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ドラゴンクエスト編
29話 小綺麗な女性VSヒビキ
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白いファー付きの黒いフードを深々と被り、真冬に羽織る分厚いコートを身に纏った鬼灯が室内に足を踏み入れる。
寒さ対策をしっかりと行っている鬼灯は、室内に足を踏み入れるなり大きく身震いをした。
「もう外に出たくねぇ。寒すぎる」
独り言を呟き、部屋の出入り口から見て真っ正面。向かい側にある暖炉の元へ直行する。
魔王が封印された事により、夜になると街を囲むようにして張り巡らされていた結界が始動せず、アンデッド系モンスターが大通りを自由に行き来する事が出来る状態になっていた。
魔族達はアンデッド系モンスターを恐れて足早に帰路に就く。
大通りの一部や建物の敷地内をアンデッド系モンスター達は気の向くままに占領を始めていた。
「グールが屍肉を求めて徘徊してるし、グールを見てパニックに陥り逃げ惑う奴らに突き飛ばされるし散々な目にあった」
街の中は逃げ惑う人々で、ごった返していたと言葉を続けた鬼灯が恐怖心を抱いて身震いをする。
「1階フロアに血眼になって人間を探す魔族が大勢いたな。いつもはギルド内は空いてる時間帯だが」
鬼灯に続いて漆黒の鎧を身に纏うギフリードが足音を立てて室内に足を踏み入れる。
ギルドの1階層でヒビキが帰宅するためフロアを通るのを、今か今かと待ちわびている魔族の姿があった事を伝える。
モデルをしていたヒビキを食らうことしか考えていない連中が屯していたらしい。
分厚いコートを羽織り首にマフラーを巻くギフリードも寒さ対策をしっかりとしており、鬼灯の後を追いかけて暖炉の前に直行する。
「寒すぎる」
ギフリードが、ぽつりと本音を口にした。
「ヒビキお兄ちゃんのコートだよ」
最後に白いファー付きの黒色のコートを手に持ったヒナミが室内に足を踏み入れた。
ヒビキの元に歩み寄りコートを、はいっと差し出すヒナミは鼻と頬を真っ赤にして体をプルプルと小刻みに震わせている。
「ありがとう」
お礼を言ってコートを受けとると小走りに暖炉の前に向かったヒナミが、ちょこんっと床に腰を下ろす。
「お迎えが来て良かったわね」
呆然とコートを眺めていたヒビキに受付嬢が声をかけた。
「随分と可愛いデザインのコートね」
受付嬢がコートを眺めて思わず本音を口にする。
コートを羽織ってみると膝下まで長さがあり、裾の広がったコートは袖にもファーがついていた。
「それは、お母さんのコートだよ!」
コートを眺めていたヒビキにヒナミは満面の笑みを浮かべて声をかける。
女性もののデザインのコートはヒビキが想像していた通り、ヒナミの母親の物だった。
黒と白を基調とするコートのボタンの形はハート型。
「やっぱり女性ものか」
ヒビキが肩を落とす。
「お母さん心配してたよ。ヒビキお兄ちゃんが帰り道に魔族に襲われて食べられちゃうんじゃないかってね」
ヒナミが続けた言葉に首を傾けたヒビキだけど受付嬢や、鬼灯や、ギフリードの3人は首を上下に振っている。
「ギフリードの言ってた通り、建物付近でも建物内でも物騒な連中がた屯してたからな」
鬼灯がクククッと肩を震わせながらヒビキに声をかけた。
「ヒビキ君がモデルをしている時に冒険者が何人も人間であるヒビキ君を指差して、この子いくらって聞いていたみたいなの。売り子はヒビキ君は売り物では無いと答えていたようだけど」
「人の肝は美味と聞くからな。高額であっても人間を買いたいって奴は多くいるだろう」
受付嬢の言葉にギフリードが頷く。
「200年ほど前にも人間界から迷いこんだ子にモデルをしてもらったんだけど、その子は初日に帰り道で魔族に襲われて食べられちゃったのよ」
受付嬢が続けた言葉にギフリードが頷いた。
「血だまりの中に武器と衣服と、手足の爪だけが残されてたな」
「えぇ。ヒビキ君と同じ年頃の子だったんだけどね。悲鳴を聞きつけて、すぐに駆けつけたんだけど魔族達が引き裂いて、その子を食べるのは目撃者曰く、あっという間だったそうよ」
過去の出来事を思い出して頷く受付嬢とギフリードの話についていけないヒナミと鬼灯が顔を見合わせた。
ヒビキは急に過去に起こった出来事を持ち出され、今から帰宅しようと考えているため緊張で顔が引き攣っている。
「大丈夫よ。お迎えが3人もいるんだから」
顔の強張っているヒビキの背中を受付嬢は、なだめるようにしてポンポンと叩く。
白いファー付きのフードを深く被ったヒビキの足取りは重い。大きなため息をついたヒビキにヒナミが纏わり付く。
「1階フロアは走って通過してしまおう」
「それがいいわね」
鬼灯の言葉に受付嬢が頷いた。
暖炉の前を離れた鬼灯が室内を抜け出した。
鬼灯に続いてヒナミとヒビキが室内を抜け出して、最後にギフリードが後を追う。
ギフリードに続き室内から顔を覗かせた受付嬢は笑顔で手を振り4人の背中を見送った。
1階へ続く階段に差し掛かると鬼灯が、ほいっと掛け声を一つ階段を一気に飛び下りる。
飛行術を使ってフロア内にいる冒険者達の頭上を一気に通過した鬼灯に続いてヒビキがヒナミを抱えて飛び下りる。
ヒビキの後をギフリードが追うと一気にギルドの出入り口から外に飛び出した4人は冷たい風に晒された。
「寒っ」
肌を刺すような風はヒビキが想像していたものより冷たかった。
ぽつりと本音を呟いたヒビキが、ぶるりと体を震わせる。
空中に浮かしていた体を下ろして地面に足を付く。
抱えていたヒナミを下ろし、街路に視線を向けたところでヒビキは呆然とした表情を浮かべて瞬きを繰り返した。
目を見開いたヒビキの隣でヒナミが腰を抜かして尻餅をつく。
見渡す限りの血だまりは一体、何処まで続いているのか。
街路には大きな血だまりが出来ていた。
血だまりの中には深くフードを被り、顔の見えない魔族達が倒れている。
その中央に佇んでいる小綺麗な身なりの女性は巨大な剣を片手に持ったまま獲物を探すように、鋭い視線をヒビキに向けていた。
「あぁ、早く人間の少年が出てこないかしら」
数十分前まで透明なケースの中にいた少年の姿を想像する女性が舌舐めずりをする。
「先ずは腕を切り落として試食よね」
恍惚として佇む女性は透明なケースの中にいたヒビキに心を奪われていた。
「そして、首筋に噛みつきたいわね」
一人妄想にふける。
人間である少年を逃さないために小綺麗な身なりをした女性は、深くフードを被っているため顔を見ることの出来ない冒険者がギルドから出てくるたびに切り刻んでいた。
先ず最初に女性に狙われたのはヒビキだった。
巨大な剣を振りかざし地面を強く蹴りつけた女性が、もの凄い勢いでヒビキの元へと一直線。
ヒビキの左脇腹へ向かう素振りを見せつつ、フェイントを入れて姿勢を低くすると身体の向きを素早く変えてヒビキの右脇腹へ向かう。
ガードの間に合っていないヒビキの右脇腹へ買ったばかりの巨大な剣を突き刺そうとした。
四肢をもぎ取られて食われる何て絶対に嫌だと叫んでしまいそうになる気持ちを何とか押し殺して、ヒビキは呼吸を整える。
右脇腹に迫った剣先を寸前のところで避けると武器の形を頭の中でイメージした。
剣舞と頭の中で唱えると差し出した右手の平に添うようにして赤い炎に包まれた剣が現れる。
剣をしっかりと握りしめた所で気がついた。
急激に移動速度を上げた小綺麗な女性がヒビキの懐に入り込もうと試みる。
大きく後退することで小綺麗な女性に腹を噛みつかれるようなことは無かったものの、女性はヒビキが大きく後退する事を先に見越して剣を振るっていた。
巨大な剣を薙ぎ払った女性の攻撃を、ヒビキは避けることが出来なかった。
咄嗟に発動していた赤い炎を纏った剣で攻撃をいなそうとしたけれど、攻撃を受け流す事が出来ず魔族相手に力負けをしたヒビキは体を弾き飛ばされる。
激しく地面に体を打ち付け転がったヒビキに向けて女性が巨大な剣を投げつけた。
人形の姿をとることの出来る魔族は強い。
体を横向きに転がして巨大な剣を避けたヒビキが慌てて横たわっていた体を起こす。
姿勢を何とか正そうとして両膝を付くヒビキは危機的な状況に陥っている。
弱音を吐いている場合では無い。
小綺麗な女性はヒビキの姿勢が崩れている所を狙う。
立ち上がり武器を構えようとしたヒビキの目の前に巨大な剣を手に取った女性が迫っていた。
薙ぎ払われた剣を避けなければ上半身と下半身が真っ二つに分けられてしまう。
寸前で腹部に狙いを定められた物理的な攻撃を避けて再び足を引き後退する。
右に体をずらし左足を引く。
女性の振り下ろした剣を右に体をずらす事で避ける事に成功をした。
続けて左から右上へ剣を振り上げた女性の前でフェイントをかけたヒビキが、素早く屈み込み地面を強く蹴り付ける。
瞬く間に女性の真横を通過した。
女性の振り上げた剣の真下を通り女性の背後へ移動をすると、真っ赤な炎に包まれた剣を女性の背中に突き立てようとする。
しかし、気持ちに余裕のある小綺麗な女性によってヒビキの剣は避けられてしまう。
地面を蹴って空中に飛び上がった女性が後方宙返りをしたため、頭上を飛び越えてヒビキの背後に着地をする。
すぐに背後を振り向こうとしたヒビキには、剣を振るう余裕が無いと考えた女性が巨大な剣を手放して回し蹴りを決める。
女性の脛が見事にヒビキの腹部に当たると鬼灯や、ヒナミが、あんぐりと口を開き驚いてしまうほどヒビキの体が飛ぶ。
ゴロンゴロンと路面を転がったため深く被っていたフードが外れ、ヒビキの容姿が露になった。
鬼灯が路面に横たわるヒビキを眺めて、大きなため息を吐き出した。
寒さ対策をしっかりと行っている鬼灯は、室内に足を踏み入れるなり大きく身震いをした。
「もう外に出たくねぇ。寒すぎる」
独り言を呟き、部屋の出入り口から見て真っ正面。向かい側にある暖炉の元へ直行する。
魔王が封印された事により、夜になると街を囲むようにして張り巡らされていた結界が始動せず、アンデッド系モンスターが大通りを自由に行き来する事が出来る状態になっていた。
魔族達はアンデッド系モンスターを恐れて足早に帰路に就く。
大通りの一部や建物の敷地内をアンデッド系モンスター達は気の向くままに占領を始めていた。
「グールが屍肉を求めて徘徊してるし、グールを見てパニックに陥り逃げ惑う奴らに突き飛ばされるし散々な目にあった」
街の中は逃げ惑う人々で、ごった返していたと言葉を続けた鬼灯が恐怖心を抱いて身震いをする。
「1階フロアに血眼になって人間を探す魔族が大勢いたな。いつもはギルド内は空いてる時間帯だが」
鬼灯に続いて漆黒の鎧を身に纏うギフリードが足音を立てて室内に足を踏み入れる。
ギルドの1階層でヒビキが帰宅するためフロアを通るのを、今か今かと待ちわびている魔族の姿があった事を伝える。
モデルをしていたヒビキを食らうことしか考えていない連中が屯していたらしい。
分厚いコートを羽織り首にマフラーを巻くギフリードも寒さ対策をしっかりとしており、鬼灯の後を追いかけて暖炉の前に直行する。
「寒すぎる」
ギフリードが、ぽつりと本音を口にした。
「ヒビキお兄ちゃんのコートだよ」
最後に白いファー付きの黒色のコートを手に持ったヒナミが室内に足を踏み入れた。
ヒビキの元に歩み寄りコートを、はいっと差し出すヒナミは鼻と頬を真っ赤にして体をプルプルと小刻みに震わせている。
「ありがとう」
お礼を言ってコートを受けとると小走りに暖炉の前に向かったヒナミが、ちょこんっと床に腰を下ろす。
「お迎えが来て良かったわね」
呆然とコートを眺めていたヒビキに受付嬢が声をかけた。
「随分と可愛いデザインのコートね」
受付嬢がコートを眺めて思わず本音を口にする。
コートを羽織ってみると膝下まで長さがあり、裾の広がったコートは袖にもファーがついていた。
「それは、お母さんのコートだよ!」
コートを眺めていたヒビキにヒナミは満面の笑みを浮かべて声をかける。
女性もののデザインのコートはヒビキが想像していた通り、ヒナミの母親の物だった。
黒と白を基調とするコートのボタンの形はハート型。
「やっぱり女性ものか」
ヒビキが肩を落とす。
「お母さん心配してたよ。ヒビキお兄ちゃんが帰り道に魔族に襲われて食べられちゃうんじゃないかってね」
ヒナミが続けた言葉に首を傾けたヒビキだけど受付嬢や、鬼灯や、ギフリードの3人は首を上下に振っている。
「ギフリードの言ってた通り、建物付近でも建物内でも物騒な連中がた屯してたからな」
鬼灯がクククッと肩を震わせながらヒビキに声をかけた。
「ヒビキ君がモデルをしている時に冒険者が何人も人間であるヒビキ君を指差して、この子いくらって聞いていたみたいなの。売り子はヒビキ君は売り物では無いと答えていたようだけど」
「人の肝は美味と聞くからな。高額であっても人間を買いたいって奴は多くいるだろう」
受付嬢の言葉にギフリードが頷く。
「200年ほど前にも人間界から迷いこんだ子にモデルをしてもらったんだけど、その子は初日に帰り道で魔族に襲われて食べられちゃったのよ」
受付嬢が続けた言葉にギフリードが頷いた。
「血だまりの中に武器と衣服と、手足の爪だけが残されてたな」
「えぇ。ヒビキ君と同じ年頃の子だったんだけどね。悲鳴を聞きつけて、すぐに駆けつけたんだけど魔族達が引き裂いて、その子を食べるのは目撃者曰く、あっという間だったそうよ」
過去の出来事を思い出して頷く受付嬢とギフリードの話についていけないヒナミと鬼灯が顔を見合わせた。
ヒビキは急に過去に起こった出来事を持ち出され、今から帰宅しようと考えているため緊張で顔が引き攣っている。
「大丈夫よ。お迎えが3人もいるんだから」
顔の強張っているヒビキの背中を受付嬢は、なだめるようにしてポンポンと叩く。
白いファー付きのフードを深く被ったヒビキの足取りは重い。大きなため息をついたヒビキにヒナミが纏わり付く。
「1階フロアは走って通過してしまおう」
「それがいいわね」
鬼灯の言葉に受付嬢が頷いた。
暖炉の前を離れた鬼灯が室内を抜け出した。
鬼灯に続いてヒナミとヒビキが室内を抜け出して、最後にギフリードが後を追う。
ギフリードに続き室内から顔を覗かせた受付嬢は笑顔で手を振り4人の背中を見送った。
1階へ続く階段に差し掛かると鬼灯が、ほいっと掛け声を一つ階段を一気に飛び下りる。
飛行術を使ってフロア内にいる冒険者達の頭上を一気に通過した鬼灯に続いてヒビキがヒナミを抱えて飛び下りる。
ヒビキの後をギフリードが追うと一気にギルドの出入り口から外に飛び出した4人は冷たい風に晒された。
「寒っ」
肌を刺すような風はヒビキが想像していたものより冷たかった。
ぽつりと本音を呟いたヒビキが、ぶるりと体を震わせる。
空中に浮かしていた体を下ろして地面に足を付く。
抱えていたヒナミを下ろし、街路に視線を向けたところでヒビキは呆然とした表情を浮かべて瞬きを繰り返した。
目を見開いたヒビキの隣でヒナミが腰を抜かして尻餅をつく。
見渡す限りの血だまりは一体、何処まで続いているのか。
街路には大きな血だまりが出来ていた。
血だまりの中には深くフードを被り、顔の見えない魔族達が倒れている。
その中央に佇んでいる小綺麗な身なりの女性は巨大な剣を片手に持ったまま獲物を探すように、鋭い視線をヒビキに向けていた。
「あぁ、早く人間の少年が出てこないかしら」
数十分前まで透明なケースの中にいた少年の姿を想像する女性が舌舐めずりをする。
「先ずは腕を切り落として試食よね」
恍惚として佇む女性は透明なケースの中にいたヒビキに心を奪われていた。
「そして、首筋に噛みつきたいわね」
一人妄想にふける。
人間である少年を逃さないために小綺麗な身なりをした女性は、深くフードを被っているため顔を見ることの出来ない冒険者がギルドから出てくるたびに切り刻んでいた。
先ず最初に女性に狙われたのはヒビキだった。
巨大な剣を振りかざし地面を強く蹴りつけた女性が、もの凄い勢いでヒビキの元へと一直線。
ヒビキの左脇腹へ向かう素振りを見せつつ、フェイントを入れて姿勢を低くすると身体の向きを素早く変えてヒビキの右脇腹へ向かう。
ガードの間に合っていないヒビキの右脇腹へ買ったばかりの巨大な剣を突き刺そうとした。
四肢をもぎ取られて食われる何て絶対に嫌だと叫んでしまいそうになる気持ちを何とか押し殺して、ヒビキは呼吸を整える。
右脇腹に迫った剣先を寸前のところで避けると武器の形を頭の中でイメージした。
剣舞と頭の中で唱えると差し出した右手の平に添うようにして赤い炎に包まれた剣が現れる。
剣をしっかりと握りしめた所で気がついた。
急激に移動速度を上げた小綺麗な女性がヒビキの懐に入り込もうと試みる。
大きく後退することで小綺麗な女性に腹を噛みつかれるようなことは無かったものの、女性はヒビキが大きく後退する事を先に見越して剣を振るっていた。
巨大な剣を薙ぎ払った女性の攻撃を、ヒビキは避けることが出来なかった。
咄嗟に発動していた赤い炎を纏った剣で攻撃をいなそうとしたけれど、攻撃を受け流す事が出来ず魔族相手に力負けをしたヒビキは体を弾き飛ばされる。
激しく地面に体を打ち付け転がったヒビキに向けて女性が巨大な剣を投げつけた。
人形の姿をとることの出来る魔族は強い。
体を横向きに転がして巨大な剣を避けたヒビキが慌てて横たわっていた体を起こす。
姿勢を何とか正そうとして両膝を付くヒビキは危機的な状況に陥っている。
弱音を吐いている場合では無い。
小綺麗な女性はヒビキの姿勢が崩れている所を狙う。
立ち上がり武器を構えようとしたヒビキの目の前に巨大な剣を手に取った女性が迫っていた。
薙ぎ払われた剣を避けなければ上半身と下半身が真っ二つに分けられてしまう。
寸前で腹部に狙いを定められた物理的な攻撃を避けて再び足を引き後退する。
右に体をずらし左足を引く。
女性の振り下ろした剣を右に体をずらす事で避ける事に成功をした。
続けて左から右上へ剣を振り上げた女性の前でフェイントをかけたヒビキが、素早く屈み込み地面を強く蹴り付ける。
瞬く間に女性の真横を通過した。
女性の振り上げた剣の真下を通り女性の背後へ移動をすると、真っ赤な炎に包まれた剣を女性の背中に突き立てようとする。
しかし、気持ちに余裕のある小綺麗な女性によってヒビキの剣は避けられてしまう。
地面を蹴って空中に飛び上がった女性が後方宙返りをしたため、頭上を飛び越えてヒビキの背後に着地をする。
すぐに背後を振り向こうとしたヒビキには、剣を振るう余裕が無いと考えた女性が巨大な剣を手放して回し蹴りを決める。
女性の脛が見事にヒビキの腹部に当たると鬼灯や、ヒナミが、あんぐりと口を開き驚いてしまうほどヒビキの体が飛ぶ。
ゴロンゴロンと路面を転がったため深く被っていたフードが外れ、ヒビキの容姿が露になった。
鬼灯が路面に横たわるヒビキを眺めて、大きなため息を吐き出した。
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