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ヒビキの奪還編
48話 魔王城へ
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聳え立つ岩山の上に建てられた魔王城。
光の粒子が漂よう玄関ホールには、迷いの森から帰還したギフリードと国王が佇んでいた。
「本当に驚いたよ。ヒビキが白い狐耳つきのケープを身に纏ってるんだもん」
満面の笑みを浮かべる国王は少しの時間だけヒビキと再会する事が出来て無事な姿を確認したため喜んでいた。
再びヒビキは危険な状況下にあるものの、ヒビキが敵の術中にはまっていないのであればヒビキの事だから上手いこと立ち回ってくれそうな気がする。
白いケープを纏う姿を見る事も出来た。
フードには狐の耳がついており、ヒビキと会話をする機会があれば絶対に身なりについて突っ込みを入れようと考えている国王の本来の性格は悪戯好きなのだろうか。
ヒビキの事だから、からかったところで何の反応も得られない可能性もあるけれど、もしかしたら照れてる姿を見る事が出来るかもしれない。
ドラゴンと退治していた時に一時ヒビキが照れているような仕草を見せた時があった。
しかし、フードを深々と被っていたヒビキの表情は全く見る事が出来なかった。
ニヤニヤと笑みを浮かべて先の未来を想像する国王は、もしもヒビキと再会する事が出来たら勇気を出して声をかけてみようと心に決めていた。
しかし、国王の表情は長い前髪が顔を覆い隠しているため、国王と向き合うようにして佇むギフリードからは確認する事が出来ない。
口調だけでは国王の心境を把握する事の出来ないギフリードは戸惑っている。
「きっと、ヒビキを助けたランテさんが服を選んでくれたんだね。人間界にいた頃のヒビキは冷めた性格をしていたから、例え命の恩人が選んでくれた服であっても好みじゃなければ着る事は無いと思ったんだけど、魔界に来てからヒビキの性格が良い方向に変わったのかな」
自分の息子が、どのような性格をしているのか見た目や表情や口調を基準にして憶測で判断する。
国王がヒビキに対して持っていた印象を素直に述べる。
ヒビキを冷めた性格と言った国王の言葉に対して、ギフリードは同意する事が出来なかった。
「彼が冷めた態度をとっていたのは、あなたの前だけだったのでは? 実際にランテはヒビキの事を我が子のように思って接していた。それにヒナミもヒビキの事を兄と思ってなついていたようだし。鬼灯とも仲良さそうに話しているのを何度も見かけたが?」
もしかしたら魔界でのヒビキの様子を素直に伝えると国王は傷ついてしまうかもしれない。
しかし、父親から冷めた性格をしていると思われていてはヒビキが可哀そうだと感じたギフリードが素直に思ったことを言葉にする。
やはり、国王はダメージを受けたようで頭を抱える仕草を見せる。
「挨拶をするとヒビキは挨拶を返してくれたよ。僕の問いかけに対しても無視するのではなくて頷いて返してくれたし、確かに同じ建物内にいたけど日常的な会話は無かった気がする。もしかして、僕はヒビキに嫌われてたのかな?」
長い前髪が顔を覆い隠しているため、その表情を確認する事が出来ない。
しかし、国王の声のトーンが下がった為、声から国王が落ち込んでいる事を知ったギフリードが言葉を選ぶ。
「ヒビキと再会をしたら一度、話してみるといい」
「うん。そうする」
肩を落とした国王にギフリードが考えを口にする。
「ひと段落したら聞こうと思っていたのだが。魔界に足を踏み入れた理由は息子を人間界へ連れ戻すためか?」
迷いの森で出会った国王に対して、いくつか聞きたい事があった。
国王の封印が解けた事は分かった。
国王が魔界へ息子に会うために足を踏み入れた事も分かった。
ヒビキは暗黒騎士団に半ば強引だったとはいえ勧誘したため、現在ヒビキは暗黒騎士団の一員である。
「銀騎士からヒビキが近々ドラゴンと戦う事になるだろうと聞いたから心配になって様子を見に来たんだよ。ヒビキの命が危険に晒されたら盾になろうと思ってね」
国王から返ってきた言葉を耳にしてギフリードの表情が曇る。
怪訝そうに国王を見ると人差し指を国王の額に押し付ける。
先の鋭く長い爪は綺麗なピンク色。
尖った爪の先端が国王の額を傷つけて傷口から真っ赤な血が流れだす。
「痛い」
額を傷つけられた国王が、ぽつりと呟いた。
「あなたの身に何かあればヒビキが悲しむだろう」
ギフリードは故意に国王の額を傷つけたため、謝る事をしない。
ヒビキが暗黒騎士団の一員になった事を国王に告げようとしていたはずなのに国王の考え方を改善するためにギフリードは怒りを露にする。
「僕の身に何か良からぬ事が起こったらヒビキは心配してくれるかな、もしかしたら悲しんでくれるかもしれないなと淡い期待を抱いているんだけど、もしも僕が命を落とした時は指先だけ一瞬でもいいから触れて欲しいかも。親子なのにヒビキは挨拶を交わす時もだけど10メートルは距離が開いてるからさ死して尚、距離を取られるのは寂しいなってね」
「ヒビキと話してみようと決意した矢先に何を言うか。国王が封印を受けた事を知り、ヒビキは随分と取り乱していたと報告を受けたことを伝えておく」
自分で言った言葉に対して傷ついている国王にギフリードが以前、鬼灯から聞いた情報を与える。
情報を信じられないのか、それとも単に驚いているだけなのか。
あんぐりと口を開いた国王がパクパクと口を動かしている。
「そう言えば、銀騎士達の姿が見えないが。彼らは一体、何処に?」
国王が落ち着きを取り戻す事を待たずにギフリードが玄関ホールを見渡してから問いかけた。
本来ならば国王の警護をしているはずの銀騎士達の姿が見当たらない。
国王直属の騎士が国王を一人で魔界に送るとも思えない。
「えっとね、僕が闇のゲートを通って魔界に移動する際に銀騎士が追って来る事が出来ないようにゲートを囲むようにして結界を張ってきたんだ。僕の我儘に彼らを巻き込む事も無いと思ってね」
言葉を続けた国王に対してギフリードは頭を抱えこむ。つまり、国王は護衛をつけずに魔界へ来た事になる。
「魔界にいる間に貴方の身に何かあっては人間界と魔界が対立する事になりかねない」
尚も言葉を続けるギフリードは国王の身の安全を心配するのと同時に、魔界が戦いに巻き込まれることを恐れていた。
魔王が不在の今、人間界と衝突して争いをすることになれば魔王の封印が解けた時に魔王を悲しませることになる。
んにゃと首を傾けて二人の間に佇む猫耳が印象的な女性ユキノスはギフリードと目の前に佇む、みすぼらしい恰好をした青年を交互に見つめていた。
二人は知り合いなのかなと問いかけるために口を、そっと開いた。
しかし、珍しくギフリードの機嫌が思わしくない事に気づき慌てて口を噤む。
ギフリードの顔を見上げてピーンと立てた耳を、ぺたんと伏せる。
「騎士達は極寒の雪山を通り、地下洞窟を抜けて迷いの森を突破し、魔界にやってくるだろう。魔界の住人は人が魔界にいると分かれば襲いに行くだろう」
ギフリードの言葉を聞き国王が頬に両手を当て、あんぐりと口を開く。
国王は自分の考えが至らなかった事を理解する。
魔界へ通じるゲートを封じれば騎士達は後を追って来ることが出来ないだろうと考えていた。
「やって来るとしたら騎馬隊か」
眉を寄せて呟いた国王にギフリードが歩み寄る。
「私だったら、どのような状況にあっても主を追いかける」
騎士であるギフリードの言葉に国王の表情が強ばった。
もしも、ギフリードの言葉通り、銀騎士が人間界を出て魔界に向かっていたら。
魔界へ人間が足を踏み入れたことにより争いが起きたら。
顔を俯かせて考え始めた国王が癖なのか。
顔に掛かっていた前髪を無意識のうちに耳にかけようとした。
前髪を耳にかけてしまったら国王の素顔が露になる。
どこで誰が見ているかも分からない状況の中で素顔を晒させるわけにはいかない。
前髪に手をかけた国王に気づきギフリードが慌てて声をかける。
「人間界へは調査員を向かわせる。銀騎士に国王の無事を伝える事にしよう。だから、前髪を耳にかけようとするな。あなたの場合、顔で身元がバレるだろうから」
ギフリードの申し出に国王が俯かせていた顔を上げた。
その表情は明るく嬉しそうに笑みを浮かべている。
顔を勢いよく上げた事により、薄い水色の瞳が露わになった。
それは一瞬にして前髪が下りる事により隠れてしまったけど。
国王は何度も上下に首を動かしている。
「暗黒騎士団から一人、人間界へ向かわせて国王の無事を伝えるように指示を出す。アリアスには天使の子供の面倒を見るようにと伝えてある。ユキノスは魔王城に残ってもらう。ヒビキは敵につかまっているし。私はヒビキの居場所を突き止めなければならない。暗黒騎士団は5人しかいないから、あなたに護衛をつける事が出来ない。だから、あなたは自分の身は自分で守って欲しいのだが」
ギフリードは折れた剣を背負う国王に向けて普段、愛用して使っている巨大な剣を手に取り、国王の目の前に差し出した。
刃先を下に向けて柄を国王の視線の高さまで持ち上げる。
「え?」
ギフリードの思いもよらない行動に国王は呆然と目の前に佇む人物を眺めている。
国王は剣を受け取ろうとはせず瞬きを繰り返す。
まさか自分の武器を差し出してくる何て思ってもいなかったため考えが追いつかない。
「武器がないと不便だろう?」
戸惑っている国王にギフリードは真顔で問いかける。
強引に国王の胸元に巨大な剣の柄、持ち手の部分を突き付けたギフリードから国王が惚けたまま剣を両手で受け取ると、ずっしりとした重みが両手にのしかかる。
予想以上に重かった剣は国王を心底驚かせた。
剣を支えきれずに危うく前のめりとなって倒れる所だった。
「重い」
何とか足のつま先に力を込めて倒れる事を防いだ国王がギフリードに助けを求める。
「剣に魔力を流し込むと軽くなると思うが」
「それを先に言って」
つま先立ちのまま中腰になり剣を支えている国王の姿勢にユキノスが、ニャハハハハと声を押し殺す事なく笑っている。
「魔力って、僕の魔力は闇属性ではないよ。属性が違うけど大丈夫なの? 魔力を込めた途端に弾かれる何てことはないよね?」
国王の問いかけに対してギフリードは即答する事が出来なかった。
「多分、大丈夫。試したことがないからもしかしたら弾かれるかもしれないが」
何とも曖昧な返事をする。
ここまで自信なさげなギフリードの姿を、ユキノスが珍しそうに眺めている。
国王は覚悟を決めた。
目蓋を閉じると剣に氷属性の魔力を込める。
「お、軽い」
剣に魔力を込めると片手で持ち上げる事が出来る程軽くなった。
漆黒の鎧を身に纏っているギフリードはギルドに立ち寄り壊れた防具を買い換えた。
長い髪の毛を鎧の中にしまって元の姿に戻っている。
その背中には、いつも背負っている武器はなく手ぶらのまま。
「僕が剣を手にすると君が手ぶらになっちゃうよ」
国王がギフリードの目の前に剣を差し出した。
予備の武器があるならまだしも、剣を借りたことで手ぶらになったギフリードが怪我を負うようなことになるのは嫌だからと、国王は首を左右にふり申し出を断ろうとした。
「しかし、あなたの身に何かあってからでは遅いので」
両手を胸元の高さまで上げて一歩足を引いたギフリードは剣を受け取ろうとはしない。
国王が一歩足を踏み出すと同じ歩幅だけ足を引く。
「いざとなれば武器を出現させて戦うよ」
「身元を周囲に晒すことになるが?」
ギフリードに剣を返すために、国王もヒビキと同じように武器を出現させる能力があることを口にする。
武器を持たないわけでは無い事を伝えると、すぐにギフリードから返事があった。
「う、うん。それでも使うよ」
国王は渋々と危機的状況に陥ったら剣を使うことをギフリードに約束をする。
「目が泳いでる」
正直なとこほ剣を出現させて戦うよと言い切る自信はなかった。
身に危険が及んだらギフリードや鬼灯の後ろに隠れようと考えていた国王の考えが表情に現れていたようで、すぐにギフリードが一歩足を引く。
「グダグダにゃ」
ギフリードと国王のやり取りを眺めていたユキノスが、ぽつりと呟いた。
互いに譲り合っていては収拾がつかない。
剣はギフリードが使ってよと言葉を続けようとした国王が大きく足を踏み出して前進する。
ギフリードの元へ少しずつ迫っていた国王の背後に、それは何の前触れもなく現れた。
国王と向き合っているギフリードの視線の先。
国王の背後の空間が突然ぐにゃりと歪む。
床に巨大な魔法陣が現れた。
青く光る魔法陣を囲むようにして青色に光輝く粒子が漂っている。
目映い光に包まれた玄関ホールの中央で、魔力の切れた状態であるギフリードをかばうような形でユキノスが足を踏み出してギフリードの前に出る。
背後に人の気配を感じた国王の行動は早かった。
ギフリードの剣を左手に持ちかえると気配に向けて振り上げる。
右足を軸に大きな剣を右下から左上へ持ち上げた国王が、ヒビキの体を右下から左上へ真っ二つにしようとした。
青い光を放つ魔方陣の上に突如、姿をあらわした人物は青い炎に体を包み、ふわふわと宙に浮かんでいた。
その頭からはクリーム色の狐の耳が生えている。
人間界で封印を受けている国王の元へと念じて、転移魔法を使ったはずのに気づいたら魔王城にいた。
なぜ人間界に向かったのに魔王城に移動をしてしまったのか。
戸惑っているヒビキの目の前で、みすぼらしい格好をした人物が剣を振り上げる。
気づいたときには剣が目の前に迫っていて、咄嗟に目蓋を閉じたヒビキが衝撃を覚悟する。
国王が背後に現れた人物を直視。
背後に現れた人物の姿を確認した国王が咄嗟に剣の向きを変えたため、剣の側面がヒビキの体に当たり跳ね飛ばす。
剣を打ち付けられたヒビキの体が魔王を囲んでいる柱に激突する。柱はバチッと音を立ててヒビキの体を弾いた。
そして、重力に従って床の上に落下したヒビキの元へギフリードと国王が駆け寄ると床に伏せていたヒビキが、ゆっくりと床に両手をつく。
上半身を起こして、その場に腰を下ろしたヒビキに目線を合わせるようにしてギフリードが右膝を付いて、その場にしゃがみこむ。
「平気か?」
真剣な面持ちを浮かべるギフリードの問いかけに対してヒビキは苦笑する。
「うん」
汗だくになっているヒビキが小さく頷いた。
「ごめんね。急に背後に現れるから驚いちゃって攻撃しちゃった」
そして、ヒビキの目の前に両ひざをつき座り込んだ国王が両ひざに両手を乗せて軽くお辞儀をする。
ヒビキは首を左右に動かした。
「大丈夫。剣の向きを変えてくれたからダメージは殆ど無かったよ。えっと……」
チラッと目の前の青年からギフリードに視線を向けたヒビキが、困ったように眉尻を下げる。
誰だろうと疑問を抱いて首を傾げたヒビキに視線を向けられて、ギフリードは目を泳がせる。
下手な事は言えないためギフリードの視線が国王に向く。
「あ、僕はユタカっていいます。宜しくね」
ギフリードの視線を受けて、にこりと笑みを浮かべた国王が自己紹介を行った。
しかし、その表情は長い前髪が顔を覆い隠しているためヒビキからは確認することが出来ない。
目の前に座り込んでいる、みすぼらしい恰好をした青年の名前を聞き明らかにヒビキの表情が強張った。
その表情の変化を青年は見逃さなかった。
「ごめんね。何か気に障る事を言ったかな?」
明らかに青年の声のトーンが下がる。
前髪が顔を覆い隠しているため表情からは判断できないけれど、肩を落として顔を俯かせてしまった青年が落ち込んでしまった事に気づきヒビキは慌てて首を左右に振る。
「君の名前を聞いて、ある人物を思い出してしまっただけだから不安にさせて、ごめん」
「ある人?」
目の前の青年は、ある人に対して興味を示したようで小首をかしげる。
「俺の父親も同じユタカと言う名前なんだ」
「顔が強ばってるよ。もしかして、顔が強ばっちゃうほど父親の事が嫌いなのかな?」
青年は何とも複雑な心境に苛まれていた。
まさか、父上ではなくてヒビキにユタカと名前で呼ばれる日が来るとは思ってもいなかった。
嬉しいような照れくさいような。
気になるのはヒビキが父親を思い浮かべてから表情が明らかに強ばっており、声のトーンが下がったため父親の事が嫌いなのだろうかと抱いた疑問を問いかける。
前のめりになり顔を近づけた青年の問いかけに対してヒビキは困ったように眉尻を下げる。
「嫌いではないよ。表情が余り変わらないから何を考えているのか分からなくて苦手なだけで」
問いかけに対して素直な気持ちを返すと、青年は唇を半開きにしたまま固まってしまう。
何か青年の気に障る事を言ってしまったのだろうかと不安を抱いたヒビキがギフリードに視線を向ける。
何故だろう、ギフリードは手の甲を口元に添えて顔を背けている。
ヒビキからは表情は見えていないけれど、小刻みに肩を震わせている事から笑っている事が予想できる。
「え、俺なんか変な事を言った?」
笑うギフリードに声をかけるけど返事はない。
ユキノスに視線を向けるけど、ユキノスは事情を知らないため素直に知らないと目の前で手を左右に振る。
手の側面がシュッシュッと音が立つほど早く動く。
目の前で固まってしまった青年に視線を向けると、肩を落として顔を俯かせていた。
「彼の事は気にしなくていい。それよりも、その恰好は一体どうしたんだ?」
困っているヒビキにギフリードが声をかける。
普段身に着けている白いケープとは違って、踊り子のような衣服を身に着けていた。
青い炎がヒビキの体を包み込んでいる。
「あ、僕も思った。その姿は何なの?」
落ち込んでいたはずの青年は随分と気持ちの切り替えが早い。
じろじろとヒビキの全身を見つめる青年が許可を取る事も無く指先でヒビキの身に付けている服に触れる。
「わぁ! 凄く手触りがいいよぉ。これは、売り物じゃないよね。一体どこで手に入れたの?」
ぐいぐいとヒビキの服を引っ張りだした青年の声のトーンが上がる。
「ちょ、え? 何で触れる事が出来るのか疑問なんだけど。炎を纏った服に素手で触ると火傷をするとか普通さ熱さを感じるものじゃないかな」
激しく変わった青年の態度にヒビキが驚き声を上げる。
そして、同時に浮かんだ疑問に対して何故と混乱するヒビキは戸惑いと共に考えている事を全て口にする。
「何故かな、触れることが出来ちゃったね。僕、自身とても驚いているよ。ねぇ、青色の炎を纏っているという事は君の術によって今の姿は作られているんじゃい?」
はしゃぐ青年の表情は前髪が顔を覆い隠しているため見る事が出来ない。
しかし声のトーンや口調から、青年の気持ちが高ぶっている事が分かる。
「この狐の耳って作り物?」
好奇心旺盛、目を輝かせる青年に狐の耳を加減すること無く鷲掴みにされてヒビキが声を上げる。
「痛い痛い! 俺も今初めて知ったけど耳は本物みたい。俺も正直、この姿が自分の能力によるものなのか、それとも狐面の加護によるものなのか分からないんだ」
青年の手を払い逃れようとしたヒビキは床に両手を付き、その場に立ち上がる。
好奇心旺盛な青年の前から逃げる様にしてユキノスの元へ移動をすると、女性の背後に隠れてしまう。
「突然、ヒビキが空間を歪めて何もない所から現れたように見えたのだが、転移魔法を使えるのか?」
ヒビキに逃げられてプクッと頬を膨らませている国王の視線はヒビキに向けられたまま。
膨れっ面を浮かべて見せたところで長い前髪が顔を覆い隠しているため、その表情は殆んど確認することが出来ない。
ころころと表情を変える国王を横目に見て顔の表情筋を良く使うよなと呑気に観察するギフリードがヒビキに抱いていた疑問を問いかけた。
問いかけに対してユキノスの背後から、そっと顔を覗かせたヒビキが頷く。
「そう。片道だけだけど空間を超えて移動をする事が出来るよ。さっきまで妖精の森の最下層に居たんだ」
「ほう。妖精の森から魔王城は飛行術を使っても6日はかかるが?」
「うん。ユキヒラが転移魔法を使えるようで、魔界にいたはずなのに気がついたら妖精達が屯する街路にいた」
キョロキョロと辺りを見渡すヒビキが、ここが魔王城である事を確認する。
玄関ホールには魔王と妖精王を封印している柱があった。
「父の元へ転移するように念じたはずなんだけど……」
ぽつりと独り言を漏らしたヒビキが戸惑いを隠せずにいると、ぷんすかと怒っていたはずの国王の表情が瞬く間に変化する。
相変わらず長い前髪が顔を覆い隠しているためヒビキやギフリードからは国王の表情を確認することは出来ないけれども、満面の笑みを浮かべて声のトーンも上げた国王が前のめりになる。
「どうしてお父さんの元へ飛ぼうと思ったの?」
ヒビキの独り言を耳にした国王が良い返事を期待して問いかけた。
「え、何でだろう。光の柱に封印を受けている父を、どうやったら助け出すことが出来るのだろうかと考えていたからかな」
ヒビキからの返事を耳にした国王は照れくささから両頬に両手を添えて恥ずかしそうにする。
国王は息子であるヒビキとは緊張して上手い事、話をすることが出来ないと言っていたけれども顔を隠してさえいれば、ヒビキと気軽に話をすることが出来るようだ。
演じているだけなのかもしれないけれど、今の国王は人懐っこい性格と好奇心旺盛なところがあって多分、一人でも数時間は話しをしていられるのではないのかなと思う。
ヒビキも相手が父親であったとしても、目の前の人物が父親だと認識する事が出来なければ気軽に声をかけることが出来るらしい。
「今後はどうするつもりでいるの? 人間界に戻る?」
「暫くは人間界に戻るつもりはないよ。ユキヒラを野放しにしておくと、また犠牲者が増えてしまうから。人間界に戻るとしてもユキヒラを捕らえてからにするよ」
国王の問いかけに対してヒビキが項垂れる。
国王がギフリードに向かって口を、ぱくぱくと動かした。
誰これ?
口だけを動かして首を傾けた国王の問いかけに対してぎフリードは苦笑する。
誰ってヒビキだが?
ギフリードも口を動かして返事をする。
国王とギフリードが、お互いの口の動きを見ながら会話を行っている頃。
妖精の森を囲んだ結界。
その結界内にある気配を追って一つ一つの魔力の質を確認していたユキヒラが大きな、ため息を吐き出した。
いきなり姿を消した少年を探すために最下層を抜け出して草木の生い茂る森の中へ移動した。
木々が周囲を囲み閉鎖的な景色が広がっている。
木の幹に体を預けて術を発動していたユキヒラが転移魔法により突然、姿を消したヒビキを見つけることが出来ずに音を上げる。
「あの少年と思われる気配が妖精の森の中に無いんだけどぉ」
莫大な魔力を使って少年を探そうとしたユキヒラの行動は見事に空振りをする。
詮索魔法は結界内にいる人物の気配をたどって、その魔力の量や質を一つ一つ確認する事により目的の人物の位置を特定する物。
「何かあの子を呼び寄せる術は無いの?」
妖精の森の中には既に少年の気配はない事を伝えたユキヒラに、少年を諦めきれないサヤが問いかける。
「あるにはあるけど、疲れるんだよねぇ」
本音を漏らしたユキヒラにサヤがあんぐりと口を開いた後、すぐにプクッと頬を膨らます。
「出来るのなら呼び寄せてよ。あの子の術を見たいって言ったのはユキヒラじゃん。魔力を使いきったあの子が何処かでモンスターに襲われているかもしれないでしょ?」
ヒビキの心配をするサヤは早く術を使って呼び寄せてよと急かす。
「そうだねぇ。彼は君と違って文句を言わずに僕の指示に従ってくれるからねぇ。今、手放すのは惜しいねぇ」
渋々と体を動かしたユキヒラの足取りは重く、掲げた右手もやる気がないのかピーンとは伸ばされずに曲がっている。
そんな状態にも拘わらず、ユキヒラが呪文を唱えると足元に巨大な魔法陣が現れた。
赤く輝く魔法陣はユキヒラの体を照らし出す。
ユキヒラを中心にして、ゆっくりと回転する魔法陣から小さな赤い光が出現しユキヒラの周りを漂っていた。
初めて目にする魔法陣を眺めて、ドキドキと胸を高鳴らせているサヤはヒビキの登場を大人しく待っている。
魔法陣が目映い光を放ち巨大化する。
ゆっくりと回転する魔法陣の術式は高度な物。
膨大な量の魔力を消費する。
普段は魔力切れなど起こすことの無いユキヒラが自分の限界を知ることになる。
魔力が枯渇する一歩手前でユキヒラが魔力の放出を止めて体力を温存しようと試みた。
「あ、駄目かも」
ぽつりと呟いたユキヒラの声に力はない。
目蓋を閉じたユキヒラの体が後方に大きく傾くと、抵抗する事もなく頽れるようにして倒れこむ。
「え、え?」
ピクリとも動かないユキヒラを見てサヤはパニック状態に陥った。
頬を両手で抑えて周囲を見渡している。
魔法陣の中に入ってもいいのか、分からずに足踏みだけをするサヤは今にも泣きだしそうな表情を浮かべている。
「術が失敗したの? ちょっと、ねぇ!」
声をかけてみるけどユキヒラは反応を示さない。
戸惑うサヤの心配をよそに、ユキヒラの発動した術は見事にヒビキの体を捉えていた。
ヒビキの足元に真っ赤な魔法陣が出現した。
体を中心に少しずつ回転をする魔法陣からは赤い小さな光が出現する。
光はヒビキの手や足を囲むようにして漂っていた。
「拘束魔法? 動けないんだけど」
魔法陣の上に佇んでいるヒビキは体を動かす事が出来ずにいた。
体重が何倍にも増えたような感覚に陥っている。
ヒビキの足元を照らす魔法陣が、ひと際目映い光を放つとヒビキがいる空間がぐにゃりと歪む。
「ちょ、待って。待って!」
歪んだ空間を見て、すぐに国王が赤い魔法陣が召喚魔法を行うものだと気づく。
召喚魔法に対して待ってと叫びながら、ヒビキの元へ走り出した国王が巨大な剣を振りかぶるとギフリードに向けて投げつけた。
「剣は返す。君に怪我をしてほしくないからね。心配してくれて有り難う!」
大声を上げて剣を投げ返した国王は、すぐにギフリードから視線を外したため気づいてはいない。
剣はギフリードに刃先を向け勢いよく向かっていた。
ギフリードが右足を引き、飛んできた剣を避けると、剣がすぐ横を通り過ぎたため、柄を手に取り握りしめる。
ギフリードが剣を受け取っている間に国王はヒビキの足元に現れた魔法陣の中に飛び込んだ。
ヒビキの体を突き飛ばして魔法陣の外へ押し出そうと試みる。
しかし、ヒビキの体を突き飛ばす前に空間が大きく歪むと、国王を巻き込んでヒビキの体と共に中に引きこんでしまう。
赤い魔法陣がパンッと弾けるようにして消えると、小さな赤い光だけが残される。
小さな赤い光は、ふよふよと広い空間を漂っていた。
玄関ホール内にはヒビキや国王の姿は無く、二人が召喚魔法により何処か遠くへ飛ばされた事を理解したギフリードが頭を抱えこむ。
大きなため息を吐き出した。
光の粒子が漂よう玄関ホールには、迷いの森から帰還したギフリードと国王が佇んでいた。
「本当に驚いたよ。ヒビキが白い狐耳つきのケープを身に纏ってるんだもん」
満面の笑みを浮かべる国王は少しの時間だけヒビキと再会する事が出来て無事な姿を確認したため喜んでいた。
再びヒビキは危険な状況下にあるものの、ヒビキが敵の術中にはまっていないのであればヒビキの事だから上手いこと立ち回ってくれそうな気がする。
白いケープを纏う姿を見る事も出来た。
フードには狐の耳がついており、ヒビキと会話をする機会があれば絶対に身なりについて突っ込みを入れようと考えている国王の本来の性格は悪戯好きなのだろうか。
ヒビキの事だから、からかったところで何の反応も得られない可能性もあるけれど、もしかしたら照れてる姿を見る事が出来るかもしれない。
ドラゴンと退治していた時に一時ヒビキが照れているような仕草を見せた時があった。
しかし、フードを深々と被っていたヒビキの表情は全く見る事が出来なかった。
ニヤニヤと笑みを浮かべて先の未来を想像する国王は、もしもヒビキと再会する事が出来たら勇気を出して声をかけてみようと心に決めていた。
しかし、国王の表情は長い前髪が顔を覆い隠しているため、国王と向き合うようにして佇むギフリードからは確認する事が出来ない。
口調だけでは国王の心境を把握する事の出来ないギフリードは戸惑っている。
「きっと、ヒビキを助けたランテさんが服を選んでくれたんだね。人間界にいた頃のヒビキは冷めた性格をしていたから、例え命の恩人が選んでくれた服であっても好みじゃなければ着る事は無いと思ったんだけど、魔界に来てからヒビキの性格が良い方向に変わったのかな」
自分の息子が、どのような性格をしているのか見た目や表情や口調を基準にして憶測で判断する。
国王がヒビキに対して持っていた印象を素直に述べる。
ヒビキを冷めた性格と言った国王の言葉に対して、ギフリードは同意する事が出来なかった。
「彼が冷めた態度をとっていたのは、あなたの前だけだったのでは? 実際にランテはヒビキの事を我が子のように思って接していた。それにヒナミもヒビキの事を兄と思ってなついていたようだし。鬼灯とも仲良さそうに話しているのを何度も見かけたが?」
もしかしたら魔界でのヒビキの様子を素直に伝えると国王は傷ついてしまうかもしれない。
しかし、父親から冷めた性格をしていると思われていてはヒビキが可哀そうだと感じたギフリードが素直に思ったことを言葉にする。
やはり、国王はダメージを受けたようで頭を抱える仕草を見せる。
「挨拶をするとヒビキは挨拶を返してくれたよ。僕の問いかけに対しても無視するのではなくて頷いて返してくれたし、確かに同じ建物内にいたけど日常的な会話は無かった気がする。もしかして、僕はヒビキに嫌われてたのかな?」
長い前髪が顔を覆い隠しているため、その表情を確認する事が出来ない。
しかし、国王の声のトーンが下がった為、声から国王が落ち込んでいる事を知ったギフリードが言葉を選ぶ。
「ヒビキと再会をしたら一度、話してみるといい」
「うん。そうする」
肩を落とした国王にギフリードが考えを口にする。
「ひと段落したら聞こうと思っていたのだが。魔界に足を踏み入れた理由は息子を人間界へ連れ戻すためか?」
迷いの森で出会った国王に対して、いくつか聞きたい事があった。
国王の封印が解けた事は分かった。
国王が魔界へ息子に会うために足を踏み入れた事も分かった。
ヒビキは暗黒騎士団に半ば強引だったとはいえ勧誘したため、現在ヒビキは暗黒騎士団の一員である。
「銀騎士からヒビキが近々ドラゴンと戦う事になるだろうと聞いたから心配になって様子を見に来たんだよ。ヒビキの命が危険に晒されたら盾になろうと思ってね」
国王から返ってきた言葉を耳にしてギフリードの表情が曇る。
怪訝そうに国王を見ると人差し指を国王の額に押し付ける。
先の鋭く長い爪は綺麗なピンク色。
尖った爪の先端が国王の額を傷つけて傷口から真っ赤な血が流れだす。
「痛い」
額を傷つけられた国王が、ぽつりと呟いた。
「あなたの身に何かあればヒビキが悲しむだろう」
ギフリードは故意に国王の額を傷つけたため、謝る事をしない。
ヒビキが暗黒騎士団の一員になった事を国王に告げようとしていたはずなのに国王の考え方を改善するためにギフリードは怒りを露にする。
「僕の身に何か良からぬ事が起こったらヒビキは心配してくれるかな、もしかしたら悲しんでくれるかもしれないなと淡い期待を抱いているんだけど、もしも僕が命を落とした時は指先だけ一瞬でもいいから触れて欲しいかも。親子なのにヒビキは挨拶を交わす時もだけど10メートルは距離が開いてるからさ死して尚、距離を取られるのは寂しいなってね」
「ヒビキと話してみようと決意した矢先に何を言うか。国王が封印を受けた事を知り、ヒビキは随分と取り乱していたと報告を受けたことを伝えておく」
自分で言った言葉に対して傷ついている国王にギフリードが以前、鬼灯から聞いた情報を与える。
情報を信じられないのか、それとも単に驚いているだけなのか。
あんぐりと口を開いた国王がパクパクと口を動かしている。
「そう言えば、銀騎士達の姿が見えないが。彼らは一体、何処に?」
国王が落ち着きを取り戻す事を待たずにギフリードが玄関ホールを見渡してから問いかけた。
本来ならば国王の警護をしているはずの銀騎士達の姿が見当たらない。
国王直属の騎士が国王を一人で魔界に送るとも思えない。
「えっとね、僕が闇のゲートを通って魔界に移動する際に銀騎士が追って来る事が出来ないようにゲートを囲むようにして結界を張ってきたんだ。僕の我儘に彼らを巻き込む事も無いと思ってね」
言葉を続けた国王に対してギフリードは頭を抱えこむ。つまり、国王は護衛をつけずに魔界へ来た事になる。
「魔界にいる間に貴方の身に何かあっては人間界と魔界が対立する事になりかねない」
尚も言葉を続けるギフリードは国王の身の安全を心配するのと同時に、魔界が戦いに巻き込まれることを恐れていた。
魔王が不在の今、人間界と衝突して争いをすることになれば魔王の封印が解けた時に魔王を悲しませることになる。
んにゃと首を傾けて二人の間に佇む猫耳が印象的な女性ユキノスはギフリードと目の前に佇む、みすぼらしい恰好をした青年を交互に見つめていた。
二人は知り合いなのかなと問いかけるために口を、そっと開いた。
しかし、珍しくギフリードの機嫌が思わしくない事に気づき慌てて口を噤む。
ギフリードの顔を見上げてピーンと立てた耳を、ぺたんと伏せる。
「騎士達は極寒の雪山を通り、地下洞窟を抜けて迷いの森を突破し、魔界にやってくるだろう。魔界の住人は人が魔界にいると分かれば襲いに行くだろう」
ギフリードの言葉を聞き国王が頬に両手を当て、あんぐりと口を開く。
国王は自分の考えが至らなかった事を理解する。
魔界へ通じるゲートを封じれば騎士達は後を追って来ることが出来ないだろうと考えていた。
「やって来るとしたら騎馬隊か」
眉を寄せて呟いた国王にギフリードが歩み寄る。
「私だったら、どのような状況にあっても主を追いかける」
騎士であるギフリードの言葉に国王の表情が強ばった。
もしも、ギフリードの言葉通り、銀騎士が人間界を出て魔界に向かっていたら。
魔界へ人間が足を踏み入れたことにより争いが起きたら。
顔を俯かせて考え始めた国王が癖なのか。
顔に掛かっていた前髪を無意識のうちに耳にかけようとした。
前髪を耳にかけてしまったら国王の素顔が露になる。
どこで誰が見ているかも分からない状況の中で素顔を晒させるわけにはいかない。
前髪に手をかけた国王に気づきギフリードが慌てて声をかける。
「人間界へは調査員を向かわせる。銀騎士に国王の無事を伝える事にしよう。だから、前髪を耳にかけようとするな。あなたの場合、顔で身元がバレるだろうから」
ギフリードの申し出に国王が俯かせていた顔を上げた。
その表情は明るく嬉しそうに笑みを浮かべている。
顔を勢いよく上げた事により、薄い水色の瞳が露わになった。
それは一瞬にして前髪が下りる事により隠れてしまったけど。
国王は何度も上下に首を動かしている。
「暗黒騎士団から一人、人間界へ向かわせて国王の無事を伝えるように指示を出す。アリアスには天使の子供の面倒を見るようにと伝えてある。ユキノスは魔王城に残ってもらう。ヒビキは敵につかまっているし。私はヒビキの居場所を突き止めなければならない。暗黒騎士団は5人しかいないから、あなたに護衛をつける事が出来ない。だから、あなたは自分の身は自分で守って欲しいのだが」
ギフリードは折れた剣を背負う国王に向けて普段、愛用して使っている巨大な剣を手に取り、国王の目の前に差し出した。
刃先を下に向けて柄を国王の視線の高さまで持ち上げる。
「え?」
ギフリードの思いもよらない行動に国王は呆然と目の前に佇む人物を眺めている。
国王は剣を受け取ろうとはせず瞬きを繰り返す。
まさか自分の武器を差し出してくる何て思ってもいなかったため考えが追いつかない。
「武器がないと不便だろう?」
戸惑っている国王にギフリードは真顔で問いかける。
強引に国王の胸元に巨大な剣の柄、持ち手の部分を突き付けたギフリードから国王が惚けたまま剣を両手で受け取ると、ずっしりとした重みが両手にのしかかる。
予想以上に重かった剣は国王を心底驚かせた。
剣を支えきれずに危うく前のめりとなって倒れる所だった。
「重い」
何とか足のつま先に力を込めて倒れる事を防いだ国王がギフリードに助けを求める。
「剣に魔力を流し込むと軽くなると思うが」
「それを先に言って」
つま先立ちのまま中腰になり剣を支えている国王の姿勢にユキノスが、ニャハハハハと声を押し殺す事なく笑っている。
「魔力って、僕の魔力は闇属性ではないよ。属性が違うけど大丈夫なの? 魔力を込めた途端に弾かれる何てことはないよね?」
国王の問いかけに対してギフリードは即答する事が出来なかった。
「多分、大丈夫。試したことがないからもしかしたら弾かれるかもしれないが」
何とも曖昧な返事をする。
ここまで自信なさげなギフリードの姿を、ユキノスが珍しそうに眺めている。
国王は覚悟を決めた。
目蓋を閉じると剣に氷属性の魔力を込める。
「お、軽い」
剣に魔力を込めると片手で持ち上げる事が出来る程軽くなった。
漆黒の鎧を身に纏っているギフリードはギルドに立ち寄り壊れた防具を買い換えた。
長い髪の毛を鎧の中にしまって元の姿に戻っている。
その背中には、いつも背負っている武器はなく手ぶらのまま。
「僕が剣を手にすると君が手ぶらになっちゃうよ」
国王がギフリードの目の前に剣を差し出した。
予備の武器があるならまだしも、剣を借りたことで手ぶらになったギフリードが怪我を負うようなことになるのは嫌だからと、国王は首を左右にふり申し出を断ろうとした。
「しかし、あなたの身に何かあってからでは遅いので」
両手を胸元の高さまで上げて一歩足を引いたギフリードは剣を受け取ろうとはしない。
国王が一歩足を踏み出すと同じ歩幅だけ足を引く。
「いざとなれば武器を出現させて戦うよ」
「身元を周囲に晒すことになるが?」
ギフリードに剣を返すために、国王もヒビキと同じように武器を出現させる能力があることを口にする。
武器を持たないわけでは無い事を伝えると、すぐにギフリードから返事があった。
「う、うん。それでも使うよ」
国王は渋々と危機的状況に陥ったら剣を使うことをギフリードに約束をする。
「目が泳いでる」
正直なとこほ剣を出現させて戦うよと言い切る自信はなかった。
身に危険が及んだらギフリードや鬼灯の後ろに隠れようと考えていた国王の考えが表情に現れていたようで、すぐにギフリードが一歩足を引く。
「グダグダにゃ」
ギフリードと国王のやり取りを眺めていたユキノスが、ぽつりと呟いた。
互いに譲り合っていては収拾がつかない。
剣はギフリードが使ってよと言葉を続けようとした国王が大きく足を踏み出して前進する。
ギフリードの元へ少しずつ迫っていた国王の背後に、それは何の前触れもなく現れた。
国王と向き合っているギフリードの視線の先。
国王の背後の空間が突然ぐにゃりと歪む。
床に巨大な魔法陣が現れた。
青く光る魔法陣を囲むようにして青色に光輝く粒子が漂っている。
目映い光に包まれた玄関ホールの中央で、魔力の切れた状態であるギフリードをかばうような形でユキノスが足を踏み出してギフリードの前に出る。
背後に人の気配を感じた国王の行動は早かった。
ギフリードの剣を左手に持ちかえると気配に向けて振り上げる。
右足を軸に大きな剣を右下から左上へ持ち上げた国王が、ヒビキの体を右下から左上へ真っ二つにしようとした。
青い光を放つ魔方陣の上に突如、姿をあらわした人物は青い炎に体を包み、ふわふわと宙に浮かんでいた。
その頭からはクリーム色の狐の耳が生えている。
人間界で封印を受けている国王の元へと念じて、転移魔法を使ったはずのに気づいたら魔王城にいた。
なぜ人間界に向かったのに魔王城に移動をしてしまったのか。
戸惑っているヒビキの目の前で、みすぼらしい格好をした人物が剣を振り上げる。
気づいたときには剣が目の前に迫っていて、咄嗟に目蓋を閉じたヒビキが衝撃を覚悟する。
国王が背後に現れた人物を直視。
背後に現れた人物の姿を確認した国王が咄嗟に剣の向きを変えたため、剣の側面がヒビキの体に当たり跳ね飛ばす。
剣を打ち付けられたヒビキの体が魔王を囲んでいる柱に激突する。柱はバチッと音を立ててヒビキの体を弾いた。
そして、重力に従って床の上に落下したヒビキの元へギフリードと国王が駆け寄ると床に伏せていたヒビキが、ゆっくりと床に両手をつく。
上半身を起こして、その場に腰を下ろしたヒビキに目線を合わせるようにしてギフリードが右膝を付いて、その場にしゃがみこむ。
「平気か?」
真剣な面持ちを浮かべるギフリードの問いかけに対してヒビキは苦笑する。
「うん」
汗だくになっているヒビキが小さく頷いた。
「ごめんね。急に背後に現れるから驚いちゃって攻撃しちゃった」
そして、ヒビキの目の前に両ひざをつき座り込んだ国王が両ひざに両手を乗せて軽くお辞儀をする。
ヒビキは首を左右に動かした。
「大丈夫。剣の向きを変えてくれたからダメージは殆ど無かったよ。えっと……」
チラッと目の前の青年からギフリードに視線を向けたヒビキが、困ったように眉尻を下げる。
誰だろうと疑問を抱いて首を傾げたヒビキに視線を向けられて、ギフリードは目を泳がせる。
下手な事は言えないためギフリードの視線が国王に向く。
「あ、僕はユタカっていいます。宜しくね」
ギフリードの視線を受けて、にこりと笑みを浮かべた国王が自己紹介を行った。
しかし、その表情は長い前髪が顔を覆い隠しているためヒビキからは確認することが出来ない。
目の前に座り込んでいる、みすぼらしい恰好をした青年の名前を聞き明らかにヒビキの表情が強張った。
その表情の変化を青年は見逃さなかった。
「ごめんね。何か気に障る事を言ったかな?」
明らかに青年の声のトーンが下がる。
前髪が顔を覆い隠しているため表情からは判断できないけれど、肩を落として顔を俯かせてしまった青年が落ち込んでしまった事に気づきヒビキは慌てて首を左右に振る。
「君の名前を聞いて、ある人物を思い出してしまっただけだから不安にさせて、ごめん」
「ある人?」
目の前の青年は、ある人に対して興味を示したようで小首をかしげる。
「俺の父親も同じユタカと言う名前なんだ」
「顔が強ばってるよ。もしかして、顔が強ばっちゃうほど父親の事が嫌いなのかな?」
青年は何とも複雑な心境に苛まれていた。
まさか、父上ではなくてヒビキにユタカと名前で呼ばれる日が来るとは思ってもいなかった。
嬉しいような照れくさいような。
気になるのはヒビキが父親を思い浮かべてから表情が明らかに強ばっており、声のトーンが下がったため父親の事が嫌いなのだろうかと抱いた疑問を問いかける。
前のめりになり顔を近づけた青年の問いかけに対してヒビキは困ったように眉尻を下げる。
「嫌いではないよ。表情が余り変わらないから何を考えているのか分からなくて苦手なだけで」
問いかけに対して素直な気持ちを返すと、青年は唇を半開きにしたまま固まってしまう。
何か青年の気に障る事を言ってしまったのだろうかと不安を抱いたヒビキがギフリードに視線を向ける。
何故だろう、ギフリードは手の甲を口元に添えて顔を背けている。
ヒビキからは表情は見えていないけれど、小刻みに肩を震わせている事から笑っている事が予想できる。
「え、俺なんか変な事を言った?」
笑うギフリードに声をかけるけど返事はない。
ユキノスに視線を向けるけど、ユキノスは事情を知らないため素直に知らないと目の前で手を左右に振る。
手の側面がシュッシュッと音が立つほど早く動く。
目の前で固まってしまった青年に視線を向けると、肩を落として顔を俯かせていた。
「彼の事は気にしなくていい。それよりも、その恰好は一体どうしたんだ?」
困っているヒビキにギフリードが声をかける。
普段身に着けている白いケープとは違って、踊り子のような衣服を身に着けていた。
青い炎がヒビキの体を包み込んでいる。
「あ、僕も思った。その姿は何なの?」
落ち込んでいたはずの青年は随分と気持ちの切り替えが早い。
じろじろとヒビキの全身を見つめる青年が許可を取る事も無く指先でヒビキの身に付けている服に触れる。
「わぁ! 凄く手触りがいいよぉ。これは、売り物じゃないよね。一体どこで手に入れたの?」
ぐいぐいとヒビキの服を引っ張りだした青年の声のトーンが上がる。
「ちょ、え? 何で触れる事が出来るのか疑問なんだけど。炎を纏った服に素手で触ると火傷をするとか普通さ熱さを感じるものじゃないかな」
激しく変わった青年の態度にヒビキが驚き声を上げる。
そして、同時に浮かんだ疑問に対して何故と混乱するヒビキは戸惑いと共に考えている事を全て口にする。
「何故かな、触れることが出来ちゃったね。僕、自身とても驚いているよ。ねぇ、青色の炎を纏っているという事は君の術によって今の姿は作られているんじゃい?」
はしゃぐ青年の表情は前髪が顔を覆い隠しているため見る事が出来ない。
しかし声のトーンや口調から、青年の気持ちが高ぶっている事が分かる。
「この狐の耳って作り物?」
好奇心旺盛、目を輝かせる青年に狐の耳を加減すること無く鷲掴みにされてヒビキが声を上げる。
「痛い痛い! 俺も今初めて知ったけど耳は本物みたい。俺も正直、この姿が自分の能力によるものなのか、それとも狐面の加護によるものなのか分からないんだ」
青年の手を払い逃れようとしたヒビキは床に両手を付き、その場に立ち上がる。
好奇心旺盛な青年の前から逃げる様にしてユキノスの元へ移動をすると、女性の背後に隠れてしまう。
「突然、ヒビキが空間を歪めて何もない所から現れたように見えたのだが、転移魔法を使えるのか?」
ヒビキに逃げられてプクッと頬を膨らませている国王の視線はヒビキに向けられたまま。
膨れっ面を浮かべて見せたところで長い前髪が顔を覆い隠しているため、その表情は殆んど確認することが出来ない。
ころころと表情を変える国王を横目に見て顔の表情筋を良く使うよなと呑気に観察するギフリードがヒビキに抱いていた疑問を問いかけた。
問いかけに対してユキノスの背後から、そっと顔を覗かせたヒビキが頷く。
「そう。片道だけだけど空間を超えて移動をする事が出来るよ。さっきまで妖精の森の最下層に居たんだ」
「ほう。妖精の森から魔王城は飛行術を使っても6日はかかるが?」
「うん。ユキヒラが転移魔法を使えるようで、魔界にいたはずなのに気がついたら妖精達が屯する街路にいた」
キョロキョロと辺りを見渡すヒビキが、ここが魔王城である事を確認する。
玄関ホールには魔王と妖精王を封印している柱があった。
「父の元へ転移するように念じたはずなんだけど……」
ぽつりと独り言を漏らしたヒビキが戸惑いを隠せずにいると、ぷんすかと怒っていたはずの国王の表情が瞬く間に変化する。
相変わらず長い前髪が顔を覆い隠しているためヒビキやギフリードからは国王の表情を確認することは出来ないけれども、満面の笑みを浮かべて声のトーンも上げた国王が前のめりになる。
「どうしてお父さんの元へ飛ぼうと思ったの?」
ヒビキの独り言を耳にした国王が良い返事を期待して問いかけた。
「え、何でだろう。光の柱に封印を受けている父を、どうやったら助け出すことが出来るのだろうかと考えていたからかな」
ヒビキからの返事を耳にした国王は照れくささから両頬に両手を添えて恥ずかしそうにする。
国王は息子であるヒビキとは緊張して上手い事、話をすることが出来ないと言っていたけれども顔を隠してさえいれば、ヒビキと気軽に話をすることが出来るようだ。
演じているだけなのかもしれないけれど、今の国王は人懐っこい性格と好奇心旺盛なところがあって多分、一人でも数時間は話しをしていられるのではないのかなと思う。
ヒビキも相手が父親であったとしても、目の前の人物が父親だと認識する事が出来なければ気軽に声をかけることが出来るらしい。
「今後はどうするつもりでいるの? 人間界に戻る?」
「暫くは人間界に戻るつもりはないよ。ユキヒラを野放しにしておくと、また犠牲者が増えてしまうから。人間界に戻るとしてもユキヒラを捕らえてからにするよ」
国王の問いかけに対してヒビキが項垂れる。
国王がギフリードに向かって口を、ぱくぱくと動かした。
誰これ?
口だけを動かして首を傾けた国王の問いかけに対してぎフリードは苦笑する。
誰ってヒビキだが?
ギフリードも口を動かして返事をする。
国王とギフリードが、お互いの口の動きを見ながら会話を行っている頃。
妖精の森を囲んだ結界。
その結界内にある気配を追って一つ一つの魔力の質を確認していたユキヒラが大きな、ため息を吐き出した。
いきなり姿を消した少年を探すために最下層を抜け出して草木の生い茂る森の中へ移動した。
木々が周囲を囲み閉鎖的な景色が広がっている。
木の幹に体を預けて術を発動していたユキヒラが転移魔法により突然、姿を消したヒビキを見つけることが出来ずに音を上げる。
「あの少年と思われる気配が妖精の森の中に無いんだけどぉ」
莫大な魔力を使って少年を探そうとしたユキヒラの行動は見事に空振りをする。
詮索魔法は結界内にいる人物の気配をたどって、その魔力の量や質を一つ一つ確認する事により目的の人物の位置を特定する物。
「何かあの子を呼び寄せる術は無いの?」
妖精の森の中には既に少年の気配はない事を伝えたユキヒラに、少年を諦めきれないサヤが問いかける。
「あるにはあるけど、疲れるんだよねぇ」
本音を漏らしたユキヒラにサヤがあんぐりと口を開いた後、すぐにプクッと頬を膨らます。
「出来るのなら呼び寄せてよ。あの子の術を見たいって言ったのはユキヒラじゃん。魔力を使いきったあの子が何処かでモンスターに襲われているかもしれないでしょ?」
ヒビキの心配をするサヤは早く術を使って呼び寄せてよと急かす。
「そうだねぇ。彼は君と違って文句を言わずに僕の指示に従ってくれるからねぇ。今、手放すのは惜しいねぇ」
渋々と体を動かしたユキヒラの足取りは重く、掲げた右手もやる気がないのかピーンとは伸ばされずに曲がっている。
そんな状態にも拘わらず、ユキヒラが呪文を唱えると足元に巨大な魔法陣が現れた。
赤く輝く魔法陣はユキヒラの体を照らし出す。
ユキヒラを中心にして、ゆっくりと回転する魔法陣から小さな赤い光が出現しユキヒラの周りを漂っていた。
初めて目にする魔法陣を眺めて、ドキドキと胸を高鳴らせているサヤはヒビキの登場を大人しく待っている。
魔法陣が目映い光を放ち巨大化する。
ゆっくりと回転する魔法陣の術式は高度な物。
膨大な量の魔力を消費する。
普段は魔力切れなど起こすことの無いユキヒラが自分の限界を知ることになる。
魔力が枯渇する一歩手前でユキヒラが魔力の放出を止めて体力を温存しようと試みた。
「あ、駄目かも」
ぽつりと呟いたユキヒラの声に力はない。
目蓋を閉じたユキヒラの体が後方に大きく傾くと、抵抗する事もなく頽れるようにして倒れこむ。
「え、え?」
ピクリとも動かないユキヒラを見てサヤはパニック状態に陥った。
頬を両手で抑えて周囲を見渡している。
魔法陣の中に入ってもいいのか、分からずに足踏みだけをするサヤは今にも泣きだしそうな表情を浮かべている。
「術が失敗したの? ちょっと、ねぇ!」
声をかけてみるけどユキヒラは反応を示さない。
戸惑うサヤの心配をよそに、ユキヒラの発動した術は見事にヒビキの体を捉えていた。
ヒビキの足元に真っ赤な魔法陣が出現した。
体を中心に少しずつ回転をする魔法陣からは赤い小さな光が出現する。
光はヒビキの手や足を囲むようにして漂っていた。
「拘束魔法? 動けないんだけど」
魔法陣の上に佇んでいるヒビキは体を動かす事が出来ずにいた。
体重が何倍にも増えたような感覚に陥っている。
ヒビキの足元を照らす魔法陣が、ひと際目映い光を放つとヒビキがいる空間がぐにゃりと歪む。
「ちょ、待って。待って!」
歪んだ空間を見て、すぐに国王が赤い魔法陣が召喚魔法を行うものだと気づく。
召喚魔法に対して待ってと叫びながら、ヒビキの元へ走り出した国王が巨大な剣を振りかぶるとギフリードに向けて投げつけた。
「剣は返す。君に怪我をしてほしくないからね。心配してくれて有り難う!」
大声を上げて剣を投げ返した国王は、すぐにギフリードから視線を外したため気づいてはいない。
剣はギフリードに刃先を向け勢いよく向かっていた。
ギフリードが右足を引き、飛んできた剣を避けると、剣がすぐ横を通り過ぎたため、柄を手に取り握りしめる。
ギフリードが剣を受け取っている間に国王はヒビキの足元に現れた魔法陣の中に飛び込んだ。
ヒビキの体を突き飛ばして魔法陣の外へ押し出そうと試みる。
しかし、ヒビキの体を突き飛ばす前に空間が大きく歪むと、国王を巻き込んでヒビキの体と共に中に引きこんでしまう。
赤い魔法陣がパンッと弾けるようにして消えると、小さな赤い光だけが残される。
小さな赤い光は、ふよふよと広い空間を漂っていた。
玄関ホール内にはヒビキや国王の姿は無く、二人が召喚魔法により何処か遠くへ飛ばされた事を理解したギフリードが頭を抱えこむ。
大きなため息を吐き出した。
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トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
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