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魔族とわたしは...
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アーサーとの二人暮らしが始まった。
彼は子供ながらに私の手助けを懸命にこなしてくれた。
朝起きて朝食の支度をする時も、泥まみれになって畑仕事をする時も、川まで水を汲む時も、いつも一緒に行動した。
夜は、二人で夕食を食べながらまるで親子のような会話を楽しんだ。
彼も最初会った時は、痩せた貧相な子のようだったが、私と一緒に生活していくうちに顔色が良くなって元気を取り戻していた。
私も国から追放された時から家族も友人もいなかったが、彼と会って久方ぶりに人とのやりとりをして、孤独から解放された気分だった。
そんな幸せな生活も数年の月日が経った。
アーサーはすっかり成長し逞しい青年となった。
私はまた歳をとった。
だが今は息子の成長を見届ける喜びに満ちていた。
あのまま一人だったら今はただの孤独な老人になっていたであろう。
そんなある日のこと。
年老いた私を気を使い、最近一人で川の水汲みにいっているアーサーを家で待っている時。
3人の男達が家に訪ねてきた。
左右の男は国の兵士だろうか、甲冑をきている。
真ん中の男は、巨大な剣を背中にさしている。
間違いなく勇者だ。
ドアを開けるや否や、私はロープて拘束された。
何をする!と非難の声を上げたが、頭を殴られた。
一人の男が叫んだ。
「この土地に魔が再誕すると御神託にあったのだ!よってお前を魔族の容疑で拘束する!」
殴られて、クラクラする頭に怒号が響くが私はすぐにアーサーの身が気掛かりになった。
(アーサー逃げてくれ!)
薄れゆく意識の中。
しばらく闇の中を彷徨った気がする。
その暗闇の中に私を呼ぶ声がした。
...ばさん
おばさん!
はっと目を覚ますとアーサーに抱き抱えられていた。
「おばさん。大丈夫?」
目を覚ましてた私にアーサーは安堵した様子だった。
「兵士たちは?」
辺りを見渡すとそこは先ほどまでの我が家だったが、一面血の海だった。
兵士達と勇者の亡き骸がそこにあった。
「...殺したんだね...」
アーサーは何も言わなかった。
おそらくアーサーが家に戻った時に、兵士達と勇者を見つけ私を救うために...。
「ごめん...おばさんを死なせたくないから...」
ぽつりと振り絞った声は震えている。
「いや。いいんだよ。」
私はアーサーの手を握った。
「アーサー。逃げよう。」
「え?」
「一緒にこの国を出よう。」
私は痛めた頭の箇所を押さえつつ、立ち上がった。
「私達ずっと一緒だったよね?だったら。この国を出てどこまでも逃げよう。」
アーサーも涙目になった目を拭いうなづき立ち上がった。
逃げたところで、国の追手の刺客が送り込まれるのは百も承知だ。
だがアーサーと二人でならどこまでも行ける気がした。
どこまでも。
彼は子供ながらに私の手助けを懸命にこなしてくれた。
朝起きて朝食の支度をする時も、泥まみれになって畑仕事をする時も、川まで水を汲む時も、いつも一緒に行動した。
夜は、二人で夕食を食べながらまるで親子のような会話を楽しんだ。
彼も最初会った時は、痩せた貧相な子のようだったが、私と一緒に生活していくうちに顔色が良くなって元気を取り戻していた。
私も国から追放された時から家族も友人もいなかったが、彼と会って久方ぶりに人とのやりとりをして、孤独から解放された気分だった。
そんな幸せな生活も数年の月日が経った。
アーサーはすっかり成長し逞しい青年となった。
私はまた歳をとった。
だが今は息子の成長を見届ける喜びに満ちていた。
あのまま一人だったら今はただの孤独な老人になっていたであろう。
そんなある日のこと。
年老いた私を気を使い、最近一人で川の水汲みにいっているアーサーを家で待っている時。
3人の男達が家に訪ねてきた。
左右の男は国の兵士だろうか、甲冑をきている。
真ん中の男は、巨大な剣を背中にさしている。
間違いなく勇者だ。
ドアを開けるや否や、私はロープて拘束された。
何をする!と非難の声を上げたが、頭を殴られた。
一人の男が叫んだ。
「この土地に魔が再誕すると御神託にあったのだ!よってお前を魔族の容疑で拘束する!」
殴られて、クラクラする頭に怒号が響くが私はすぐにアーサーの身が気掛かりになった。
(アーサー逃げてくれ!)
薄れゆく意識の中。
しばらく闇の中を彷徨った気がする。
その暗闇の中に私を呼ぶ声がした。
...ばさん
おばさん!
はっと目を覚ますとアーサーに抱き抱えられていた。
「おばさん。大丈夫?」
目を覚ましてた私にアーサーは安堵した様子だった。
「兵士たちは?」
辺りを見渡すとそこは先ほどまでの我が家だったが、一面血の海だった。
兵士達と勇者の亡き骸がそこにあった。
「...殺したんだね...」
アーサーは何も言わなかった。
おそらくアーサーが家に戻った時に、兵士達と勇者を見つけ私を救うために...。
「ごめん...おばさんを死なせたくないから...」
ぽつりと振り絞った声は震えている。
「いや。いいんだよ。」
私はアーサーの手を握った。
「アーサー。逃げよう。」
「え?」
「一緒にこの国を出よう。」
私は痛めた頭の箇所を押さえつつ、立ち上がった。
「私達ずっと一緒だったよね?だったら。この国を出てどこまでも逃げよう。」
アーサーも涙目になった目を拭いうなづき立ち上がった。
逃げたところで、国の追手の刺客が送り込まれるのは百も承知だ。
だがアーサーと二人でならどこまでも行ける気がした。
どこまでも。
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