正義?

波猫

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救出?

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私は病院のベッドの上にいる。
包帯だらけだった体が徐々に剥がれ完治していくのが、憎たらしい。
それもこれも全部あいつのせいだ。
今さっき母親が病室に見舞いにきたが、母親はいつも決まってこう言う。
「光君に感謝しないとね。あなたが生きていられるのは、全部光君のおかげだから」
私は窓を眺めていた顔を、くるっと母親に向き直ると、ぺっと唾をかけてやって。
母親な驚いて激昂したが、私はあざ笑ってやった。
このまま親子の縁を切ってくれても構わない。
どうせこの母親もあいつと同類の人間なのだから。

私は学生時代にいじめに遭っていた。
いじめの加害者は光。
クラス一の問題児で、先生がいくら注意しても聞きやしない。
私は大人しい性格もあり、よく標的にされた。
そのせいで精神を病み、20年経った今に至るまで精神病院に通っている。
そんな時だった。
私は病院へ行くために電車に乗っていたのだが、その電車が脱線事故を起こし、何人もの人が亡くなった。
だが私は生き残れた。
なぜ?
光に救出されたのだ。
光は消防士の職に就いていて、たまたま駆けつけた消防隊の一人として、私を救出したらしいのだ。

静まり返った病室で私は思う。
なんて残酷なのだろう。
今まで20年間あいつに精神を狂わさられて、さらに人生まで支配されるなんて。
私が生きているのは、私をいじめたあいつのおかげ?
これでは生き恥だ。
だったら死にたい。今すぐ死にたい。
退院したら自殺をしよう。



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