君色

搬送。

コウを呼び入れた。




コウは目を大きく見開いた。

イクの状態に驚いているだろう。

近くにより、イクの真っ黒くサラサラの髪に指を絡めている。





「コウ君、僕と変わってくれる？」

イクの頭を自分の脚に乗せていた美月が
声をかけた。



「ミキちゃん…いいの？」




「うん。ただね…郁弥ケガしてるから救急車来るまで動かさないでね…。

あと布団めくらないで……あの…乱暴されたみたいで……。

きっと郁弥はコウ君の前で……カッコつけたいはずだから……。」




そう言った美月は

大切なオモチャを我慢して貸す

子供のような顔をしていた。



「ミキちゃん……ありがと。」



俺がイクの頭を支えている間に二人は場所を変わった。









どう見ても

コウがイクを想っているのは明らかで

美月もそれを分かっている雰囲気で








きっとイクは選べずにいる……。







だから

美月がこんなに苦しんでるのか？












従業員の人に案内されて救急隊員が到着した。


美月がイクの状態を説明していた。




ストレッチャーがイクの隣りに運ばれ
隊員がイクを移乗させようと布団に手を伸ばした。


「待って         待って下さい。

意識ないけど本人、見られたくないと思うから……

ノブ……コウ君と出てもらっていい？」



コウは離れたくなさそうだったけど
布団のまま移動させても
嫌でもカーペットの上の黒い血が目に入る。



「コウ、行くよ…。」


俺はコウの腕を掴み廊下に連れ出した。










直ぐにストレッチャーに乗せられたイクが出てきた。


誰か一人付き添って欲しいと隊員に言われ
美月をと思ったが
警察と話しをするのでコウに同乗を頼んだ。





「コウ君、郁弥をお願い。

搬送先、教えてね。

他の人への連絡は僕がするから……。

郁弥をお願いします。」





『恋人を恋敵に託す』

そんな風に見え、美月が愛おしいと思った。