懐にしまうと、最後にユタカに向かって一礼をしたアイリスが勢いよく飛び立った。
「妖精王を味方につけたように思えたのだがね?」
木陰に隠れていたナナヤが、空高く飛び上がったアイリスの背中を目で追いながら小声で呟いた。
ナナヤは隣に腰を下ろしているヒビキに向かって問いかけたにも拘わらず返事はない。
なぜ返事がないのか疑問を抱いたナナヤが、まるで人形のように座り込んでいるヒビキのフードを指先で摘まむとめくり上げた。
「体調が悪いのかね?」
顔面蒼白のまま放心状態に陥っているヒビキは、まるで人形のように身動きをとらない。
ナナヤの問い掛けに対しても、やはり返事はない。
リンスールと再会をした喜びと彼が妖精王である事実を受け入れる形となり戸惑っているヒビキは、それでもリンスールと二人きりになる機会があったら真実を確認してみようと考えていた。
魔王城で封印を受けているはずの妖精王が何故、妖精の森にいるのか。
影武者かそれとも魔王城で封印を受けている人物の方が影武者なのか。
妖精王が人間の事を嫌っている事は真実なのか。
何故パーティに誘ってくれたのか。
戸惑いながらも前向きに考えていたヒビキに追い打ちをかけるようにして、ユキヒラが国王の暗殺を企んでいる事を告げた。
そして、妖精王はユキヒラの誘いを受けてしまう。
愕然とするヒビキの目の前でナナヤが手をふるけど、やはり反応はない。
「少しの間だけ杖を持っていて貰えると助かるのだがね」
ナナヤがヒビキに声をかける。
返事がある事を期待していなかったため、強引に杖をヒビキの目の前に差し出した。
すると両手で巨大な杖を手に取ったヒビキが頷く。
巨大な杖を両手で受けとると想像よりも重かったため、土の上に倒してしまった。
倒れてしまった杖を呆然と眺めていたヒビキが力を込めて引き寄せる。
妖精王が味方についた事により気持ちに少しの余裕が出来る。ナナヤがユタカの落としたベリーダンス衣装を拾いに行くため木陰から抜け出した。
腰を低くして目立たないように目立たないように足を進めると、前屈みになりながらベリーダンス衣装を手に取った。
すぐに身を翻すと前屈みをキープしながら、しっかりと衣装を両腕で抱えこみ中腰のまま歩きだす。
歩きづらい姿勢にもかかわらず、小走りのまま木陰に戻ったナナヤはベリーダンス衣装をヒビキに手渡した。
「ユタカが戻ってきたら渡してほしいのだがね」
代わりに杖を受け取って指示を出す。
小さく頷いたヒビキは、すぐに人形のように固まってしまった。
ユキヒラがボスモンスター討伐隊を襲った理由は、討伐隊隊長から狐面を奪うため。
目的が狐面なら何故、関係のない者達を巻き込んだのか。
奪うのなら隊長を務めていた人物だけを狙えば良かったのに。
それにユキヒラは国王の暗殺を企てている事を漏らした。
確かに父は、話しかけづらい雰囲気を醸し出している人ではあるけど、命を狙われるほどの事を過去にしでかしたのだろうか。
ユキヒラは魔界を壊滅に追い込もうとしている事も漏らした。
魔界でお世話になった人々の姿が脳裏をよぎる。
不安や恐怖に支配されて押しつぶされそうになっているヒビキの姿を、遠くでまじまじと見つめている人物がいた。
風量を間違えてしまったことに気がついた妖精王が、ユタカに向けていた指先を咄嗟に地面に向けて振り下ろした。
しかし時すでに遅く、土埃を纏ったまま風魔法はユタカの体を包み込む。
砂埃を鼻から吸い込んでしまったユタカが激しく咳き込むと、妖精王は慌てて歩み寄った。
ユタカに向けた指先を動かして、巻き上げてしまった砂埃を少しずつ外へ弾き出す。
不透明だった幕の内側は少しずつ透明になり始めて妖精王がユタカの元に到着した頃には、ユタカの表情を確認することが出来るほど見通しが良くなっていた。
ふわふわと体が浮かぶ感覚に身を包まれて、ユタカは安堵する。
「助けてくれたんだね。有難う」
激しく咳き込んでいたため、声が掠れているようにも思える。
まさか、妖精王が魔術を使って助けてくれるとは思ってもいなかったため、深々と頭を下げたユタカは顔をほころばせていた。
「いえ、あの……」
術の発動を失敗したにも拘わらず、深々と頭を下げた国王の態度を見て妖精王は我が目を疑っていた。
現国王は全く表情を変える事のない、つまらない人物だと聞いていたから話しかけづらい雰囲気を醸し出す青年である事を予想していた。
数年前、人間界に立ち寄った時に国民や銀騎士から厳しい人であると聞いていたため、術の発動を失敗してしまったことに対して注意を受けるのではないかと、身構えていた妖精王は国王の予想外の態度に戸惑いを隠せずにいた。
その時は城まで足を運んではみたものの国王と出会う事は出来ず、一目見ることもなく妖精の森に帰還したため人から聞いた人物像を、そのま思い描いていた。
あれから数年が経過したため国王の性格は、すっかりと変わってしまったのかもしれないと、考えを改めた妖精王が深々と頭を下げる。
「手荒い真似をしてすみません。私はリンスールと申します」
その表情は無表情。
内心では国王を目の前にして緊張をしているにも拘わらず、緊張は表情に現れてはいなかった。
「僕はユタカだよ。宜しくね」
右手を差し出して握手を求めたユタカの手が透明な膜に阻まれる。
妖精王はユタカにとっては得体のしれない人物であるため、表情には表さないもののユタカも極度の緊張から心臓をドキドキと高鳴らせていた。
しかし、見えない膜が邪魔をして、それ以上手を前に突き出す事が出来ないと分かると、ユタカの心臓の鼓動も落ち着きを取り戻す。
リンスールの手を取る事が出来なかったユタカは、伸ばした腕を引こうとした。
リンスールがユタカの手を取るために、風魔法を解除したのはそれから間もなくの事だった。
パシュッと音を立てて透明な膜が消えたためユタカの体が、支えを失って地面に落下する。
尻もちをついた。
お尻から地面に着地をしてしまったユタカは、予想外の状況に思わず肩を震わせて笑う。
声を出して笑っているわけではないけど、両腕で腹部を押さえて笑うユタカは呼吸が乱れてしまっており、何だか息苦しそう。
「いきなり魔法を解除したらそうなりますよね。考えが及ばず、ごめんなさい」
大爆笑するユタカの前で膝をつき、リンスールが深々と頭を下げる。
「咄嗟に着地をしなかった僕が悪いんだよ」
ユタカは乱れた呼吸を整えるため、大きく息を吐き出すとリンスールの肩に手を置き顔を上げるようにと促した。
「君とは一度会って、話をしてみたいと思っていたんだ」
明るい口調でリンスールに声をかけたユタカは、初めて近くで目にする妖精王に興味深々。
「私も一度会って話をしてみたいと思っていました」
本当に小さな声で、ぽつりと呟いたリンスールが改めて手を差し出した。
「あのさ、気になってたんだけど妖精には見る力があるって本当なの?」
ユタカが妖精王と出会うことが出来たら聞こうと思っていた事を問いかける。
伸ばされた手を取り握手をかわす。
「力の強い妖精には見る力がありますね。その他にも私には、その人の持つ属性を見ることが出来ます。私からも質問ですが、人間界で氷属性を持つ人物は一人しかいませんよね?」
口元を手で覆い隠しながらリンスールは、小さな声で問いかける。
ユキヒラに口の動きで話している内容を悟られることがないようにと、気を使った妖精王の真似をして
「凄い、そんな事まで分かっちゃうんだね」
同じように口元を手で覆い隠したユタカが大きく頷いた。
属性を見分けることの出来る妖精王に嘘は通用しない。
妖精の森でフードつきのローブを購入し、身につけてはみたものの、妖精王には身元を知られていた。
妖精王の見る力に興味を示したユタカが続けて質問をしようとしていた所に、アイリスが飛行術をとき地面に着地する。
ユタカに視線を向けると、すぐに視線をそらしてリンスールの背後に移動する。
顔だけを覗かせて、再びユタカに視線を向けたアイリスは人見知りの激しい女の子。
「孫のアイリスです」
アイリスの頭を優しく撫でながら、リンスールは国王にアイリスの紹介を行った。
「僕はユタカだよ! 宜しくね」
頭を下げて自己紹介を行ったユタカの視線がアイリスに向くと、眉尻を下げて頬を赤く染めて顔を俯かせてしまう。
「すみません。初対面の相手の前では、いつも喋る事が出来なくて黙りこんでしまうのです」
アイリスの頭を撫でた妖精王が、茶色い紙を懐から取り出した。
「気にすることはないよ。うちにも似たような子がいるから。同じ建物の中にいても一言も言葉を交わさない日もあるからね」
クスクスと笑いだしたユタカはヒビキを例にあげる。
「それって、第二王子の事ですか? 噂では耳にしていますよ。独特な雰囲気を持つ子供のようですね」
「うん。正直何を考えているんだろうと思う時があるよ。ねぇ、何をしているの?」
懐から取り出した茶色い紙が突然、淡い光に包まれたためユタカが紙を指差して問いかける。
「私の考えを紙に書き記しています」
妖精王の言葉通り、紙には文字が次から次へと浮かび上がる。
眺めていると瞬く間に紙一面を覆いつくすほど細かい文字がズラリと書き込まれた。
紙に書き連ねられている文字は、人間であるユタカには読む事が出来ない。
ぽかーんとした表情を浮かべるユタカの目の前でリンスールがアイリスに紙を手渡す。
「これを届けて欲しいのだけど」
何処へ届けるのか、リンスールはあえて言葉に出して言わなかった。
「分かりました」
手紙を手に取ると目を通したアイリスが、リンスールに頭を下げる。
紙に向かう場所が記されていたようで、丁寧に折り畳み懐にしまうと、最後にユタカに向かって一礼をしたアイリスが勢いよく飛び立った。
「妖精王を味方につけたように思えたのだがね?」
木陰に隠れていたナナヤが、空高く飛び上がったアイリスの背中を目で追いながら小声で呟いた。
ナナヤは隣に腰を下ろしているヒビキに向かって問いかけたにも拘わらず返事はない。
なぜ返事がないのか疑問を抱いたナナヤが、まるで人形のように座り込んでいるヒビキのフードを指先で摘まむとめくり上げた。
「体調が悪いのかね?」
顔面蒼白のまま放心状態に陥っているヒビキは、まるで人形のように身動きをとらない。
ナナヤの問い掛けに対しても、やはり返事はない。
リンスールと再会をした喜びと彼が妖精王である事実を受け入れる形となり戸惑っているヒビキは、それでもリンスールと二人きりになる機会があったら真実を確認してみようと考えていた。
魔王城で封印を受けているはずの妖精王が何故、妖精の森にいるのか。
影武者かそれとも魔王城で封印を受けている人物の方が影武者なのか。
妖精王が人間の事を嫌っている事は真実なのか。
何故パーティに誘ってくれたのか。
戸惑いながらも前向きに考えていたヒビキに追い打ちをかけるようにして、ユキヒラが国王の暗殺を企んでいる事を告げた。
そして、妖精王はユキヒラの誘いを受けてしまう。
愕然とするヒビキの目の前でナナヤが手をふるけど、やはり反応はない。
「少しの間だけ杖を持っていて貰えると助かるのだがね」
ナナヤがヒビキに声をかける。
返事がある事を期待していなかったため、強引に杖をヒビキの目の前に差し出した。
すると両手で巨大な杖を手に取ったヒビキが頷く。
巨大な杖を両手で受けとると想像よりも重かったため、土の上に倒してしまった。
倒れてしまった杖を呆然と眺めていたヒビキが力を込めて引き寄せる。
妖精王が味方についた事により気持ちに少しの余裕が出来る。ナナヤがユタカの落としたベリーダンス衣装を拾いに行くため木陰から抜け出した。
腰を低くして目立たないように目立たないように足を進めると、前屈みになりながらベリーダンス衣装を手に取った。
すぐに身を翻すと前屈みをキープしながら、しっかりと衣装を両腕で抱えこみ中腰のまま歩きだす。
歩きづらい姿勢にもかかわらず、小走りのまま木陰に戻ったナナヤはベリーダンス衣装をヒビキに手渡した。
「ユタカが戻ってきたら渡してほしいのだがね」
代わりに杖を受け取って指示を出す。
小さく頷いたヒビキは、すぐに人形のように固まってしまった。
ユキヒラがボスモンスター討伐隊を襲った理由は、討伐隊隊長から狐面を奪うため。
目的が狐面なら何故、関係のない者達を巻き込んだのか。
奪うのなら隊長を務めていた人物だけを狙えば良かったのに。
それにユキヒラは国王の暗殺を企てている事を漏らした。
確かに父は、話しかけづらい雰囲気を醸し出している人ではあるけど、命を狙われるほどの事を過去にしでかしたのだろうか。
ユキヒラは魔界を壊滅に追い込もうとしている事も漏らした。
魔界でお世話になった人々の姿が脳裏をよぎる。
不安や恐怖に支配されて押しつぶされそうになっているヒビキの姿を、遠くでまじまじと見つめている人物がいた。
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