48 / 148
ヒビキの奪還編
47話 ヒビキの武器と狐面
しおりを挟む
柔和な音を立てて燃えあがる炎は宿の亭主を心底驚かせた。
「わ、わしの宿を燃やさないでおくれよ」
夕食をつくりながら横目でヒビキとユキヒラのやり取りを眺めていた、ぽっちゃり体系の男性が厨房の中から顔を覗かせる。
脂汗を布で拭いながら武器を手に取り佇んでいるヒビキを見つめる、けれども返事はない。
ヒビキは無表情を貫き通しながら宿の亭主に視線を向けて、彼の観察を行っていた。
男性の種族は妖精か、それとも人間か。
背中には白い羽が生えている。
羽の周りには光の粒子が漂っており、羽を羽ばたかせると粒子も一緒になって動き回る。
しかし、大柄な体系である男性を羽が持ち上げる事が出来るとは思えない。
耳は丸くお世辞にも綺麗な容姿をしているとは言えない男性の種族は人間と妖精のハーフなのだろう。
きっと、人間の血を多く引き継いでいるんだろうなと呑気に考えていたヒビキの手から、ユキヒラが強引に剣を取り上げた。
「軽」
柄を握りしめて軽々と持ち上げる。
今まで仏頂面を浮かべていたユキヒラが恍惚とした表情を浮かべて剣を掲げると、手首を動かして剣を頭上で振り回す。
一回、二回と剣を回転させて三回目で突然、何を思ったのか。
ヒビキの首めがけて振り下ろす。
「ちょっと、何をしてるの!」
ユキヒラの突然の行動に真っ先に反応を示したのはヒビキを奪われて膨れっ面を浮かべていたサヤだった。
ヒビキの首を切り落とそうとしたユキヒラに向かって怒鳴り声を上げる。
「そそそ、そうだよ。何をしてるんだよ。ぼぼぼ、僕の宿で流血沙汰はやめておくれよ」
次に反応を示したのは、この宿の亭主だった。サヤと共にユキヒラの行動を非難する。
そして、ヒビキは表情には表してはいないものの、心臓をドキドキと高鳴らせながら心の中で悲鳴を上げていた。
突然の出来事に足を一歩。たった一歩を引く事が出来なかった。
そんな暇など全く与えられず、もしもユキヒラが本気を出して攻撃を仕掛けて来たならば、きっと今頃ヒビキの首は飛んでいただろう。
脈打つ心臓を落ち着かせようとしているヒビキが、ゆっくりと目蓋を閉じる。
整った呼吸を繰り返して、目蓋を閉じているヒビキが無抵抗のまま佇んでいるためユキヒラが小さなため息を吐き出した。
なぜ唐突に武器を突き付けてきたのか意味が分からない。
しかし、それを表情には表す事が出来ないヒビキはユキヒラが口を開くのを待つ。
ゆっくりと首に押し当てた剣を、ヒビキの目の前に移動させたユキヒラが大きなため息を吐き出した。
「この武器は僕には使えないな。武器は返すよぉ」
急に興味が失せたのか。武器を返すと言ったユキヒラの表情は穏やかなものだった。
おっとりとした口調でヒビキに声をかける。
サヤと宿の亭主の言葉を無視したユキヒラが剣から手を放すと、途端に剣は粒子となって消えてしまう。
そのため、何故ユキヒラが剣を返すと言たのか理由を知る事になった。
僅かに開いたユキヒラの手の平は皮膚が爛れて血が滲んでいた。
どうやらヒビキの扱う武器は本人以外が手に取ると、たちまち武器を奪った者を攻撃するらしい。
今までに他の者に武器を貸す事のなかったヒビキが自分の武器の性能について知る事になる。
「はぁ、本人しか扱う事の出来ない特殊武器かぁ」
傷ついた手のひらを眺めて声を漏らしたユキヒラは、持ち主しか使う事の出来ない特殊な武器がある事に対して興味を示していた。
ユキヒラの興味が特殊な武器を扱うヒビキに向けられる。
「もしかして、この狐面も君にしか出来ない使い方があるのかな?」
先程ヒビキから奪った狐面を懐から取り出して、ヒビキの目の前に差し出すと狐面を、そっと手に取ったヒビキが小さく頷いた。
これには、すかさずユキヒラが食らいつく。
「へぇ。例えば、どんな使い方が出来るの?」
狐面を両手に持ち佇むヒビキに問いかけた。
今度は何を、やらかすつもりでいるのやら。
宿の亭主が不安そうにヒビキを見つめている。
「宿を壊すような真似はしないでおくれよ」
ヒビキに問いかけるけれどやはり返事はない。
狐面を手にしたヒビキは、そっと目蓋を閉じると考えこんでいた。
ユキヒラから狐面を奪い返すために咄嗟に、狐面には自分だけにしか出来ない使い方があると答えたけれど、術が成功をする可能性は極端に低かった。
10年も前に偶然が重なって発動した術。
その発動条件は一歩間違えれば大惨事になるだろう。
失敗すれば命を落とすことにもなる。
しかし、狐面をユキヒラに悪用させる訳にもいかなくて、渋々と術の発動を試みる。
目蓋を伏せたまま目の前に手を突き出して、武器を出現させようとしたヒビキの手をサヤが掴みとった。
いきなり横槍を入れられてユキヒラがサヤを睨み付ける。
腕を掴まれて、ゆっくりと目蓋を開いたヒビキは驚きのあまり目を見開いていた。
サヤに視線を向けるとサヤの視線は真っすぐユキヒラに向けられている。
グイグイとヒビキの腕を強引に引っ張りながら歩き出したサヤがユキヒラの、すぐ脇を足早に通りすぎると一気に階段を駆け上る。
ユキヒラに対して警戒心を、むき出しにしたサヤはプクッと頬を膨らまして膨れっ面を浮かべていた。
ヒビキを背中に隠すようにして階段を上りきるとユキヒラを睨みつける。
そんなサヤの態度にユキヒラは大きなため息を吐き出すと足を進める。
ユキヒラがサヤの脇を通り過ぎた。
「もう武器を奪おうとはしないよ。その子は使えそうだから殺しもしない」
警戒心を向けるサヤに、その視線うざいからと言葉を続けたユキヒラが指定された部屋の前まで移動する。
装飾品の施されている大きな扉を開き室内へ足を踏み入れた。
ユキヒラのヒビキに対する考えが変わった事を知りサヤの表情が一気に明るくなった。
「本当に? 約束よ。もう、この子に悪さをしないでよ」
一方的にユキヒラに対して口約束を投げかけると、ユキヒラの後に続いて室内に足を踏み入れた。
ヒビキの肩に右腕を回して、その身体を引き寄せる。
「約束よ」
返事をしないユキヒラに対して再び一方的に言葉を投げ掛ける。
室内も、やはり金色に輝いており家具の上には色とりどりの花が飾られていた。
窓際に設置されているベッドに腰を掛けたユキヒラが扉を背にして佇んでいるヒビキを指差すと
「ちゃんと面倒を見なよ。餌代は自分で稼ぐ。分かったぁ?」
サヤに視線を向けてヒビキの面倒を見るようにと指示を出す。
ユキヒラにヒビキを任されたサヤは大きく首を上下に動かした。
「当然よ。この子は私が面倒を見るわ」
正直ユキヒラの元に置いておくと何をされるか分かったものではないと、不安に思っていたサヤがユキヒラの言葉をすんなりと受け入れる。
「では早速、座って座って!」
3つあるうちの一つ。
青いベッドに腰を掛けるように指示を出したサヤが懐からピンク色の髪どめを取り出した。
そのピンク色の髪どめを一体、何に使う気なのか。
予想をしたヒビキの額を冷や汗が伝う。
恐る恐る指示にしたがってベッドの上に腰を下ろしたヒビキの、すぐ隣にサヤは腰を下ろす。
サヤはヒビキの横髪に手をかけた。
予感は的中した。
サヤには白い狐耳付きのケープを纏った姿は女性に見えるのだろうかと、内心ショックを受けていると
「ちょっと待ってぇ。その子、男の子だよぉ」
ヒビキの髪の毛を編み込み始めたサヤに、これには突っ込まずにはいられなかったユキヒラが、すかさず声をかける。
ユキヒラがサヤの行動を止めてくれたため、安堵しているとサヤは苦笑する。
「うん。そうなんだけどね。私の宝物を、この子に預けておこうと思ってね。あんたが殺した鬼灯お兄ちゃんから誕生日に貰った私の大切な宝物よ。二つあるから一つは、お守りの変わりとして無茶な戦い方をする、この子に託す事にしたの。本当は、この子にヘアピンを鬼灯お兄ちゃんのお墓に供えて欲しいと頼むつもりだったけど、あんたが感情の欠落した人形に変えてしまったから、それも叶わないし」
サヤは何もかもユキヒラのせいだと感情のまま思いを口にしたい気持ちを押し殺す。
思いのまま怒りを、悲しさを、切なさを伝えてしまうと逆上したユキヒラに何をされるか分からないから、深呼吸して感情を落ち着かせるサヤは唇を噛み締める。
髪を編み込みピンク色の髪どめを付けた自分の姿を想像して、真っ青な顔をしていたヒビキがサヤの思いを耳にして考えを改めた。
絶対、似合いっこない。
似合うはずがない。
頭の中で抵抗を試みていたけど、サヤは叶うことならピンクのヘアピンを鬼灯の元に届けて欲しいと願いを込めた事を知る。
ユキヒラは怒りを露にするサヤを見てニヤニヤと感じの悪い笑みを浮かべている。
ユキヒラの逆鱗に触れなくて良かったものの、サヤが余りにも可哀想である。
無表情を貫き通しながら姿勢を正して椅子に腰かけていたヒビキの耳に編み込んだ髪の毛を引っかけて髪止めを使ってとめたサヤが微笑んだ。
「もしも、鬼灯お兄ちゃんのお墓に行く事があったら供えてください。もっと、ずっと一緒にいたかった。大好きだよってサヤが言ってたって伝えてね」
サヤを目の前にして表情を変える事は出来ないけれど、鬼灯の姿を思い浮べたヒビキの顔から血の気が引く。
鬼灯は健在である。
きっと、髪を結んでいる姿を見たら鬼灯の事だから指をさして笑うだろう。
鬼灯の反応を予想する。
もしも、鬼灯と再会する事が出来たらサヤから預かったヘアピンを渡そう。
サヤの気持ちも伝える事にしよう。
渡す事の出来るタイミングがあればいいけど先の事など分からない。
ため息を付く事も出来ないヒビキの目の前で、サヤが口を開いて問いかける。
「ねぇ。着せ替えるための服をいくつか買いたいのだけど。外出をしてもいい? 狐耳付きケープも似合うんだけど、かっこいい服も着ているところを見てみたい」
ユキヒラに向かって問いかけた。
サヤはヒビキを、どのように扱うつもりでいるのだろうか。
外は日が落ちて薄暗くなっているためユキヒラが外出の許可を出すわけも無く。
「明日にしなよぉ」
大きなため息を吐き出したユキヒラがサヤから視線を逸らす。今日は駄目だと呟いた。
てっきりユキヒラは狐面の事については諦めたのだろうと思っていた。
しかし、油断した矢先にユキヒラの視線がヒビキをとらえて声をかける。
「で、その狐面は君だったらどのように使いこなすのかなぁ?」
見せてと首を傾けたユキヒラからの指示を受ける事になる。
指示には逆らえない。
狐面に対して術を発動してしまうと、たった一度術を発動しただけで魔力切れになってしまう。
狐面をくれた人物は、既にこの世にはいないから扱い方を習う術がなかった。
もしかしたら、自分が知らないだけで他にも狐面を使った戦い方があるのかもしれないと考えるヒビキは溜め息を付きたいけれども我慢してユキヒラの指示に従おうとする。
それに命の危険だってあるため正直、術を使いたくはない。
しかし、術を使わなければ再びユキヒラに狐面を奪われてしまいそうな気がして渋々と狐面を装着したヒビキが小さく頷いた。
ゆっくりと、ベッドから腰を上げる。
目蓋を閉じると右手を突き出した。
頭の中で武器の出現を唱える。
すると突然、青い炎を纏った刀が現れた。
へぇと声を漏らしたユキヒラは唇に人差し指の第二関節を当てて考える。
以前、同じように青い炎を纏った刀を扱っている人物を見た。
一瞬だけど目の前の少年と人間界でボスモンスター討伐隊の隊長を務めていた青年の姿を重ね合わせる。
しかし、ありえないかと考えを一変させたユキヒラが見つめる、その視線の先でヒビキは予想外の行動を取る。
「ちょっ」
サヤが引きつった声を上げる。
刀の柄を握りしめたヒビキは、くるんと刀を回転させて刃先を自分に向けていた。
「何してんの?」
これには冷静にヒビキの行動を見守っていたユキヒラも声を上げる。
咄嗟にヒビキの行動を止めようとした。
慌ててベッドから腰を上げた二人の目の前でヒビキが自分の胸に剣を突き立てる。
切れ味の良い刃は当然の事だけど見事にヒビキの胸を貫通する。
「本当に何してんの! 術を発動するにしたって別のやり方があるでしょぉ?」
ユキヒラが大声を張り上げる。
慌ててヒビキに回復魔法を施そうとしたユキヒラの目の前で青い炎はヒビキの体に燃え移り、その身体を包みこむ。
すると突然ヒビキの足元に巨大な青い結界が出現した。
目映い光を放つ結界がヒビキの体を、ふわりと浮かすと唐突に暴風が吹き荒れる。
室内の家具が宙に浮かび花が舞い散る。
ユキヒラとサヤの体を吹き飛ばして壁に打ち付けられた二人の体めがけて巨大なベッドが降りかかる。
床を転がってベッドを避けたユキヒラとサヤが、その場に立ち上がると武器を手に取り構えをとる。
ヒビキに対して警戒心を、むき出しにしたユキヒラが剣の先をヒビキの首筋に突き立てた。
そして、ヒビキに武器を突き立てているユキヒラの首にサヤが杖の先を突き付けている。
ユキヒラとサヤの視線の先には、ふわふわと宙に体を浮かしながら二人を見下ろすヒビキの姿があった。
その体を青い炎が包み込んでいる。
クリーム色の狐耳を頭から生やした少年は白と青を基調とした、随分と手触りのよさそうな服に体を包み込まれていた。
袖がふわりと広がっている服は確か人間界に居た頃に見た、踊り子の背後で巨大な扇を手にしていた男性が身に着けていたものに似ている気がする。
何て呑気に考えていたユキヒラの目の前で突然ヒビキが姿を消した。
ヒビキは人間界で封印を受けている父の姿を思い浮かべていた。
術を発動すると、自分の指定した場所に一度だけ一瞬にして移動が出来るから、父の元へと願ったヒビキの体が国王の元へ向かう。
予想もしていなかったヒビキの行動に対して、ユキヒラが驚きのあまり唖然とする。
一瞬の沈黙の後、ユキヒラが右手を掲げるとパチンと指を鳴らす。
すると、宿を囲むようにして青白い光に包まれた結界が出現した。
そして、もう一度指を鳴らすと妖精の森を包み込むようにして巨大な結界が出現する。
「探しに行くよ」
普段のおっとりとした口調をやめて、淡々とした口調でサヤに指示を出したユキヒラが走り出す。
扉を開くと、すぐに大きな音を聞きつけて二階へ上がってきた宿の亭主と鉢合わせをした。
しかし、亭主の言葉を耳にすることなく横を通りすぎたユキヒラ。その後に続くサヤも深々と亭主に頭を下げはしたものの、真剣な面持ちを浮かべて亭主の横を素通りする。
二人して宿を抜け出した。
「わ、わしの宿を燃やさないでおくれよ」
夕食をつくりながら横目でヒビキとユキヒラのやり取りを眺めていた、ぽっちゃり体系の男性が厨房の中から顔を覗かせる。
脂汗を布で拭いながら武器を手に取り佇んでいるヒビキを見つめる、けれども返事はない。
ヒビキは無表情を貫き通しながら宿の亭主に視線を向けて、彼の観察を行っていた。
男性の種族は妖精か、それとも人間か。
背中には白い羽が生えている。
羽の周りには光の粒子が漂っており、羽を羽ばたかせると粒子も一緒になって動き回る。
しかし、大柄な体系である男性を羽が持ち上げる事が出来るとは思えない。
耳は丸くお世辞にも綺麗な容姿をしているとは言えない男性の種族は人間と妖精のハーフなのだろう。
きっと、人間の血を多く引き継いでいるんだろうなと呑気に考えていたヒビキの手から、ユキヒラが強引に剣を取り上げた。
「軽」
柄を握りしめて軽々と持ち上げる。
今まで仏頂面を浮かべていたユキヒラが恍惚とした表情を浮かべて剣を掲げると、手首を動かして剣を頭上で振り回す。
一回、二回と剣を回転させて三回目で突然、何を思ったのか。
ヒビキの首めがけて振り下ろす。
「ちょっと、何をしてるの!」
ユキヒラの突然の行動に真っ先に反応を示したのはヒビキを奪われて膨れっ面を浮かべていたサヤだった。
ヒビキの首を切り落とそうとしたユキヒラに向かって怒鳴り声を上げる。
「そそそ、そうだよ。何をしてるんだよ。ぼぼぼ、僕の宿で流血沙汰はやめておくれよ」
次に反応を示したのは、この宿の亭主だった。サヤと共にユキヒラの行動を非難する。
そして、ヒビキは表情には表してはいないものの、心臓をドキドキと高鳴らせながら心の中で悲鳴を上げていた。
突然の出来事に足を一歩。たった一歩を引く事が出来なかった。
そんな暇など全く与えられず、もしもユキヒラが本気を出して攻撃を仕掛けて来たならば、きっと今頃ヒビキの首は飛んでいただろう。
脈打つ心臓を落ち着かせようとしているヒビキが、ゆっくりと目蓋を閉じる。
整った呼吸を繰り返して、目蓋を閉じているヒビキが無抵抗のまま佇んでいるためユキヒラが小さなため息を吐き出した。
なぜ唐突に武器を突き付けてきたのか意味が分からない。
しかし、それを表情には表す事が出来ないヒビキはユキヒラが口を開くのを待つ。
ゆっくりと首に押し当てた剣を、ヒビキの目の前に移動させたユキヒラが大きなため息を吐き出した。
「この武器は僕には使えないな。武器は返すよぉ」
急に興味が失せたのか。武器を返すと言ったユキヒラの表情は穏やかなものだった。
おっとりとした口調でヒビキに声をかける。
サヤと宿の亭主の言葉を無視したユキヒラが剣から手を放すと、途端に剣は粒子となって消えてしまう。
そのため、何故ユキヒラが剣を返すと言たのか理由を知る事になった。
僅かに開いたユキヒラの手の平は皮膚が爛れて血が滲んでいた。
どうやらヒビキの扱う武器は本人以外が手に取ると、たちまち武器を奪った者を攻撃するらしい。
今までに他の者に武器を貸す事のなかったヒビキが自分の武器の性能について知る事になる。
「はぁ、本人しか扱う事の出来ない特殊武器かぁ」
傷ついた手のひらを眺めて声を漏らしたユキヒラは、持ち主しか使う事の出来ない特殊な武器がある事に対して興味を示していた。
ユキヒラの興味が特殊な武器を扱うヒビキに向けられる。
「もしかして、この狐面も君にしか出来ない使い方があるのかな?」
先程ヒビキから奪った狐面を懐から取り出して、ヒビキの目の前に差し出すと狐面を、そっと手に取ったヒビキが小さく頷いた。
これには、すかさずユキヒラが食らいつく。
「へぇ。例えば、どんな使い方が出来るの?」
狐面を両手に持ち佇むヒビキに問いかけた。
今度は何を、やらかすつもりでいるのやら。
宿の亭主が不安そうにヒビキを見つめている。
「宿を壊すような真似はしないでおくれよ」
ヒビキに問いかけるけれどやはり返事はない。
狐面を手にしたヒビキは、そっと目蓋を閉じると考えこんでいた。
ユキヒラから狐面を奪い返すために咄嗟に、狐面には自分だけにしか出来ない使い方があると答えたけれど、術が成功をする可能性は極端に低かった。
10年も前に偶然が重なって発動した術。
その発動条件は一歩間違えれば大惨事になるだろう。
失敗すれば命を落とすことにもなる。
しかし、狐面をユキヒラに悪用させる訳にもいかなくて、渋々と術の発動を試みる。
目蓋を伏せたまま目の前に手を突き出して、武器を出現させようとしたヒビキの手をサヤが掴みとった。
いきなり横槍を入れられてユキヒラがサヤを睨み付ける。
腕を掴まれて、ゆっくりと目蓋を開いたヒビキは驚きのあまり目を見開いていた。
サヤに視線を向けるとサヤの視線は真っすぐユキヒラに向けられている。
グイグイとヒビキの腕を強引に引っ張りながら歩き出したサヤがユキヒラの、すぐ脇を足早に通りすぎると一気に階段を駆け上る。
ユキヒラに対して警戒心を、むき出しにしたサヤはプクッと頬を膨らまして膨れっ面を浮かべていた。
ヒビキを背中に隠すようにして階段を上りきるとユキヒラを睨みつける。
そんなサヤの態度にユキヒラは大きなため息を吐き出すと足を進める。
ユキヒラがサヤの脇を通り過ぎた。
「もう武器を奪おうとはしないよ。その子は使えそうだから殺しもしない」
警戒心を向けるサヤに、その視線うざいからと言葉を続けたユキヒラが指定された部屋の前まで移動する。
装飾品の施されている大きな扉を開き室内へ足を踏み入れた。
ユキヒラのヒビキに対する考えが変わった事を知りサヤの表情が一気に明るくなった。
「本当に? 約束よ。もう、この子に悪さをしないでよ」
一方的にユキヒラに対して口約束を投げかけると、ユキヒラの後に続いて室内に足を踏み入れた。
ヒビキの肩に右腕を回して、その身体を引き寄せる。
「約束よ」
返事をしないユキヒラに対して再び一方的に言葉を投げ掛ける。
室内も、やはり金色に輝いており家具の上には色とりどりの花が飾られていた。
窓際に設置されているベッドに腰を掛けたユキヒラが扉を背にして佇んでいるヒビキを指差すと
「ちゃんと面倒を見なよ。餌代は自分で稼ぐ。分かったぁ?」
サヤに視線を向けてヒビキの面倒を見るようにと指示を出す。
ユキヒラにヒビキを任されたサヤは大きく首を上下に動かした。
「当然よ。この子は私が面倒を見るわ」
正直ユキヒラの元に置いておくと何をされるか分かったものではないと、不安に思っていたサヤがユキヒラの言葉をすんなりと受け入れる。
「では早速、座って座って!」
3つあるうちの一つ。
青いベッドに腰を掛けるように指示を出したサヤが懐からピンク色の髪どめを取り出した。
そのピンク色の髪どめを一体、何に使う気なのか。
予想をしたヒビキの額を冷や汗が伝う。
恐る恐る指示にしたがってベッドの上に腰を下ろしたヒビキの、すぐ隣にサヤは腰を下ろす。
サヤはヒビキの横髪に手をかけた。
予感は的中した。
サヤには白い狐耳付きのケープを纏った姿は女性に見えるのだろうかと、内心ショックを受けていると
「ちょっと待ってぇ。その子、男の子だよぉ」
ヒビキの髪の毛を編み込み始めたサヤに、これには突っ込まずにはいられなかったユキヒラが、すかさず声をかける。
ユキヒラがサヤの行動を止めてくれたため、安堵しているとサヤは苦笑する。
「うん。そうなんだけどね。私の宝物を、この子に預けておこうと思ってね。あんたが殺した鬼灯お兄ちゃんから誕生日に貰った私の大切な宝物よ。二つあるから一つは、お守りの変わりとして無茶な戦い方をする、この子に託す事にしたの。本当は、この子にヘアピンを鬼灯お兄ちゃんのお墓に供えて欲しいと頼むつもりだったけど、あんたが感情の欠落した人形に変えてしまったから、それも叶わないし」
サヤは何もかもユキヒラのせいだと感情のまま思いを口にしたい気持ちを押し殺す。
思いのまま怒りを、悲しさを、切なさを伝えてしまうと逆上したユキヒラに何をされるか分からないから、深呼吸して感情を落ち着かせるサヤは唇を噛み締める。
髪を編み込みピンク色の髪どめを付けた自分の姿を想像して、真っ青な顔をしていたヒビキがサヤの思いを耳にして考えを改めた。
絶対、似合いっこない。
似合うはずがない。
頭の中で抵抗を試みていたけど、サヤは叶うことならピンクのヘアピンを鬼灯の元に届けて欲しいと願いを込めた事を知る。
ユキヒラは怒りを露にするサヤを見てニヤニヤと感じの悪い笑みを浮かべている。
ユキヒラの逆鱗に触れなくて良かったものの、サヤが余りにも可哀想である。
無表情を貫き通しながら姿勢を正して椅子に腰かけていたヒビキの耳に編み込んだ髪の毛を引っかけて髪止めを使ってとめたサヤが微笑んだ。
「もしも、鬼灯お兄ちゃんのお墓に行く事があったら供えてください。もっと、ずっと一緒にいたかった。大好きだよってサヤが言ってたって伝えてね」
サヤを目の前にして表情を変える事は出来ないけれど、鬼灯の姿を思い浮べたヒビキの顔から血の気が引く。
鬼灯は健在である。
きっと、髪を結んでいる姿を見たら鬼灯の事だから指をさして笑うだろう。
鬼灯の反応を予想する。
もしも、鬼灯と再会する事が出来たらサヤから預かったヘアピンを渡そう。
サヤの気持ちも伝える事にしよう。
渡す事の出来るタイミングがあればいいけど先の事など分からない。
ため息を付く事も出来ないヒビキの目の前で、サヤが口を開いて問いかける。
「ねぇ。着せ替えるための服をいくつか買いたいのだけど。外出をしてもいい? 狐耳付きケープも似合うんだけど、かっこいい服も着ているところを見てみたい」
ユキヒラに向かって問いかけた。
サヤはヒビキを、どのように扱うつもりでいるのだろうか。
外は日が落ちて薄暗くなっているためユキヒラが外出の許可を出すわけも無く。
「明日にしなよぉ」
大きなため息を吐き出したユキヒラがサヤから視線を逸らす。今日は駄目だと呟いた。
てっきりユキヒラは狐面の事については諦めたのだろうと思っていた。
しかし、油断した矢先にユキヒラの視線がヒビキをとらえて声をかける。
「で、その狐面は君だったらどのように使いこなすのかなぁ?」
見せてと首を傾けたユキヒラからの指示を受ける事になる。
指示には逆らえない。
狐面に対して術を発動してしまうと、たった一度術を発動しただけで魔力切れになってしまう。
狐面をくれた人物は、既にこの世にはいないから扱い方を習う術がなかった。
もしかしたら、自分が知らないだけで他にも狐面を使った戦い方があるのかもしれないと考えるヒビキは溜め息を付きたいけれども我慢してユキヒラの指示に従おうとする。
それに命の危険だってあるため正直、術を使いたくはない。
しかし、術を使わなければ再びユキヒラに狐面を奪われてしまいそうな気がして渋々と狐面を装着したヒビキが小さく頷いた。
ゆっくりと、ベッドから腰を上げる。
目蓋を閉じると右手を突き出した。
頭の中で武器の出現を唱える。
すると突然、青い炎を纏った刀が現れた。
へぇと声を漏らしたユキヒラは唇に人差し指の第二関節を当てて考える。
以前、同じように青い炎を纏った刀を扱っている人物を見た。
一瞬だけど目の前の少年と人間界でボスモンスター討伐隊の隊長を務めていた青年の姿を重ね合わせる。
しかし、ありえないかと考えを一変させたユキヒラが見つめる、その視線の先でヒビキは予想外の行動を取る。
「ちょっ」
サヤが引きつった声を上げる。
刀の柄を握りしめたヒビキは、くるんと刀を回転させて刃先を自分に向けていた。
「何してんの?」
これには冷静にヒビキの行動を見守っていたユキヒラも声を上げる。
咄嗟にヒビキの行動を止めようとした。
慌ててベッドから腰を上げた二人の目の前でヒビキが自分の胸に剣を突き立てる。
切れ味の良い刃は当然の事だけど見事にヒビキの胸を貫通する。
「本当に何してんの! 術を発動するにしたって別のやり方があるでしょぉ?」
ユキヒラが大声を張り上げる。
慌ててヒビキに回復魔法を施そうとしたユキヒラの目の前で青い炎はヒビキの体に燃え移り、その身体を包みこむ。
すると突然ヒビキの足元に巨大な青い結界が出現した。
目映い光を放つ結界がヒビキの体を、ふわりと浮かすと唐突に暴風が吹き荒れる。
室内の家具が宙に浮かび花が舞い散る。
ユキヒラとサヤの体を吹き飛ばして壁に打ち付けられた二人の体めがけて巨大なベッドが降りかかる。
床を転がってベッドを避けたユキヒラとサヤが、その場に立ち上がると武器を手に取り構えをとる。
ヒビキに対して警戒心を、むき出しにしたユキヒラが剣の先をヒビキの首筋に突き立てた。
そして、ヒビキに武器を突き立てているユキヒラの首にサヤが杖の先を突き付けている。
ユキヒラとサヤの視線の先には、ふわふわと宙に体を浮かしながら二人を見下ろすヒビキの姿があった。
その体を青い炎が包み込んでいる。
クリーム色の狐耳を頭から生やした少年は白と青を基調とした、随分と手触りのよさそうな服に体を包み込まれていた。
袖がふわりと広がっている服は確か人間界に居た頃に見た、踊り子の背後で巨大な扇を手にしていた男性が身に着けていたものに似ている気がする。
何て呑気に考えていたユキヒラの目の前で突然ヒビキが姿を消した。
ヒビキは人間界で封印を受けている父の姿を思い浮かべていた。
術を発動すると、自分の指定した場所に一度だけ一瞬にして移動が出来るから、父の元へと願ったヒビキの体が国王の元へ向かう。
予想もしていなかったヒビキの行動に対して、ユキヒラが驚きのあまり唖然とする。
一瞬の沈黙の後、ユキヒラが右手を掲げるとパチンと指を鳴らす。
すると、宿を囲むようにして青白い光に包まれた結界が出現した。
そして、もう一度指を鳴らすと妖精の森を包み込むようにして巨大な結界が出現する。
「探しに行くよ」
普段のおっとりとした口調をやめて、淡々とした口調でサヤに指示を出したユキヒラが走り出す。
扉を開くと、すぐに大きな音を聞きつけて二階へ上がってきた宿の亭主と鉢合わせをした。
しかし、亭主の言葉を耳にすることなく横を通りすぎたユキヒラ。その後に続くサヤも深々と亭主に頭を下げはしたものの、真剣な面持ちを浮かべて亭主の横を素通りする。
二人して宿を抜け出した。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる