初恋

カレカノ。

ミナと堂々と手を繋いで歩く。

周りの反応にドキドキする。




「ヨシ、

僕たちって普通にカレカノに見えるのかな？

何か、周りの人たち誰も僕たちのコト変な目で見ないね。」



「ミナ……それってさぁ。」



水族館のエントランスにある大きな鏡張りの
廊下。

映る姿は

やっぱり

カレカノだった。





ミナは１６８センチ、

中1にしたら大きいほうだ。

痩せ型だけど綺麗に筋肉が付いている。

茶色の少しクセのある髪。

吸い込まれそうな瞳。

鼻筋の通った綺麗な顔。

ジーンズに黒いＴシャツ、カーキのコート

足元は黒の編み上げブーツ。

中性的だけど、どう見ても男の子だ。



俺は１５７センチ。

４０キロもない華奢な身体。

長めの真っ直ぐな黒髪。

ギョロッと大きな瞳。

ブルージーンズのスキニー、

Ｖネックの白いコットンセーター。

赤いハイカットのスニーカー。

前髪には赤いピン。

やっぱり女の子にしか見えない。





父さんも母さんも身長は高い。
そのうち伸びると思う。
でも顔は……女の子みたいだ。




鏡張りの廊下で立ち止まったままの俺。

男同士に見えないから

奇異の目では見られない。

でも俺の心境は複雑だ。




「ヨシ、嬉しいね。

２人で手、繋げるの。

恥ずかしいけど嬉しいね。

僕はヨシの全部が好きだよ？

せっかく２人でいるんだから

そんな顔しないで？

お願い…」

ミナが哀しそうな顔で俺を覗き込む。





そうだ

俺たちが良ければいいんだ。

このままで良いんだ。




そう思ったら

この顔もイヤじゃなくなった。




ミナの腕に自分の腕を絡めて

堂々とくっついて歩いた。





イルカのショーにペンギンパレード。

アシカの愛らしい動きも楽しかった。



俺たちは

青く光るクラゲの水槽に目を奪われた。

ユラユラ揺らめきゆったりとした時間が流れる。

身体の力がスッと抜けていく感じが気持ち良い。



「父さんたち、許してくれるかな？」


「もし許してもらっても、
僕たち自身がキチンとした生活をしないと
直ぐに離されちゃうかも……

絶対ヨシと離れたくないよ。

僕たち頑張れるよね？」



「うん。ミナと一緒じゃなきゃ。

俺たちは離れちゃダメなんだ。

頑張れるよ。」




青く光る水槽の前で誓った。






観光用の写真撮影をしてくれるスポット。

値段は少し高いだけど

俺たちは初デート記念に

２枚撮ってもらった。










やっぱり

カレカノに見えた。