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ドラゴンクエスト編
30話 ギフリードが戦うようです
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鬼灯を中心とした半径100メートルを濃い霧がおおう。
所々で紫色に輝く蝶が飛び回り、藍色の花が蕾を開く。
鬼灯が咄嗟に幻術魔法を使ったため、仰向けに横たわるヒビキは魔族へと姿を変えていた。
尖った耳に白色の角を生やすクリーム色の髪の毛が印象的な少年は目蓋を閉じたままピクリとも動かない。
「魔族の肉は硬いからなぁ」
小綺麗な身なりをした女性はヒビキの容姿を確認すると興味が失せたように呟いた。
標的をヒビキからフードを被って顔の見えない鬼灯に変える。
巨大な剣を構えた女性に鬼灯が慌ててフードを取り外した。
フードを外した鬼灯の容姿が露になる。
真っ赤な瞳に真っ赤な髪の毛。
真っ赤な角を生やした鬼灯も幻術で姿を変えていた。
「こっちも魔族かぁ」
小綺麗な女性の表情から笑顔が消える。
愕然とした表情を浮かべて鬼灯から視線を外した女性が今度はヒナミに視線を向けた。
金色の髪の毛に青い瞳が印象的な少女が大きく体を揺らす。
大きな血だまりの上に佇む女性に恐怖心を抱いていた。
巨大な杖を両手に抱えてプルプルと体を震わせる少女は恐怖から尻餅をついたまま立つことが出来ずにいる。
人間の子供の見た目をする少女を見た女性が目を輝かせる。
「私は魔族と天使のハーフだから食べても美味しくないと思うよ」
ヒナミが目に涙を沢山ためながら呟いた。
「もしかして、父はアリアス。母はアリアス・ランテかしら?」
思い当たる人物がいたようで小綺麗な女性がヒナミに問いかける。
ヒナミは女性に見下ろされて、緊張のため声を出すことが出来ず大きく首を上下に動かした。
「天使のお肉は食べたら死に至ると言われているから、食べることが出来ないわね」
女性が独り言のように呟くとヒナミに向けていた武器を、ゆっくりと下ろす。
もとより顔の見えていたギフリードには見向きもせず。
「あぁ、あの少年はまだかしら」
ゆっくりとした重い足取りで歩く女性が独り言を呟いた。
ギルドの出入り口に戻った女性は人間の少年が建物から出てくるのを待ち始める。
恍惚とした表情を浮かべる女性は、透明なケースに入っていた少年の姿を思い起こしていた。
クリーム色のやわらかそうな髪の毛、お人形さんのような印象を人に与える少年は、真っ白い肌に華奢な体つきの儚げな風貌をしていた。
女性が少年の姿を思い起こして舌舐めずりをする。
彼女の足元に広がった血だまりを眺めて
「彼女を野放しにしては被害が増え続けるか」
ギフリードが考えを口にした。
背負っていた剣を手に取り女性に向け構える。
魔力を体に纏わせて敏捷性を高めたギフリードに、周囲を取り囲んでいた冒険者や街の人々からの歓声が上がった。
成り行きを見守っていた人々の表情に笑顔が戻る。
「ブラックボール」
闇属性の魔法を唱えると突然、剣の先から黒い靄が発生する。
やがて黒い、もやもやとしたボール玉が空中に浮かび上がり闇魔法が出現する。
小さいものから大きいものまで幅広い大きさのボール玉が小綺麗な身なりの女性を取り囲むと
「え、何?」
闇属性の攻撃に囲まれて小綺麗な女性は戸惑う姿を見せながら辺りを見渡した。
背後に佇むギフリードの姿に気づくと女性は銀髪の青年を眺めたまま顔を真っ青にする。
「ギフリード様が何故ここに」
ぽつりと疑問を口にして、怯える小綺麗な女性が体を小刻みに震わせた。
女性が暗黒騎士団の隊長を務めるギフリードを見て動揺したのをヒビキが、うっすらと目蓋を開けて横目で確認する。
仰向けに横たわり気絶したふりをするヒビキは、この場から逃げ出すタイミングを見計らっていた。
「降参! 降参よ。そんなものをくらったら跡形もなく消えちゃうじゃない」
しかし、ヒビキが逃げ出すタイミングを見つける前に小綺麗な女性は、あっけなく降伏する。
無数のブラックボールに囲まれて身動きをとる事が出来ないため、剣を手放した。
からんと音を立てて巨大な剣が女性の足元に落ちる。
「俺ら4人の中にギフリードがいることに気づいていなかったとは」
鬼灯が、ほっと安堵する。
「彼女は随分と視野が狭くなってたんだな」
仰向けに横たわったまま瞬きを繰り返すヒビキが頷く。
「なぁーんて、私が言うわけないじゃない!」
突然、小綺麗な女性の態度が激変した。
ギフリードを見て怯えていたはずの女性が、あははははと笑い声をあげ始める。
地面に倒れていた剣の柄頭を思い切り蹴りあげた。
「あの子供を食べるまで捕まる訳には行かないのよ!」
女性が髪を振り乱し大声を張り上げる。
所々で紫色に輝く蝶が飛び回り、藍色の花が蕾を開く。
鬼灯が咄嗟に幻術魔法を使ったため、仰向けに横たわるヒビキは魔族へと姿を変えていた。
尖った耳に白色の角を生やすクリーム色の髪の毛が印象的な少年は目蓋を閉じたままピクリとも動かない。
「魔族の肉は硬いからなぁ」
小綺麗な身なりをした女性はヒビキの容姿を確認すると興味が失せたように呟いた。
標的をヒビキからフードを被って顔の見えない鬼灯に変える。
巨大な剣を構えた女性に鬼灯が慌ててフードを取り外した。
フードを外した鬼灯の容姿が露になる。
真っ赤な瞳に真っ赤な髪の毛。
真っ赤な角を生やした鬼灯も幻術で姿を変えていた。
「こっちも魔族かぁ」
小綺麗な女性の表情から笑顔が消える。
愕然とした表情を浮かべて鬼灯から視線を外した女性が今度はヒナミに視線を向けた。
金色の髪の毛に青い瞳が印象的な少女が大きく体を揺らす。
大きな血だまりの上に佇む女性に恐怖心を抱いていた。
巨大な杖を両手に抱えてプルプルと体を震わせる少女は恐怖から尻餅をついたまま立つことが出来ずにいる。
人間の子供の見た目をする少女を見た女性が目を輝かせる。
「私は魔族と天使のハーフだから食べても美味しくないと思うよ」
ヒナミが目に涙を沢山ためながら呟いた。
「もしかして、父はアリアス。母はアリアス・ランテかしら?」
思い当たる人物がいたようで小綺麗な女性がヒナミに問いかける。
ヒナミは女性に見下ろされて、緊張のため声を出すことが出来ず大きく首を上下に動かした。
「天使のお肉は食べたら死に至ると言われているから、食べることが出来ないわね」
女性が独り言のように呟くとヒナミに向けていた武器を、ゆっくりと下ろす。
もとより顔の見えていたギフリードには見向きもせず。
「あぁ、あの少年はまだかしら」
ゆっくりとした重い足取りで歩く女性が独り言を呟いた。
ギルドの出入り口に戻った女性は人間の少年が建物から出てくるのを待ち始める。
恍惚とした表情を浮かべる女性は、透明なケースに入っていた少年の姿を思い起こしていた。
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女性が少年の姿を思い起こして舌舐めずりをする。
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「彼女を野放しにしては被害が増え続けるか」
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やがて黒い、もやもやとしたボール玉が空中に浮かび上がり闇魔法が出現する。
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「え、何?」
闇属性の攻撃に囲まれて小綺麗な女性は戸惑う姿を見せながら辺りを見渡した。
背後に佇むギフリードの姿に気づくと女性は銀髪の青年を眺めたまま顔を真っ青にする。
「ギフリード様が何故ここに」
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女性が暗黒騎士団の隊長を務めるギフリードを見て動揺したのをヒビキが、うっすらと目蓋を開けて横目で確認する。
仰向けに横たわり気絶したふりをするヒビキは、この場から逃げ出すタイミングを見計らっていた。
「降参! 降参よ。そんなものをくらったら跡形もなく消えちゃうじゃない」
しかし、ヒビキが逃げ出すタイミングを見つける前に小綺麗な女性は、あっけなく降伏する。
無数のブラックボールに囲まれて身動きをとる事が出来ないため、剣を手放した。
からんと音を立てて巨大な剣が女性の足元に落ちる。
「俺ら4人の中にギフリードがいることに気づいていなかったとは」
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「彼女は随分と視野が狭くなってたんだな」
仰向けに横たわったまま瞬きを繰り返すヒビキが頷く。
「なぁーんて、私が言うわけないじゃない!」
突然、小綺麗な女性の態度が激変した。
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